23話 ネイア
明くる日、シャルロットの寮の入り口あたりに精霊をふよふよさせていると、知らない少女と連れ立ってシャルロットが出て来た。
向こうもこちらに気づいたようだ。
「おはよう」
「おはよう、オカジマ」
挨拶をしてから気づいたが、精霊が見えているのはシャルロットだけなのでこれでは変な子になってしまうのではないだろうか。魔法がある世界ならそんなに気にすることではないのかもしれないが......。
あ、ちゃんと隣の少女が変な子を見る目をしている。
少し会話を待っていてもらい、裏路地からユニオを連れてくる。
「おはよう」
「うん、おはよう」
改めて挨拶をしてから初顔の少女に目を向ける。
オレンジの短髪の元気っ子という印象を受ける。
「初めまして、オカジマです」
「ネイアです、よろしく」
手を差し出されたので握手をしておく。なるほど、握手する文化圏なのね。
一応名乗ったが、ネイアはなんの人なのだろうか。
向こうもこちらが何者か疑問に思っているだろうが、何をどこまで明かすかの打ち合わせをしていないのでシャルロットに合わせる方がいいだろう。
言っていいかわからないのは、ユニオが本体ではないこととか、そんなのが魔術学院に入学することとか、精霊を操る力のこととか、色々だ。
だが、そんな心配は意味がなかった。
「オカジマは今度魔術学院に入学する精霊召喚使いで、この体は本体じゃないの」
全部言った。言っていいやつなんだ。
ルール的にグレーなことをしているのかな、と思っていたのだが......。
「それ、学園都市のルールとして大丈夫なの?」
ネイアの認識的にも怪しいらしい。声を若干顰めて聞いてくる。
「ダメだったかな?フォリア先生が大丈夫な感じ出してたから.....」
シャルロットはあれ?みたいな顔でこちらを見てくる。
知らんよ。この都市のルールなんて知らんし......。
「俺のことはともかく、ネイアさんはシャルロットのお友達?」
「そう。幼馴染なの」
髪色が全然違うけど、同じ国の出身者なのだろうか。
シャルロットは透き通る金髪で、ネイアはオレンジ髪だ。
よく考えればフォリアは明らかに違う人種っぽい見た目なのにフロル公国出身と言っていたし、この世界は肌色、髪色などに国による差はないのかもしれない。ますますゲームっぽい。
「あー、オカジマくんは誰?っていうか何?」
俺の怪しい要素をバラされた結果ネイアの表情が若干険しい。
「昨日までスタッツに行っていたでしょう?
そこで彼の本体に助けてもらって、そのお礼にここまで彼の精霊を連れてきたの」
ん?
「俺助けたっけ?」
そんな記憶はない。目の前で血反吐はいた記憶しかない。
「契約神のことを教えてくれたじゃないですか」
「あぁ、あれ」
助けたっていうか、どことないチュートリアル感にテンション上がってただけだが。
「本体って今どこにいるの?」
「スタッツ、だよね?」
ネイアに質問されたシャルロットに確認される。
「うん、まだ魔法陣の上で動けないでいるよ」
今日も床が恋人だ。
闇精で浮遊するのは体に力が入らない分、安定感に欠ける。
「スタッツって馬車で1週間の距離でしょ?なんでこの、人形を操れるの?」
「精霊がなんとかしてるらしいよ」
「そんな遠隔魔術は聞いたことないんだけど......」
シャルロットやフォリアが学園都市にどれだけ近づいても元気に動き続けるユニオを見て何も言わなかったから勘違いしていたが、やはり精霊召喚の射程はどこかおかしいらしい。
射程チート、ってこと?
「まあ、なんか操れてるから細かいことはいいんだよ」
「魔術学院に進む学生とは思えない発言だね」
ネイアが何こいつって顔をしてくる。
そうか、魔術学院はそういう研究もする場所なのか。
魔法陣の謎の解明にしか興味がなかったから気づかなかった。




