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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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これからのこと ②

カラーシープの毛糸が高いと文句を言う私に、兄は疲れた顔をして伝家の宝刀を振りかざす。


「もう……あの神さまにもらった金貨を使おう。シルビオさんに教えてもらってお金はギルドの口座に入れたから、ちょっと高い買い物しても大丈夫だろう?」


「……高いカラーシープの毛糸を駆け出し冒険者が買い漁ったら目立つでしょ? しかもギルドカードで一括清算なんて」


それなりの店だったらお金の出どころを疑われるし、大金をギルドカードで支払うのを見られて悪い奴らに狙われるのも勘弁してほしい。


「あら、それならお姉ちゃんに考えがあります」


その言葉に振り返ると、むふーっと鼻を膨らました姉が腕を組んでふんぞり返っていた。


「桜、編みぐるみにする魔物は決まったのか?」


「うん! それよりカラーシープの毛糸を買うときの方法なんだけど……」


姉が提案したのは、「カラーシープの毛糸を購入する依頼を受けた冒険者」として「大量のカラーシープの毛糸を購入」という偽装をすること。


「これなら、カラーシープの毛糸をいっぱい買っても怪しまれないし、それなりのお店で買い物できるでしょ?」


そうだよねぇ、街の雑貨屋さんでは色のバリエーションが乏しいし、在庫も少ない。貴族の洋服を仕立てる店が愛用している雑貨屋なら、色も在庫も豊富にあるだろう。お値段は跳ね上がるが……。


「お姉ちゃんにしては冴えているけど……なんかイヤな予感がする。ねぇ、編みぐるみの魔物候補ってどれ?」


いつもぼんやりの姉がシャッキリするときは、大抵なにかを誤魔化すときなのだ。つまり、姉には私たちの機嫌を取りたいなにかがある!


「えへへ。あのね、これ」


広げた図鑑のページには……なんじゃこりゃ。


「お姉ちゃん……」


「ダメ?」


ウルウル上目遣いはやめて! だって、これかわいいの? そりゃドラゴンよりは目立たないかもしれないけど……かわいいの?


「なんで、グリフォン?」


フォレスを作ったときに、鷹とか鷲とかの猛禽類は苦手だって言ったよね? グリフォンって鷲の上半身と獅子の下半身って図鑑に書いてありますけど? ご丁寧に全体図と鋭い嘴と爪もアップで描かれてます。


「飛べるでしょ? 強いし」


「……茶色じゃない」


そう、グリフォンも体色は茶色だと思われ……じゃあ安い毛糸でいいじゃない!


「でもでも、ここに黒の毛に羽根の先が金色の珍しい色合いのグリフォンもいるって~」


ちょんちょんと姉の指差す箇所には、小さい字で確かに珍しいグリフォンに関する記述がある。……あるけど、この色合いのグリフォンって上位種のグリフォンかもって書いてあるよ?


「強い魔物、いいわよね」


ニッコリ笑顔で押し切ろうとするから、兄にガツンと言ってもらおうとしたら、兄は兄で「グリフォンは飛べる……なら飛んで移動できるか?」とブツブツ言ってるよ、もうーっ! しかし、他に候補はないのかと聞くと、オタク語りに走り始めたのでスルッと無視をする。 大天使が云々とか最初はかわいいマスコットだけど変身するとカッコイイとか。素人の作る編みぐるみには無理でしょ!


「まぁ、いいわ。頑張って作ってみるわよ。鷲……鳥っぽければいいでしょ。毛糸も金色はともかく黒はリーズナブルだったと思うし」


染色に失敗した毛糸は黒く染めると雑貨屋の店員さんが教えてくれたから、黒の毛糸の金額は記憶に残っている。


「じゃあ、小次郎は?」


姉の希望を聞いたらなら、小次郎の希望も聞かないと。小次郎は明るい顔で図鑑のページを何枚か捲ると「これ」と差し出してきた。


「これは!」


図鑑を見てフリーズする私を訝しんだ兄が、ひょっこりと私の背後から図鑑を盗み見る。


「こ、これは!」


その図鑑のページに描かれていたのは……。



















私は編みぐるみを作るときに難しい形は無理と訴えた。姉が提案したケルベロスみたいに頭が三つあるとか無理だって。だいたい三つも頭があったら、首の部分に負荷がかかって壊れやすくなるし、万が一にも頭がもげたらショックだよ。


細かい部位がたくさんあるのも拒否った。蜘蛛の足とか。元のサイズを大きく作れればいいかもしれないが、当然編みぐるみの大きさが大きくなれば使う毛糸の量も増える、つまり出費が増える。毛糸でいえば、色も注意。青系とか高めの毛糸は使いたくない。

その条件を理解して小次郎が選んだのは……。


「「ケット・シー」」


猫じゃん!


「菊華ちゃん……ダメ?」


姉が仕込んだのかウルウル上目遣いの小次郎に、「うっ」と喉を詰まらせる私と兄。ぐむむむ。


「あのな、小次郎……。俺たちは弱いから、できるだけ攻撃力が高い魔物がいいと思うんだ。ケット・シーって猫だし。かわいいけど二足歩行の猫……」


兄の説得は失敗した。当たり前だ。最後にケット・シーのかわいさを語ってどうする?


「菊華ちゃんも反対?」


「う~ん、色が緑つーのはねぇ」


緑の猫ってあり得ないでしょ? ケット・シーの体色は様々って図鑑に書いてはあるけど……緑って……。


「じゃあ、他の色ならいいの?」


あれ? そういう問題だったっけ?


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