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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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レッツ ダンジョン! ①

無事、イルブロンの冒険者ギルドでブランたちの従魔登録を済ませることができました。これからは、編みぐるみの状態でいるよりも、魔力を渡して実体化している時間のほうが長くなると思う。

イルブロンの街に入ってからは、ブランは小型犬の大きさで、フォレスは雀ぐらいの大きさで兄の肩にとまっている。シンシャとヴェルデはブランと同じ大きさになり、シンシャはちょこちょこと小次郎の横を歩いていて、ヴェルデは小次郎に抱っこされている。

レオンさんの従魔、レーゲンは小さい姿でレオンさんのマントの背中に引っ付いてるけどね。


「従魔登録のあとは、従魔としての登録タグを買いに行きたいが……とりあえずは宿だな」


「はい」


イルブロンの街は冒険者も多く、商人の行き来もある。宿のタイプもピンキリだ。私たちは冒険者として安定した稼ぎが約束されているわけじゃないから、この街ではほどほどの宿にしなきゃ。


「……毎回、宿の食事だと味気ないからキッチンが借りられたらいいな」


兄よ……。


「そろそろ、お風呂に入りたいわ」


……姉よ。


「ベッドで寝たいかな?」


うん、小次郎の意見には大賛成!


「大部屋は勘弁して。個室は難しくても、せめて二部屋プラスリビング付きで!」


「菊華~、それは贅沢じゃないかな?」


兄に言われたくないわ! 姉も「しょうがない子ね~」みたいな眼で見るな!


「俺たちが懇意にしている宿に行こう」


いやいや、レオンさん! そ、そこはお高い宿ではないでしょうか? 高ランク冒険者パーティーが利用する宿なんて……いまの橘家には痛い出費となりかねないのですぅぅぅぅっ。

言葉にするにはプライドが邪魔したのか、私は泣きそうな顔でレオンさんのマントの端を掴んで引っ張り、頭を左右に振った。


「……何か都合が悪いか?」


こてんと首を傾げるレオンさんは、こんなときも無表情である。そして、イケメンです。


「菊華はお金の心配をしているんです。持っているお金は使いたくないけど、残念ながら冒険者としての収入は日々の食事で消えてしまう程度なので」


兄の言葉に姉はため息を吐いて同意し、小次郎はまたまた何かの決意を込めた強い眼でギュッと拳を握る。


「……宿代は俺が出すが?」


「はぁぁぁ? な、なんでレオンさんの奢り?」


そんな嬉しい! じゃなかった、そんなことしてもらう理由がありませんけど?


「ぬいぐるみ代だ。あとでカラーシープの毛糸も調達しに行こう」


「……いやいや、たかが編みぐるみのお代で宿代を出してもらうなんて……」


どんなぼったくりですか! 心外です。私はそんなヤバい商売はしてません!


「気にするな。新しい仲間が増えればレーゲンも喜ぶ。ぬいぐるみ作成期間とキッカたちがイルブロンの街に馴染むまでは援助する」


ふんっと得意げにしていますが……パーティーリーダーのシルビオさんには内緒で行動していたんですよね? バレたら、ものすっごく怒られると思いますよ。


「レオンさんが助けてくれるのは嬉しいけど、ちゃんとシルビオさんには連絡しといたら? 心配してレーゲンを目印にここに来ちゃうかも」


兄が無邪気にレオンさんを追い詰めていく。しかし彼も、シルビオさんが探しに来るというのは可能性があると思ったのか、顔を歪めながらサラサラと空中に指で文字を書き、ふうーっと息を吹きかけた。


「伝言魔法を飛ばした。これでシルビオには居場所がわかるはずだ」


……ムスッとしているけど、勝手に行動しているのはあなたですよ、レオンさん。しかも、レーゲンという爆弾付きで。


「さあ、宿に行こう」


スタスタと歩きだすレオンさんの背中に、困惑しつつ着いていく橘家。でも、しばらくはお高い宿でゆっくりと休んでもいいよね?

























レオンさんたち「ライゼ」御用達の宿は、なかなかに素敵な宿でした。ホテルだね、異世界ホテル。

兄が希望した宿泊客が利用できるキッチンもあるし、姉希望のお風呂も完備。小次郎も喜ぶふかふかの布団とベッドはテンションが上がる。

しかし……。


「レオンさんと同室ですか?」


「……イヤか?」


いえ、イヤなわけじゃありません。いちおー、姉と私という妙齢な女性がいますが、イヤなわけじゃないです、はい。


「いいじゃないか。同室って言ってもベッドルームは三つあるし。俺と小次郎、お前と桜、レオンさんでちょうどいい」


確かにね。でも、うっかりと口が滑って異世界のことを話しちゃったらと思うと、気が抜けないでしょ。


「みんなで食事ができる食堂とは別にリビングもあるし。お風呂もトイレもキレイよ」


姉はニッコニコである。正直、水回りがキレイなのは嬉しい。とっても嬉しい。


「菊華ちゃん、僕たちで気をつけていれば大丈夫だよ」


小次郎……私たちは大丈夫でも、歩く天災な姉を止めることはできないのだよ。

私はがっくりと肩を落とし、ブランのふさふさの毛をもふもふして精神の安定を得るのだった。


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