30話 入学式
今後の方針を決めた次の日、入学式があった。
昨日の今日で入学手続きを終わらせたのは、滑り込みというレベルではない気がするが、俺は困らないからいいか。
「みなさん、ようこそ魔術学院へ。生徒会長のフェリシア・フォン・フロルです」
何人いるのかわからない、劇場みたいに広い講堂の中心で、生徒会長の挨拶が始まった。
気になったことがあるので小声で隣のシャルロットに尋ねる。
「フロルってついてるけど、もしかして......」
「フロル公国の第1公女様だよ」
「......やっぱり公女だから会長に?」
「それもあるだろうけど、それが問題にならないくらいに優秀な人だね。気さくで、面倒見が良いから、中等部の女の子たちからの人気も高かった気がする。確かネイアも一時期追っかけをしていたような......」
「あくまで一時期ね。一時期。でも仕方ないと思わない?超かっこいいんだから」
ネイアの瞳が煌めいている。
本当に一時期なのだろうか。
今もときめきが止まらない感じだが。
改めて公女の方を見ると、確かにかっこいい人だ。
長く美しい金髪が、どことなくシャルロットに似ている気もする。
「ここでは身分の違いなど関係ありません。私は知識と勇気を持ってこの世界の謎を解かんとする全ての方々に敬意を払います」
「......ですが、気にされる方も一部にいらっしゃいます。そんな時は私が力になりましょう。共に魔術の深淵を究めていこうではありませんか」
それを締めくくりとして、会長の挨拶が終わった。
「この後はクラスに行くんだっけ?」
「そうだね。選択授業だからクラスでずっと一緒に過ごすわけではないんだけど、やっぱり最初は似たような授業を取ることになるから、仲良くしといたほうがいいと思うよ」
「各国の貴族の子供とかも来るから、世間知らずなオカジマはあんまり近づかないほうがいい気がするけど......」
ネイアの言葉に、シャルロットが確かに、と言う顔でこちらを見てきた。
尤もな話だ。
「端っこで目立たないようにしてるよ」
「それがいいかもね」
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3人ともクラスは同じだった。
どういう基準で分けられているのか知らないが、フォリアの采配だと思われる。
意外と権力を持ってるのか?
俺たちのクラスに着くと、結構広い部屋だった。30人くらいは既に集まっていた。
妙に髪色が派手なやつが1人いるな。
シャルロットの仲間キャラか?
だが話しかけることはせず、大人しく3人で後ろの方に座っておく。
すると、案の定赤髪を逆立てた青年がやってきて、シャルロットたちに話しかけてきた。
「よお、シャルロット。しばらくぶりだな」
「久しぶり。ゼート」
小声でネイアに話しかける。
「誰?」
「中等部からの知り合い、ゼート・フォン・アルブリア」
「フォンが作ってことは、貴族か?」
「ボロン王国の侯爵の次男」
ボロン王国ってどこだ?まあそれはいいか。
「聞いた話じゃ、スタッツの方に行ってたらしいじゃねぇか。例の万神殿とやらはどうだったよ」
「お陰で無事に契約できたよ」
聖女の事情も話しているのか。随分気やすい。
仲がいいのだろうか?振る舞いがチンピラっぽいから仲間キャラじゃないのかも、と思い始めていたのになんか普通に友達っぽさがある。
「はん、それはよかったな。お前が旅行している間に俺は火魔術のレベルが6になっちまったぜ」
「おお、すごいね」
「それはすごいのか?」
再び小声でネイアに確認。
「魔術で6はすごいよ」
「高等部1年にしてはってこと?」
「魔術師全体で見ても上の方だと思う。中等部の卒業基準の1つがなんらかの魔術スキルをレベル3にすることだから、同年代では飛び抜けてるんじゃないかな」
「中等部で主席だったシャルロットはもっとすごいのか?」
「シャルロットは平均的になんでもできるタイプだったからね。飛び抜けたものはないけど、魔術は6属性全てレベル3。魔術学院の評価基準的に、座学、実技含めてなんでもできる子の方が評価点を集めやすいんだよ」
「ゼートは火魔術だけ飛び抜けてたのか」
「というか火魔術しか使わないね。それで中等部次席」
すごいな。主席次席ってことで、対抗意識でも持っているのだろうか。
「ちなみにネイアは?」
「あはは、あたし?聞かないでよ、そんなこと」
「座学がボロボロで、結構ギリギリの卒業だったよ......」
「......そう」
悲しい沈黙が流れた。
「で、テメェは誰だよ」
ゼートが俺に話を振ってくる。
「彼はオカジマ、万神殿で出会って、魔術学院に通うことになったの」
「万神殿で出会った?どういうことだ?」
シャルロットが言っていいか、目で確認を取ってくる。
ネイアに全部言った時に驚いていたのに気づいたのだろうか。
別に問題ない、と頷く。
「オカジマは万神殿の魔法陣に囚われているの」
「囚われている?じゃあ、こいつは誰だ」
「彼の操る人形。本体は今も万神殿にいる」
ゼートが困惑顔になる。
「それは、俺を馬鹿にしてんのか?魔術がここまで届くわけねぇだろ」
「実際届いてるんだよ」
ゼートが改めてこちらに目を向ける。
「お前、魔術のスキルレベルは?」
「魔術スキルは持っていない」
「じゃあ、何でコイツを操ってやがる」
ユニオの胸を指でこづかれる。
「「精霊召喚」ってスキルだ」
「精霊っていうと、シャルロットが見えるとか言う......。本当か?」
ゼートがシャルロットに確認し、本当であることを知る。
「実際に見せてみろ」
やや高圧的だが、別に拒否するほどのことではない。
だが......。
「ここでか?」
室内で魔術をブッパなすわけにもいかないだろう。
「いや、後で闘技場に行こう。模擬戦でお前の実力を見てやる」




