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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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旅は道連れ トラブルには巻き込まれ ⑥

コクリとお茶をひと口飲んで落ち着こう。


「レオンさん。ちなみに、家を購入できたりする許可証が発行される冒険者のランクって?」


ここ大事。もしかしたら、地道に頑張れば得られるランクかもしれないじゃない? 恐ろしい魔物を倒したり、命の危険があるダンジョンに挑戦しなくても、薬草採取の依頼を重ねれば到達できるランクなら、橘家にもワンチャン……。


「Cランクで小さな家なら買える。Bランクなら問題なく買える。ただし商会とかに勤める場合は、ギルドマスターからの紹介状が必要だ。筋肉バカに事務仕事は無理だし、手癖が悪い者に許可証を出すわけにはいかない」


至極真っ当な意見だけど、問題はそこじゃない。


「あのぅ、Cランクって具体的にはどのレベル?」


レオンさんはふむと顎に手を当ててしばらく考えたあと、さも簡単だと軽い調子で答えた。


「Cランクの魔物を倒すのと、Cランクダンジョンの踏破と、護衛依頼又は盗賊を捕縛、いずれかを達成すればいい」


……無理だ。Cランクの魔物がどれだけか知らないが、初心者用のダンジョンで精一杯の橘家にCランクダンジョンの踏破なんて夢のまた夢。しかも、護衛依頼をこなすか、盗賊を捕縛? 無理でしょ? 魔物相手でも攻撃をためらうのに、人相手に武器を向けるなんてことはできません。

兄も顔色が悪くなっているし、姉も眉が下がっている。ちょっと心配なのは小次郎が右手を握って、何かを決意したような表情をしていること。いやいや、勇者だからって気負わないで! 小次郎はまだ子どもなんだから!


「レオンさん……その条件は私たちには無理です」


フルフルと頭を横に振ってレオンさんに訴えると、彼は不思議そうな顔をした。なんだよ、何か文句でもあるのか?


「イルブロンの街に行くんだろう? ランク上げに行くつもりだと思っていたが?」


「?」


イルブロンの街には、定住できる街かどうか見極めに行くのです。冒険者として研鑽するために行くのではない……ないよね?


「……俺たちは田舎から出てきたので、住みやすい場所をシルビオさんに教えてもらったつもりで……。そのぅ、冒険者として頑張るつもりは、ないです。はい」


兄がとっても言いにくそうに無表情のレオンさんに告げると、レオンさんはコテンと首を傾げた。


「住みやすい場所? 冒険者にとってランクが上がる街は稼ぎが安定して住みやすい街ということだ。イルブロンの街は人の行き来も多く、店も多い。住人が多ければ仕事も多い。冒険者のランク上げに最適な魔物が棲息する森と、ダンジョンがある」


出た―っ! ダンジョン……。また、ダンジョン……。


「お、俺は、俺たちでも街に家が買えて仕事が見つかる場所を聞いたつもりで……冒険者として稼ぐなんて……」


兄の顔が青から白、そして土気色になっていく。イルブロンの街で穏やかな異世界生活を堅実に営むのが、冒険者稼業でヒャッハーすることになっているんだもの。そりゃ、生きた気はしないよね。私だって、さっきから足がガクガクしてますよ!


「話が元に戻るが……家を買うにも仕事を見つけるにも、余所者のアオイたちは冒険者ランクを上げて、ギルドから許可証を貰うしか方法はない」


「レ……レオンさん」


知ってた。貴方が回りくどい言い方をしないって。言いにくいことでもどストレートに告げてくるって。でも今は……もっと優しく言ってほしかった……。



























どうしよう……って、もう頑張って冒険者活動してランクを上げて、どこかの街で家を買って仕事見つけて生きていくしかないんだけど……先が長すぎて心が折れるぅぅぅぅぅっ。


「……俺はもう、普通の仕事にありつけない気がする」


「やめて。前の世界と違って、主夫でいることはできないからね。みんなで働いて生きていかないと」


夜の見張りをしているレオンさんを外に残し、テントの中でこそこそと家族会議中。小次郎は夜も遅いので寝かしつけました。


「そうねぇ。私も事務のお仕事がいいけど……冒険者ランクを上げるほうが難しいもの」


姉ののんびりとした緊張感のない話し方に、ちょっとだけイラッときたが、橘家のなかで安定した職にありつけそうなのは姉だけである。


「お姉ちゃんはもう少し治癒魔法を頑張れば、教会で働けるじゃない」


そう、教会が運営する病院みたいなところでは、治癒魔法が使える人を雇用している。当然、治癒魔法のレベルが高ければ高いほどお給金もいいのだ。


「そうだな。もともと、桜は安定した公務員みたいな仕事がいいと思っていたし。教会ならどこの街にもあるし。桜は頑張ってレベルを上げよう。そうしたらリオンも動けるようになるし。いいことづくめだな。あーはははっ、はぁぁぁっ」


兄よ、笑うかため息つくかどっちかにしてくれ。


「もう諦めて、冒険者として頑張るしかないかなぁ」


そもそも、冒険者のランクが上がれば、どこかに就職しなくてもいい暮らしができるぐらいには稼げるらしいし。


「そうだなぁ。そうなると俺もフォレスとの連携を強くして、生活魔法のレベルも上げるかぁ」


「そうね。お兄ちゃんの生活魔法の威力、ちょっとおかしいもん」


火だね魔法やコップ一杯の水を出す魔法で、ネズミ型魔物を討伐できるのって、もはや生活魔法とは呼ばないのでは?


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