表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/106

レッツ ダンジョン! ⑨

スタスタ。

ワンワンッ、ドガッ、キュゥ~ン。


さっきからこの繰り返しだ。魔物を見つけたフォレスが兄へ伝える前にブランが吠えて駆け出し、魔物にぶつかって仕留めてしまう。ブランは自分のやらかしに焦って私の顔色を確認して哀れっぽく鳴く。……いやいや、これで何回目だよっ。ブラン、あんたいい加減にしなさいよっ!


「怒らないで菊華ちゃん。ブランいい子ね。私の代わりにネズミ退治をしてくれてありがとう」


姉がしゃがんでブランの頭を優しく撫でると、ブランは目を細めて尻尾をゆらりと振った。


「……お姉ちゃん? ブランがネズミ魔物を倒しても、お姉ちゃんのレベルは上がらないんだから。そんなこと言っていると、ダンジョンに置いていくわよ」


ふんっと腰に手を当ててそう告げると、姉は顔を青くしてブランに抱き着いた。


「そうだぞ、桜。俺たちは完全に付き添いで、ここにいる必要がないんだ。いつまでも桜のレベルが上がらなかったら、別行動も有り得るぞ」


珍しく私の脅しに兄も乗っかる。たぶん、兄も自分のレベルを上げたいのだろう。「生活魔法」スキルしか持ってないはずの兄だが、本人とスキルのレベルが上がった結果、「生活魔法」が「全属性魔法」に変化したと言っても過言ではない状態になっている。このままレベルを上げて漫画やアニメで使われていた究極魔法を使ってみたいとか……夢見ているのでは?


「……わ、わかったわ。ブラン……息の根を止める寸前のネズミを私に譲ってちょうだい。お願い」


ウルウルお目々でブランの前足を両手で捧げ持つ姉の姿はあざとくかわいいが、言っている内容はえげつないと思う。


さて、とんでもない猿芝居で時間をムダにしてしまったが、先に進みましょうか。レオンさんはともかく、小次郎と兄もこのフロアでは魔物を倒してもレベルは上がらない。魔物が落とすドロップアイテムもしょうもないガラクタばかり。サクサクと倒して、姉のレベルを上げて上の階に行こう。


「さあ、お姉ちゃん。ネズミは百匹倒さないとギルドの依頼を達成したことにならないからね!」


「ひ~ん」


それからは、ブランが体当たりしてピクピクしているミニュラットを一刺し。フォレスが鋭い爪で捕まえてきたピッコラットを一刺し。兄とレオンさんで四肢を切ったアラビラットをぐっさりと攻撃してダンジョン内を進んだ。


「ひ~ん、気持ち悪いよぅ。えぐっ、えぐっ」


成人女性の泣き声など聞こえないったら聞こえない。私もアラビラットなら経験値の足しになるから、ついでにグサッと。


ピコーン!


おおっ、レベルが上がったかもー!































バタリ。

姉が膝をついた。肩で息をしてナイフを持つ手が強張っている。


「もう……無理!」


橘家プラスレオンさんとレーゲンは、無表情で姉を見下ろす。ブランだけは姉に近づいてペロペロと頬を舐めて、それって慰めているの?


「しょうがない。休憩を取るか……まだ、ダンジョンに入って一時間ぐらいだけどな」


前の世界と諸々の単位が同じでよかったね。一時間、ダンジョン内を歩き十数匹のネズミに止めを刺しただけで疲労困憊の姉よ……。


「レオンさん、ここら辺で休める場所ってあります?」


セーフティーエリアはもっと上の階じゃないと存在しない。でも、いまの姉の様子だとネズミ型魔物がウロチョロしているところでは、心が休まらないだろう。正直、私もネズミを見ながら休憩するのは、ちょっとイヤだ。


「あっちの広いところに行こう。魔道具で簡易結界を張るから魔物の心配はしなくていい」


レオンさんは懐から真四角な物体を取り出した。すこし大き目なサイコロみたいな物体を地面に置き、ポチっと天辺を押すと薄い膜状の結界が張られるらしい。


「ネズミ程度の魔物なら寄り付きもしない。サクラが限界だからな、お茶でも飲んで落ち着くといい」


「レオンさ~ん」


姉がびゃっと泣き出し、レオンさんに縋りつく。やめなさいよ、みっともない。


私たちはテクテクと歩き、やや開けた場所まで移動した。兄は結界が張られると、いそいそと鞄からお茶道具を出しティータイムの準備を。小次郎が慌てて手伝いだすが、背中のヴェルデの姿がなんとも言えない。


「ほら、お姉ちゃん。しっかりしてよ」


ズルズルと軟体動物と化した姉を座らせて、濡れタオルで泣いた顔を拭いてやる。異世界では化粧なんてしないから、ゴシゴシ拭いてもいいだろう。


「ぐすっ。ありがとう、菊華ちゃん」


姉の手には小次郎から渡された暖かいお茶がある。兄は姉の前に焼き菓子を二つ置いた。疲れたときには甘いものと言わんばかりだ。そして、さして疲れていないはずのレオンさんは、もう口いっぱいに頬張っている。……イケメンどこいった?


「ところでお姉ちゃん、レベルは上がった?」


ふぐっと口に入れた焼き菓子が喉に詰まった音がしたあと、姉はガブガブとお茶で流し込んでいる。


「けほっ、けほっ。そ、そんなすぐにレベルが上がるわけないでしょ」


姉から恨みがましい眼で見られたが、同じ条件で私のレベルが上がったんだから、姉も同様かと思っただけだし……。


「え? 菊華。レベル上がったのか?」


「うん。なんか、頭の中でピコーンって音がした」


何気なく話したのに、私の発言にみんなの動きがピタリと止まり、レオンさんからは信じられないものを見る眼で見られた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ