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37話 火魔術習得講座

 ペニシラとの約束を取り付け、次の講義に向かおうとしたところで、体に異変が起こる。


 ユニオの体ではなく、本体の方だ。

 相変わらず動かないのだがいつもよりさらに怠い。

 こちらの世界に来て最初の頃を思い出す。どうにも眠い。


 が、意識が飛ぶほどではないな。次の講義に向かおう。

 次は「火魔術習得講座」だ。火魔術スキルを持っていない学生のための講座なので、火魔術を習得できたらその時点で単位をもらえると言う。

 尤も、すぐに習得できるとは限らず、最後まで習得できないこともあるようなので気楽な授業とも思えない。

 今回は中等部、高等部の区別なく多くの学生が集まっていた。


 あ、ペニシラいるじゃん。

 目が合うと舌打ちをされた。


「お前もこの講座を取っていたのか。別のにすればよかった」


 近づくと悪態をつかれる。


「そういうな」


「というか、ペニシラは火魔術を使えないんだな」

「私には闇魔術があるからな」

「中等部でも取れる講座だろうに、なんで今更?」

「魔術習得系の講座は一度習得すると二度と取り直せないからな。高等部になると中等部の一部基礎的な講座は取れなくなる。だから、そちらを中等部の卒業単位に回したんだ」


 本当に楽がしたいんだな。


「折角講座を受けても習得できなかったら時間の無駄にならない?」

「私が習得できないわけがないからな。すぐに習得してあとは自由に過ごさせてもらうさ」

「どこからそんな自信が来るんだ。相性とかもあるんだろう?」

「魔力眼があれば習得など容易い。ただ術者の魔力運用を真似するだけだからな」


 何とズルいスキルだ、「魔力眼」。


「それでつい水魔術を習得してしまったから、今後習得できる魔術が1つ減ってしまった。講座内で習得すれば単位がもらえたものを......」


 すごいイライラしてるけど、内容的には自慢になってないか?

 そんなすぐにスキルって手に入れられるの?


 周囲に耳を傾けると高等部の学生の声が聞こえる。

「俺、この講座中等部の頃も何回か受けたんだけど、結局習得できなかったんだよな」

「才能ないんじゃね?諦めたら?」

「うるせぇ。火魔術は男のロマンだろうが」


 火がロマンってのはわからないでもない。この世界も共通なんだな。

 複数回受けても習得できない彼のことを思うと、()()()()()()()()()()、と言っているペニシラの異常さがわかる。



「では、まずはみなさんに火魔術のお手本を見せます。『火の玉(ファイア・ボール)』」


 授業自体の説明が終わったあと、早速教師の実演が始まる。

 ソフトボール大の火の玉がふわふわ浮いている。


「これは火魔術スキルを習得してすぐに使用できるレベルの魔術です。大した破壊力もありませんが、ものを燃やす力はあるので、最大限注意を払いましょう」


 ふむ。


「お、できた」


 隣でパニシラが早速火魔術を習得したようだ。早すぎ......。


「この講座では、みなさんの机に置いてある修練書を見ながら進めていきます。今日は魔術の放出の訓練から行ないます。1ページを開いてください」



 しばらく説明を聞いて、自主練の時間になった。

 俺は本体の方で訓練することにしようか。

 精霊を使わない魔術、どんな感じなんだろうか。


「ペニシラはどうするんだ?もうやることないようなものだろう?」

「私は寝てる。今日の講座が終わったら単位認定でももらいに行くさ」


 気楽だねぇ。さっきの火魔術ロマンニキなんか必死な表情で訓練しているってのに。



 さて、本体に意識を戻す。精霊を使うときに魔力を使っているはずだから、そう難しくはないはずだ。

 体の中の魔力的なものを探る。


 やってみて思ったのだが、自力で魔力の出し方を編み出すのは多分無理だな。当たり前に魔力が体に巡っているから、意識を向けるのが難しい。ちゃんと流れてますよ、と言ってもらわないと永久に気づけないかもしれない。


 よし、出してみるか。



 ふん、と魔力を体外に出そうとした瞬間。

 とてつもない眠気に襲われ、意識を手放した。

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