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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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これからのこと ①

橘家揃って冒険者ギルドにやってきました。


資料室を借りるなんて、事前に予約しなくてもいいのかと不安になったけど、ギルドのお手伝いをしていた姉が言うには、資料室で勉強して活動する冒険者なんて皆無とのことだった。

命懸けの仕事なのに、そんなに脳筋でいいのか? 私はますます冒険者という仕事に恐怖を感じた。もっと安定して安全で高賃金の仕事に就きたい……。


いつもの冷たい受付令嬢とは違う愛想の良いお兄さんから、資料室の鍵を受け取り、ギルド二階の資料室へとゾロゾロ移動します。資料室が鍵付きの貸し切りでよかったわ。昨日は、同じ色の毛糸で編みぐるみを作らないでくれとブランとフォレスに抗議を受けたけど、物理で。それを受けて、兄がブランとフォレスにも魔物図鑑を見せて、作る編みぐるみを選んでもらおうと言い出した。


なぜ?


「だって、こいつらにしたら一緒に働く仲間じゃないか。やっぱり相性ってあるだろう? 桜と小次郎の意見が優先だけど、ブランとフォレスだって戦うときは連携してもらうわけだし……」


納得できる意見なんだけど、その心遣いの中に製作者である私への配慮はないのだろうか? なんか、釈然としないわー。


資料室に入るとしっかりと鍵を閉め、姉に探してもらった魔物図鑑とフュルト国の地図、特に定住地として勧められたイルブロンの街周辺の地図をテーブルに広げる。


「この街でもいいけど……冒険者と入出国者で成り立っている街だからなぁ」


兄のボヤキに同意する。アーゲン国からの入国者が立ち寄る街なので、余所者でも目立たないのはいい。でも、余所者が移動しないでずっと住み続ければ、やっぱり人の視線は集めてしまう。この街は通り過ぎる街なのだ。あと、冒険者が多いからお店も冒険者向けが多いし、仕事も冒険者相手の仕事が多い。宿が多いし、安い宿から高い宿までバリエーション豊富なのは助かっているけど、いつまでもホテル生活は疲れるもの。


「ただ、移動は危ない。俺たちがいた世界みたいに、長距離を短時間で移動できる手段はない。あ、ドラゴンは別で」


「ドラゴンなら、街どころか国を越えるのも早いもんね。こっちの世界じゃ馬車移動か……イヤだな」


馬車は揺れるしお尻は痛いし、乗っているだけでも疲れる。しかも乗合馬車となれば知らない人と同乗して移動する。気疲れするし、移動中は魔物の襲撃や強盗にも警戒しなければならない。


「でも~、駆け出し冒険者の私たちが自前の馬車を持っていたら怪しまれるでしょ?」


姉の言う通り。あのアホ神が用意してくれた金貨を使えば馬車が買えそうだけど、周りから怪しまれるし悪い奴らに目をつけられちゃう。


「そもそも、誰が馬車を動かすんだ? 俺たち馬も乗れないし手綱も握ったことないだろう?」


「あっ!」


そりゃそうだ。冒険者のほとんどは移動して依頼をこなすので馬に乗れる人が多い。でも私たちは馬なんて乗ったことない。


「……編みぐるみで馬を作って走ってもらえばいける?」


「馬車を手に入れたら、編みぐるみの馬に牽いてもらおう」


私は兄と頷きあい、魔物図鑑に手を伸ばした。せっかく作るなら、ただの馬ではなく、強くてカッコイイ魔物の馬がいい!


























ペラリペラリと魔物図鑑のページを捲る音が部屋に響く。


姉と小次郎はページに描かれている魔物を食い入るように見ては、ブランとフォレスの顔色を窺っていた。兄と私はもう飽きた。だって、あの図鑑を見るのもう五回目だよ? 何回見ても載っている魔物は一緒なのにぃ。


「お兄ちゃん、お腹減った」


朝に資料室を借りて、すでに昼の時間である。何時間、図鑑を見ているのよ。


「そうだな。俺と菊華は地図を見ながら、あっちでメシを食おう」


兄はチラリと姉たちの様子を見て、一緒にご飯を食べることを放棄した。姉たちの邪魔をしたら後で怖いから、放っておきましょう。


「もぐもぐ。この街にいる間に編みぐるみ隊は完成させたいんだが……」


「カラーシープの毛糸は高いし、移動する乗合馬車の料金と、宿代も稼いでおかないと」


ここには初心者用ダンジョンがあるから、薬草以外にも稼げるけど、他の街に出没する魔物のレベルが高かったり、ダンジョンのレベルが高かったら、私たちの稼ぎは薬草採取のみになってしまう。それは、とってもショボい。


「そうだな。でも、イルブロンの街まで乗合馬車は出ているし、この大きな街道沿いなら強い魔物も出ないみたいだぞ」


兄がマクデルからイルブロンまでの道を指で辿ってみせる。私は大きなサンドイッチにかぶりつきつつ、地図とさっきまで見ていた魔物図鑑に書かれていた棲息地を照らし合わせていく。


「そうね、だいたい初心者用ダンジョンに出る魔物と変わらない。犬型魔物は群れをなして襲ってくるから、ちょっと厄介だけど」


乗合馬車で移動中は護衛の冒険者たちが魔物を片付けてくれるから安心だ。ただし、ブライバシーはない。


「ん~、でも、いつまでもここにはいられないし。移動するなら野営するのに厳しくないときにしたい」


乗合馬車で移動するときは、ほぼ野営だ。テントもなく馬車の周りに集まってゴロ寝である。そりゃ、暑い季節と寒い季節、雨期は避けたいよね。


「じゃあ、移動することも考えて計画立てなきゃ」


「早く編みぐるみ隊を完成させたいよなぁ」


だから、カラーシープの毛糸が高いんだって!


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