38話 異変
魔力の放出訓練中突然意識を失ったが、すぐに目が覚めた。
目が覚めて一瞬何をしていたのかわからなくなって焦った。
相変わらず体は動かないが、精霊召喚も問題ない。本当に一瞬意識が飛んだだけらしい。
しばらく体の確認をしていたが、差し当たっての問題が見つからないので、学院都市に意識を戻す。
ユニオは消えてなくなったりはしていない。
.....が、何だこの状況。
ユニオが教室の壁にめり込んでる。
講座を受けている他の生徒の視線が集まっていて恥ずかしいな。
ユニオを壁から抜け出させ、とりあえずこの場にいる唯一の知り合いであるペニシラに声をかける。
「何が起きたんだ?」
ペニシラが不快そうな顔を向けてくる。
「何がだと?人が寝ているところに抱きついておいて、よくもそんなことが言えたな」
「抱きつく?誰が誰にだ」
「お前が私にだ」
意識が飛んだ一瞬でユニオの操作を誤ったのだろうか。
「それでユニオが吹っ飛ばされたのか」
「......あ?舐めてるのか?魔術の勉強の手伝いは了承したが、それ以上のことが許されるとでも思っていたのか。変態め」
ペニシラはこちらを見下した顔を向けてくる。
「人の寝込みを襲うなど見下げ果てたカスだな」
状況だけ見れば言い過ぎではないな。
弁明しないと。
「悪い、本体の意識が飛んで操作を誤ったんだ。誓ってペニシラに抱きついたわけではない」
「どうだかな」
相変わらず見下した顔だ。
「操り人形に抱きつかせてなんの意味があるんだ」
「どうだか......」
「触覚は共有していないんだ」
「それでも何かやりようはあるんだろう。貴様のような変態にはな」
もうどうしようもないのか......。
全く信じてくれない。
「もう信じてくれなくていいんだけど、改めて何が起きたか聞いていいか?」
「ふん、いいだろう。だが話すほどのことではない。私が眠ろうとしていたところに貴様の人形が寄りかかってきて、私が闇魔術で吹き飛ばした。それだけのことだ」
「すぐ起きてきたか?」
「まだ他の学生が呆けているくらいにはすぐだな」
じゃあ、意識が飛んでいた時間自体は一瞬だったのか。
「何にせよ、寝ていたところを起こしたのはすみませんでした」
その点においては謝罪せざるを得ない。
ペニシラの眉根が若干緩くなった。
「ふん、まあいいだろう。貴様が私をどうこうできるわけもないしな。許そう」
許された。よかった。
「もう起こすんじゃないぞ」
ペニシラはもう一度眠るようだ。
「おやすみ」
「ああ」
結局、俺の意識が飛んだのはなぜなんだろう。
魔力放出がきっかけなのは間違いない。俺が魔術を使えない体質なのか、精霊召喚と魔術は併用できないのか。
わからない。
フォリアかシャルロットあたりに聞いてみよう。




