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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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旅は道連れ トラブルには巻き込まれ ⑧

アンデッドがメインのダンジョンには、下層には骸骨系の魔物が多く、中層階には動物のゾンビ系魔物から人型ゾンビまで幅広く出没。上層にはリッチ系というか、いわゆる霊体の魔物とそれらを使役するヴァンパイア系の魔物が棲息している。


「リッチって元は神官とかでしょ? なんで退治するヴァンパイアと共生してんのよ」


あんたたちは聖水でヴァンパイアを退治する側でしょうが。


「菊華ちゃん? そもそも正しい神官は死んだあとにリッチにならないわ」


「……そうなの?」


魔物の事情なんて知らないもん。姉みたいに睡眠時間を削ってゲームやアニメに没頭するタイプじゃなかったし。姉は私の耳元で嬉々としてリッチ系の魔物の説明をしているが、聞き流します。どうせ、ダンジョン内で巡り合ったら問答無用で叩き潰すんだから。ちなみにブランたちがね。


「あ、小次郎の剣は聖剣っていうぐらいだから、アンデッドには有効なのでは?」


骸骨やゾンビならまだしも、実体のない幽体系は武器が通用しないでしょ? でも、「勇者」の武器である聖剣なら、幽体でも斬り倒せるのではないでしょうか?


「そうかな?」


小次郎が首を傾げる。そりゃ……幽体なんて斬ったことないもんね。でも、ダンジョンでぶっつけ本番は勘弁してもらいたい。もし、聖剣が通用しなかったら、橘家は一巻の終わりである。


「……通常、アンデッドと戦う場合は教会で武器に祝福を施してもらうか、聖水を購入する。ちなみにどちらも高い。効果は落ちるが魔道具屋で魔払いのお守りを買うか、冒険者ギルドの店で神聖魔法使いが作った聖水擬きを買う。俺たちは武器に対アンデッド用の付与魔法が施されいるから問題はない」


レオンさんに問題がなくても、私たちには大問題ですよ! まず、私たちの中で魔物に攻撃できるのは兄と小次郎。私は……う~む、一応ナイフは持っているけど、武器を扱える気がしない。姉は論外だ。


「キッカ。小次郎の剣はともかく、俺の武器に祝福や聖水をかけても無駄だと思うぞ。その効果は相手に武器が当たらないと意味がないんだろう? 今まで相手にしてきた魔物とはレベルが違うからなぁ、果たして俺の剣が届くかどうか。正直に言うとゾンビ怖い」


おい、兄よ! 私だってゾンビも怖けりゃリッチも怖いよっ。橘家で唯一、ゾンビ系に強そうなのは姉だけども、攻撃力がゼロなんだからしょうがないでしょ。


「あら、お姉ちゃんだってゾンビは嫌よ? ゲームでは銃で滅多撃ちにしてたけど」


きゅるるんとした顔で物騒なこと言わないで!


「あと、俺たちで攻撃力があるとしたら……フォレスたちだな」


「そうね。でも編みぐるみ隊の攻撃ってアンデッドに通用するの? 祝福とか聖水とかと明後日の方向にいる存在だと思うけど」


ある意味、アホ神からプレゼントされたスキルなので、神聖かと言われれば……いや、あのアホ神に神聖さなんて欠片も見い出せないわ。


「……やっぱり実戦で試すしか……」


「ひいぃぃっ。やめてよっ。それでダメだったら、ゾンビに囲まれてジ・エンドだよ!」


橘家がゾンビ系魔物に怯えていると、「コホン」とレオンさんから控え目な咳払いが聞こえた。


「お前たち……そんなにアンデッドダンジョンに挑戦したいのか?」


「「「あ……」」」


他にもダンジョン……ありましたね? アハハハ。



































結局、レオンさんお勧めのコースにする。


まずは、イルブロンの街東側にあるタワー型ダンジョンの低層階で冒険者ランクを上げる。全員がEランクまで上がったら、同じダンジョンの中層階にチャレンジ! Dランクの魔物を倒せるようになったら、森の中にあるダンジョンへ。


「アンデッドダンジョンはドロップ品目当てや、早く自分の冒険者ランクを上げる奴らには人気だが、それだけ危険でもある。事前の準備が万全じゃないと、ランクの低い魔物相手に苦戦することもあるからな」


「はい……」


大人しくレオンさんの話を聞く私と兄。姉はいそいそと冒険者ギルドで知り合ったお爺さんにもらったイルブロンの街の地図を広げている。


「レオンさん。ダンジョンの近くに宿を取るのと、街の中心に宿を取るのとどっちがいいかしら?」


イルブロンの街の東側には、ダンジョンを利用する冒険者用の宿場町が発展している。そのせいか武器防具屋や鍛冶工房、酒場などが多い気がする。……治安が悪そう。


「サクラ。お前の安全を考えるなら街の中心に宿を取り、馬車で通え。そうそう、森のダンジョンの場合は仕方がないが、ダンジョンには泊まり込みで挑戦するな。セーフティーエリアには魔物は出ないが、悪党がいないとは限らないからな」


「……それって、利用している冒険者のことですか?」


レオンさんは重々しく頷いた。

どうやら、冒険者でも「ライゼ」のような高ランク冒険者は弁えているが、実力のない又は自分の実力の限界が見えてしまった冒険者の中には犯罪に走る者もいるらしい。

強盗や人身売買など、ダンジョンのように死体がダンジョンに吸収される場所では、そんな犯罪は隠蔽しやすい。だから、魔物が寄ってこないからと安心するのでなく、怪しい冒険者を見かけたらダンジョンからはすぐに出たほうがいいとのこと。


「はあぁぁっ、世知辛い」


もう、四方八方敵だらけだわよ。


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