17話 旅立ち
学園都市に行くと言っても、俺の体はお留守番だ。
ジョルジョ神父たちに別れを告げる必要もない。
色々事情を知っているシャルロットたちの前に、ユニオを出しっぱなしにしておく必要がないからだ。
精霊に意思はないが、シャルロットたちについていく程度ならできる。
常に気を配っておかなくとも問題ない。
精霊は今まで死んだり壊れたりしたことがないが、不死身不壊の存在かどうかはわからない。
その点だけ心配だが、まあ多めに精霊をくっついていかせれば同時に破壊されない限り、いくらでも追加召喚はできる。不安になるほどのことではないな。
「ねぇ、オカジマはどこから来たの?」
何日か移動を共にした結果か、シャルロットは随分気安く接してくるようになった。
今は馬車の中3人、いや、2人と1体で雑談タイムだ。
御者は含めていない。
ちなみに馬車も馬もかなり上等なものらしい。
揺れがどんなものかは、触覚がわからないのでなんとも言えない。ただ、ユニオの視界をそのまま共有すると酔う程度には揺れる。
だから空中の光精視点で見ている。
「東方にある土神へリアルを信仰する国から来た、と言うことにしている」
「どう言うこと?」
「いつの間にかあの万神殿にいたから、自分の国がどの辺りにあるかわからないんだ」
「名前くらいは覚えているんでしょ?まさか記憶喪失?」
ここで日本の名前を出したところで、郷愁に襲われるだけだしなぁ。
「覚えているが、言っても多分伝わらない。あまりにも遠いんだよ」
「場所がわからないのに、遠いのはわかるの?」
煙に巻くのは難しいな。
「ああ、きっと俺は帰れないとだけはわかっている」
「そう......」
空気が重い。
フォリアも黙っている。
話を変えよう。
「シャルロットはどこの国出身なんだ?」
「私はフロル公国の出身」
「へー」
「知らないんでしょ」
見透かされてる。
その通りだ。俺は国のことなど何も知らない。
「フロルはワイノー帝国の属国で、学園都市のすぐ近くにある」
フォリアが説明してくれた。
「私の国でもある」
なるほど。
「どんな国なんだ?」
「うーん。世界最大の花畑が有名だな」
なんだそれ。花畑を誇りに思う国って意味わからんぞ。
農作物の生産量を誇るならまだしも、花って......。
「他国の人間には想像もできないだろうが、あれはフロル出身の人間にとって誇りなんだ」
「ほー」
「興味ないでしょ、その反応」
シャルロットの頬が膨らむ。
「本当にすごいんだからね」
実際想像できなさすぎるからな。
国の紹介に使われる花畑ってなんだ。
「それは広いのか?」
「凄まじく広い花畑だが、広いだけではないな」
「珍しい花が咲くのか?」
「珍しい花が数多く、固有種も多いが、それだけではないな」
あとはなんだ。花畑の凄さが想像つかない。
フォリアはふっと笑った。
「とにかくすごいんだ。機会があったら一度見に行ってほしい。
あれは実際に行って見なければわからない」
銀髪短髪褐色肌のクール系お姉さんであるフォリアがこんなにおすすめするとは......。
行った方がいい気がしてきた。
「いいですね。今度3人で一緒に行きましょう」
シャルロットもノリノリだ。
よし、魔術学院で万神殿を抜け出す準備ができたら、フロルに行こう。
この世界の目標が1つできたな。




