34話 授業開始
次の日、フォリアに地下室のことを確認したくはあったのだが、今日は授業の初日なので後回しにしよう。
まずはシャルロットたちおすすめの「魔術基礎」の授業だ。
シャルロットやゼートたちには簡単すぎるので、彼らは彼らで受けたい授業を受けている。
というかこの授業は本当に基礎的なようで、中等部を出ていれば受ける意味もなく、高等部で受けるのは外部から来た人間の中でもかなり限られている。
年下ばかりでやや肩身が狭い。
他に高等部は......2人だな。
ところで、魔術学院には制服がある。
高等部と中等部で違っており、わかりやすいのは襟章だろう。
中等部は横線、高等部は星マークだ。学年ごとにそれぞれ数が増えるので、中等部3年は横三本線の襟章、高等部3年は星3つの襟章になる。
ここにいる高等部は俺含め星1つ。高等部1年であるということだ。
1人は教師の話を聞いているかどうかわからないニヤニヤ顔をしている黒髪の高身長女子。
もう1人は男......だよな。小柄だが少女って感じじゃない。おどおどとしている感じが庇護欲をそそられなくもない。
彼らを観察していると、黒髪女と目があった気がした。それもユニオの視点ではなく周囲に浮かせている精霊の視線とだ。
精霊が見える人間はこれまでシャルロットにしか会ったことがないので、偶然視線がかち合っただけだろう。そう思っていたが、精霊を動かしても目が追ってくる。
この女、見えているのか?
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授業にも意識を向けていたが、その大部分を黒髪女との鬼ごっこに費やしていたので、あまり頭に残っていない。初回の授業なので大して重要なことは話していないとは思うが、これでよかったのかという気がしないでもない。
まあ、授業を潰したおかげでわかったのは、黒髪女は精霊を視認できている訳ではなさそうだということである。
俺が視界を共有している光精にのみ注意を払っていたのだ。
最初は光精1体で遊んでいたのだが、複数展開して視点を入れ替えても、ぎゅるぎゅる追ってきた。
視線や気配を感じ取るスキルでも持っているのだろう。
最初は鬱陶しそうな顔をしていたのに、次第に猫じゃらしを追う猫のような眼光になっていたから怖かった。
幸いにもユニオの視線には大して意識を向けてこなかったから、俺が精霊を操っているとは思っていないだろう。
次回はもっと真面目に授業を受けよう。基礎であっても、この世界に慣れていない俺にとっては他の人間より難易度は相応に上がるだろうし、気を抜いていいこともあるまい。
そう思っていたのだが.....。
「おい、なんだお前」
教室を出ようとしたユニオの肩を、黒髪女が掴んできた。




