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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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旅は道連れ、トラブルには巻き込まれ ②

突発的にマクデルの街を出立した私たちだったけど、護衛がレオンさんでよかった……。これこそ不幸中の幸いかも! 私と姉は兄が作った温かいミルクシチューの器を手に幸せを噛みしめていた。あと、レオンさんとレーゲンが狩った鳥が美味い。私も首チョンパで血抜きされた鳥の羽は毟ったが、捌くのは兄とレオンさんに任せてしまった。弾力があってジューシーなお肉が美味しい……あー、唐揚げ食いたい。醤油がほしい。


「菊華。何を考えているのかわかるから、美味いモン食ってるときに残念な顔をするな」


「ふわ~い」


確かに、物足りない顔は、美味しい夕食を作ってくれた兄に悪いわ。頬いっぱいに食べ物を突っ込んで、リスみたいになっているレオンさんの不思議そうな顔も乙女の心臓に悪い。うっかり、あっちの食生活で異世界人だってバレてしまいそう。異世界の調味料がこの世界にもあればいいけど。


「ングッ。食べたら話を聞かせてもらうし、場合によってはシルビオたちにもバラす」


「そんなっ! だいたい、レオンさんだって、シルビオさんたちには黙ってここにいるのでは?」


どうも、過保護なシルビオさんが問題児レオンさんの単独行動を許すとは思えないし、しかもやんちゃなドラゴン赤ちゃんのレーゲンも連れてとなったら、ますます疑わしいのである。

私の鋭い指摘に、レオンさんはピタリと口を閉ざした。やっぱり……。私のジト目に兄の驚愕の眼差し、小次郎のフリーズ状態に、いたたまれない気持ちになったレオンさんは、話しを変えようと姉に向き合う。


「サクラ。ここまで数人の冒険者たちが後を追い駆けてきていたようだ」


「え?」


うっそ、そんなの全然気が付かなかった。ずっと、私たちの乗った馬車と少し遅れてどこかの商人の荷馬車の列と、便乗している乗合馬車がいたけども、姉を狙う冒険者たちの馬なんていなかったけど?


「こちらに気づく前にレーゲンが追い払った」


「どうやって?」


そりゃ、体の大きさを元に戻せばドラゴンだってわかるから、威勢だけがいい冒険者なんて逃げ出すだろうけど……、そんな大騒ぎがあったら私たちだって気が付きますよ?


「小さいままで、奴らが乗る馬にブレスを吐いたらしい」


「うわぁぁ」


かわいそう、馬が。レーゲンは自分の活躍が語られていると知って、気持ち胸を張って偉そうにしているように見える。いやいや、なんの罪もない馬にブレス吐いたって、非道過ぎるでしょ? 小次郎が涙目だよ。


「ちなみに、ファイアブレスだったから、馬は尻に火傷をし尻尾は燃えた」


「ひいいぃぃっ」


惨い……。せめて耳に「ふぅーっ」レベルにしてあげて。それだけでも繊細な馬なら制御不能になるから。相手に手加減しない恐ろしい主従であるレオンさんとレーゲンは、馬の悲惨な状況に対して、特に何も思わないのかこれからも追い駆けてきた奴は潰す宣言をしていた。


「俺たちがイルブロンの街を目指していたのは知られているからな。向こうに行ってもあいつらが来たら、また逃げなきゃいかん。だったらここで……潰しておいてもらうか……」


兄が……あの、穏やかで献立に頭を悩ますぐらいの温厚な兄が……。ショックを受ける私の手の中でブランがブルルと武者震いをし、兄の胸のポケットからキラリと物騒に光る何かが見えた。

編みぐるみ隊まで()る気だ。






























兄と編みぐるみ隊の物騒な思考に、ちょっとビビりながら食事を終えると、嬉し楽しの尋問タイムが始まります。ちぇっ。


「で、古着で買った服に、高い防御力が付与されているのはなんでだ?」


「…………」


「サクラのマントに"認識阻害"の効果があるのはどうしてだ? 付与を依頼したら、かなりの高額になる。もしかして、例の金を遣ったのか?」


「……遣ってません」


そのお金は、いま移動している馬車代と編みぐるみ隊の毛糸にちょっとだけ遣いました。まだまだ、お金はあります。


レオンさんは眉を寄せて、ものすごく恐い顔をしているが、これは私たちを心配している表情なのだ。わっかりにくい!


「お兄ちゃん、どうしよう?」


私としては『手芸創作』のスキルをレオンさんに話してもいいと思う。もしかしたら、同じスキルを持つ人がいて、『手芸創作』スキルの効率のいい使い方がわかるかもしれない! ……たぶん。


「いいんじゃないか? 俺としてはレオンさんたち「ライゼ」を信頼している。だから、話してもいいと思うぞ」


そもそも、兄の『生活魔法』スキルと姉の『治癒魔法』はバレている。兄に至っては、『生活魔法』のレベルを超えているかもしれない。だって、火だねとなる"ファイア"でネズミ型魔物が倒せるのだから。


「どうしても秘密にしたいのなら、話さなくてもいいぞ。ただ……お前たちは放っておくとトラブルに巻き込まれていそうで……心配だ」


レオンさんの麗しい顔が、ぎゅっと顰められてしまった。うわぁぁっ、イケメンって顔がくしゃっとなってもイケメンだわ。


「わかりました、お話します。私の……スキルの話を!」


ドドーンと決意を込めてレオンさんを真っ直ぐに見た。見た……あとに、てへっと笑ってお願いする。


「話すより見てもらったほうが早いので、何か繕うものとかありますか?」


いまなら無料でお直ししますよーっ。


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