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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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これからのこと ⑥

勇者召喚に巻き込まれ異世界転移してから、私たちを召喚した元凶の国から逃げ出して、ノイス国の難民キャンプ、そこからアーゲン国の国境の街「ラント」でAランク冒険者パーティーの「ライゼ」の皆さんと出会い、いろいろと教えてもらって辿り着いたフュルト国。


国境近くの小さな街マクデルで橘家だけで生活すること一ヶ月半。冒険者登録もして細々と冒険者活動を始め、頼もしい? 仲間も増えたことだし、フュルト国での永住地候補イルブロンの街へと移動することにしました。


まあ……ここら辺の魔物を倒しても勇者である小次郎のレベルが上がらなくなってしまったことが最大の理由だけども。


「私は乗合馬車の日程と代金を調べてくる。ついでに冒険者ギルドでイルブロンの街の情報も聞いてくるわ」


一人で行動するのは危険だけど、マクデルの街中だし、行きなれた冒険者ギルドだし。いざとなったら鞄に付いているマスコット状態のブランを動かせばいい。


「菊華一人で大丈夫か? やっぱり俺も行こうか?」


「なに言ってんの? 魔物倒しに行くのにお姉ちゃんと小次郎だけだったら危ないでしょ」


実際は小次郎がいれば魔物は瞬殺されるだろうけど、何も知らない周りの人は、儚げな美女と子どもの組み合わせに良からぬことを企むかもしれない。保護者である兄が付き添うべきでしょう。


「調べものならお姉ちゃんがやろうか?」


エヘエヘヘと愛想笑いで申し出た姉の真意は親切心ではなく、魔物退治がイヤだからだ。しかも姉のレベル上げがメインなので、姉としては逃げ出したい心境なのだろう。

異世界に来たばかりのころ、魔物を見て瞳を輝かしていた好奇心は霧散してしまったらしい。


「……逃げているといつまでもリオンは編みぐるみのままだからね」


ボソッと私が呟くと、姉は「んぐぐっ」と苦い何かを飲み込み項垂れた。姉は今日からスライム以外の魔物を倒す。危ないときは小次郎やフォレスのフォローが入るから、接待戦闘みたいなモンだ。


「菊華も気をつけろよ」


「うん。小次郎もシンシャたちの動きにおかしいところがあったら、後で教えてね。解いて直すから」


「う……うん」


うむ、軽い気持ちで編み直すと言ったが、小次郎の顔が硬直してしまった。自分の魔力を渡して絆ができつつあるシンシャとヴェルデをバラバラにすると言ったにも等しいので、ドン引きされたのかもしれない。そんなつもりじゃなかったのに。

反省、反省。


「じゃあ、お兄ちゃんたちも気を付けてね」


「おうっ」


今日の橘家は、別行動です!



















一人で街を歩く。めっちゃ怖い! 前の世界では夜遅くにコンビニまで買い物とスエット姿で気軽にでかけたものだが、異世界では一人で歩くことが怖い! 周りの人がみんなスリだったり悪党に見えてくるよ~。


私は、しっかりとブランを手に握って冒険者ギルドの扉を開けた。

大人が三人もいて、毎日薬草採取依頼しかこなせず、初心者用ダンジョンを日帰りでアタックする、ダメな冒険者と認識されている窓口の受付嬢に見つからないように、別の窓口へそそくさと移動する。

こちらは、冒険者だけでなく街の人からの相談を受け付ける窓口だ。担当しているのもお爺ちゃん職員さんでニコニコしている。姉が冒険者ギルド内の事務仕事の依頼を受けたときに優しく接してくれたのも、この人らしいから冷たい対応はされないだろう。


私はゴクッと唾を飲み込んで声をかけた。


「あ、あのぅ。教えてほしいことがあるんですが……」




























その頃、菊華を除く三人は、街を出ていつも薬草採取する場所へとやってきた。それぞれ武器を手に持ち魔物討伐から始めることにする。


「に……兄さん。やっぱり私も倒さないとだめかしら?」


両手で木の棒を握り、ガクガクと震える桜の姿に、兄である葵はため息を吐きつつ、彼女を諭す。


「当たり前だろう? 桜がレベルを上げないとリオンが動かないんだから。ただの編みぐるみじゃ意味がないだろう?」


桜は口の中でモゴモゴと「かわいいから意味はある」と呟いたが、葵や小次郎の耳に届くことはなかった。


「小次郎もシンシャとヴェルデは初めて魔物と対峙するから、無理はさせないようにな。あと、自分の魔力にも気を付けること!」


「はいっ」


菊華や葵は魔力で繋がっているブランとフォレスが優秀なのか、魔力を奪われ過ぎて魔力枯渇で倒れる……なんてことはなかった。名づけをしてそれぞれが魔力で繋がったことにより、編みぐるみたちが魔力を奪いすぎないよう調節しているようだ。頭がいい、編みぐるみなのに。


小次郎は編みぐるみをそっと手の平に乗せると優しい声で名前を呼んだ。


「シンシャ、ヴェルデ」


赤いケット・シー、シンシャはむくりと起き上がると、腰のレイピアをシャーッと鞘から抜いて天へと突きあげた。


「ニャーッ!」


勇ましいシンシャと比べて、ヴェルデはもぞもぞと動き出し頭だけぴょこんと起こすとキョロキョロと辺りを見回して、「フンッ」と鼻を鳴らしぐでぇと寝そべった。


「こ、小次郎? こっちが強いんだよな? このヤル気なしのグニグニしているのが強いんだよな?」


葵の動揺する声に、小次郎はちょっと申し訳なさそうに顔を背けて僅かに頷いた。魔物図鑑にはそう記してあったけど、ヴェルデが戦闘で役に立つかどうかは、これから実戦でわかることである。


「……頼む、フォレス。桜のフォローとこいつらの面倒も見てやってくれ」


頭上をミニサイズで飛び回っている相棒を拝む葵の姿に、フォレスはやれやれとため息を吐いた……かもしれない。


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