14話 万神殿
お姉さんの指示で、魔法陣を隠さないようしばらくふらふら移動していたが、大体の結論が出たようだ。
「見たことのない複雑な魔法陣だったから確実なことは言えないが、これは地脈の管理用の魔法陣の一種だな」
「地脈?」
知らない子ですね。
「あまり一般的な知識じゃないから知らないのも無理はない。
この星には地脈というものがあり、星全体の魔力のバランスを保つ役割を持っている。
そして、地面の深いところにある地脈と、地面の上を繋いでいるのがこの魔法陣だ」
「以前別の場所で見た地脈管理用の魔法陣と共通する部分があるから、これは間違いない。
だが、記述の意味がわからない部分もある。すぐに結論を出すことはできないが、ここが万神殿であることに関係があるのだろう」
万神殿......。
「そういえば2人はなんでここに?」
2人が目配せで何か相談した。
聞いちゃいけないことだったのだろうか。
答えたのは少女の方だ。
「ここは万神殿、数多の神を祀る場所。
ここには、私のスキル「無垢の聖女」の力を引き出すために来ました」
そういえばスタッツにすごいスキルを持っている人が来ていると聞いた気がする。
この少女のことだったのだろう。
「「無垢の聖女」というのは?」
「まず、「聖女」系スキルが他の数多くのスキルとどう違うか知っていますか?」
他の数多くのスキルについてもほとんど知らないが、確かに「聖女」というのは特別感がある。
首を横に振ろうとして、動かせないことに気づく。
対人は久しぶりなんだ。
「何も知らないです」
「「聖女」系スキルは神との契約により力を発揮します。
「戦の聖女」であれば戦神スタリオン、「水の聖女」なら水神レアといったように、あらかじめ決まっています。神と契約を結ぶことで、スキルは真の力を発揮するのです」
ははーん、わかったぞ。
「つまり「無垢の聖女」というのは無垢の神の力を使うんですね」
少女が哀愁のある疲れ切った顔になる。
「残念ながらそんな神は見つかりませんでした。
なので、最後の頼みの綱として、多くの忘れられた神も祀っている万神殿に来たんです」
「そうですか」
色々探し回ったんだろうな。
「見つかるといいですね」
「......はい。
私にできることはないので、神像を調べていますね」
トボトボと少女は歩いて行った。
「僕のことは後でいいですよ?」
お姉さんに声をかける。
「いや、大丈夫だろう。あれは単に山登りの疲れが出ているだけだ」
アレェ?そんな深刻なアレじゃないの?
「後はさっきお前が吐血した衝撃だな」
すみませんでした。
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「やはりよくわからんな」
「何がです?」
「お前が動けなくなっている理由だ。
そんな機能はこの魔法陣に組み込まれていない」
俺が異世界人であることが何か関係しているのだろうか。
異世界召喚が何か変なバグを起こしているとか。
「仮に魔力を吸われ続けているのだとしたら、生きていられるわけがないしなぁ。
......いや待て」
お姉さんが考え込んだ。何か思い当たることがあったのだろうか。
「お前の魔力量はどの程度だ」
質問されたが、魔力が何かまだわかっていないのでその量など知るわけもない。
「測ったことがないのでわかりません」
「多いと言われたことはないか」
「ないですね」
「そうか......」
「お前の魔力が膨大であると仮定すると、ある程度説明がつくんだがなぁ」
「どういうことですか?」
「人間は魔力を失うと動けなくなるだろ?」
「初めて知りました」
「お前は何も知らんな。
まあいい。とにかくお前のその症状が魔力欠乏だとすれば、この魔法陣は魔力を吸っていることになる。
地脈には吸収する場所と放出する場所の2種類があり、それらが均衡をとっている」
「地脈の魔力吸収速度は尋常ではないから、人間がその上にいたら普通は死んでしまう。
だが、仮にお前がそれにギリギリ耐えられる魔力回復速度をしているなら、動けなくなるだけで済むかもしれない」
「なるほど」
魔力チートも異世界転移特典なのだろうか。
「じゃあなんで外に出たらダメージを受けるんでしょう」
「そこなんだ。
魔力が関係しているのだとしたら、思いつくのは魔力過剰だが...」
「魔力過剰というのはなんですか?」
「魔力許容量を超えて魔力を流し込んだ時に、体が重大なダメージを受けることだ。
魔力回復ポーションの飲み過ぎ程度では、気分が悪くなるだけですむが、それも行きすぎると深刻なダメージを受けたはずだ」
「それではないんでしょうか」
「普通、魔力回復は魔力許容量を超えることはないんだ。
魔力回復に合わせて魔力許容量も成長するから、自然な魔力漏出で釣り合いが取れるからな」
「なるほど」
何もわからず、か。
「なんなんでしょうね?」
「すまんな。今はこれ以上のことは言えない。
助けてやりたいとは思うが、調べるのには時間がかかる」
「いえ、お気になさらず。すぐに死ぬということもないでしょうから」
お姉さんとその後しばらく談笑していたところで、少女の声がかかった。
「見つかりました!契約できる神が!」




