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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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旅は道連れ、トラブルには巻き込まれ ①

バササッと羽ばたく音が耳に聞こえ後ろを向くと、よく知った人の不愛想な顔があった。


「あっ……」


私の呟きに兄たちが振り向くと、その人物ととんでもない従魔の存在に「あっ……」と声を洩らした。

そう、私たちの後ろにはバカデカイくせにまだまだ子どものドラゴン、レーゲンと、その主人であるレオンさんの姿がいた。


「レオンさん……って、あれ、一人ですか?」


レオンという名前の超イケメン冒険者は、アーゲン国へと移動するときに出会ったAランク冒険者パーティーのメンバーである。「ライゼ」という冒険者パーティーはリーダーのシルビオさんがテイマーであり、ドラゴンを従魔にしていた。それがレーゲンの親ドラゴン、ヴィント。他にも魔法使いのカルラさんと治癒士のオリビアさんがいて、橘家はたいへんお世話になった。んで、私たちの秘密もちょっとバレた。


人のいいシルビオさんたちは、頼りない私たちを心配していろいろと教えてくれた、大恩ある人たちなのだけど……、たしかアーゲン国のマクデルの街で別れたよね? シルビオさんたちはAランクという立場で依頼の仕事も挑戦したいダンジョンもあって忙しい人たちだったから。


「キッカたちが心配で、様子を見に来た」


ん? レオンさんだけで? 本当にリーダーのシルビオさんに了承を得て単独行動してますよね? 私の疑いのジト目からレオンさんは顔をそっと背けた。レーゲンはいつの間にかちょこんと小さな姿になって、レオンさんのマントにしがみついている。


「アオイ。乗合馬車に乗るのか?」


レオンさんは私の横をスーッと通り過ぎ兄に声をかける。むむむ、疚しいことがあるな? じゃあ、シルビオさんたちに内緒で、彼はここに来たんだろうか?


「あ、ああ。そろそろイルブロンの街へ行こうと思って。だけど……護衛の冒険者が……」


兄がチラリと乗合馬車窓口のお兄さんへ視線を流すと、レオンさんもジロリとお兄さんを睨む。哀れ、お兄さんは何も悪くないのに、レオンさんの無言の威圧にブルブルと怯えている。


「とにかく、お姉ちゃんがヤバイ冒険者に絡まれて、一日も早くここを出たいんだけど……護衛の冒険者が手配できないの」


今から冒険者ギルドに依頼を出して募るには時間がかかるし、そのヤバイ冒険者が依頼を受けるかもしれないこと。個人で馬車を借りようにも冒険者ランクが低くて信用がないから借りられないことを手短に説明した。


「そうか……。レーゲンではキッカたちを全員乗せることはできないし……。あ、では、俺が馬車の護衛をするのはどうだ?」


レオンさんはパアッと表情を明るく変えて進言してきたが、一人で馬車の護衛ってできるの?

私たちの視線は自然と乗合馬車の窓口お兄さんへ。


「へ? ああ、その方の冒険者のランクは? ええっ? えー、Aランクですか? はい、じゃあ大丈夫です。あとは、馬と御者ですけど、どうします?」


私と兄は互いに顔を見合わせた。馬は馬車牽くのと、レオンさんの騎乗用と二頭かな? そして、忘れてた! 馬車を動かすのに御者って必要じゃない!


「う、う~んと、護衛の問題の次は御者の問題か……」


変な人はイヤだし、私たちの秘密を詮索するような人やお喋りな人はダメだし。う、う~んと、どうしよう?


「御者はいらん。馬は馬車を牽く一頭だけ。馬はこちらで選ばせろ」


「レ、レオンさん?」


なにを突然、勝手に窓口のお兄さんと交渉をするので? 混乱している橘家を置いてけぼりで、乗合馬車の契約はレオンさん主導でサクサクと進められた。

































かっぽかっぽと馬が歩けば、馬車がカダンゴトンと進む。


無事に馬車を借りられてイルブロンの街へと移動中の橘家と、護衛することになったレオンさんです。なんでや? 乗合馬車の職員が誰も同行しない旅程に疑問を持ちつつもレオンさんの威圧に口を噤み、姉の安全のためとにかく街を出たかった私たちは、馬車の契約の手続のあれこれを慣れているだろうレオンさんに任せ、慌てて街を出立しました。


御者席に座り、デカくてイカつい白い馬を動かすレオンさんに、私は馬車の小窓を開けて、改めて事情を詳細に説明しましたよ。


「……ガラの悪い冒険者はどこにでもいる。サクラ、気を付けろよ」


「はい。菊華ちゃんたちには迷惑かけちゃったわ」


うん。別に今日に限ったことではない。姉に執着した男の先輩に絡まれたり、姉に恋人を奪われたと誤解した女に頬を張られたこともあるし。兄なんて姉の彼氏と間違えられて男たちに囲まれたり、彼女に誤解されてフラれたりしている。橘家には姉によるトラブルの耐性ができているのだ! まあ、異世界のトラブルは命に直結してそうだから、今後は控えてほしいけど。


「それより……お前たちのマントや服の話は、今日の夜営地に着いてからゆっくりと話してもらうぞ」


「……はい」


レオンさんは、例のガラの悪い冒険者たちが姉を追いかけてくるかもと危惧して、町や村には立ち寄らず進めるだけ進む旅程にした。なので、イルブロンの街まで宿に泊まらず野宿決定。ご飯は同行者がレオンさんだから、遠慮なくマジックバッグから取り出したり、兄が作ったりしたものが食べられるけどね。


そして……今夜、レオンさんから受ける尋問は……私が繕った服と姉のマントに刺した刺繍のこと。

ええ、やっちまいましたよ。だって、姉を守るためだと思って、ついマントに『手芸創作』のスキルを使って刺繡をしたのです。


姉の存在に気づかれないようにと願いを込めて刺した刺繡で、マントに「認識阻害」の効果が付いてました。あははは。


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