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13話 出会い

今回やや長いです。

 今日も教会にユニオを送り込もうかと考えていると、万神殿(パンテオン)のある岩山中に放っていた精霊に反応があった。


 人が岩山を登ってきている。

 二人だ。

 風の強い岩山なのでローブを纏っている。


 なんだろうか。

 植物はろくに生えていないし、鉱物調査とかでもあるまい。

 念願の万神殿(パンテオン)訪問者だろうか。


 闇精の力で体を浮かせ、神殿内部を確認するが、特に散らかってはいない。

 相変わらずトイレはいらないし、食事もろくに取っていないから、暇つぶしに作った土人形くらいしかない。

 トレーニングの時に飛び散る血も、水できちんと洗い流している。


 ......椅子でも用意して待つか。


 ..........


 万神殿(パンテオン)の入り口から声が聞こえてきた。


「先生、ここですね」

「ああ。ここが万神殿(パンテオン)だ」


 二人とも女性だ。

 会話から察するに師匠と弟子的な感じだろうか。


 中に入ってきた。

 若い方と目が合う。


「先生、誰かいますよ」

「ここは無人のはずだが。何者だ」


 お姉さんの方に杖を向けられた。

 魔術師なのか。それも攻撃魔術師。

 ジョルジョ神父は回復専門っぽかったし、杖を使わなかったから見るのは初だな。


「怪しいものではありません」


 体は相変わらず動かないので、風精を通して会話している。


「私は何者か聞いている」

「岡島賢一です」

「オカジマ?聞き馴染みのない名前だが、君はここで何をしている」


 なんと答えようか。

「何もしていません」


 お姉さんは眉根を少し上げた。

 少女の方は不安そうな顔をしている。


「何もしていないだと?ここをどこだと思っている」

「どこなんですか」


 するとお姉さんが吠えた。

「さっきからふざけているのか」


 怖。動けないから向こうに伝わっているかあれだけど。

 素直に答えただけなのに。


「大体なんだ、その格好は。もっとちゃんと椅子に座れ」


 俺は人が来ると思って岩の椅子に座っていた。

 だが、力が入らないので、だらんとした感じになっている。

 ちゃんと座れと言われたら、確かにそうだ。


 少しずつ説明していくしかないか。


「体が動かせないんです」


 疑っているのかこちらの顔をじっと見てくる。

「む、そういえばさっきから口が動いていないな。どうやって話しているんだ」


 精霊のことはぼかした方がいいのかな。

 魔術ということにするか。

「風魔術で」


「馬鹿な。

 風魔術でそこまで複雑なことはできないはずだ。

 ますます疑わしい」


 風魔術ではできないのか。精霊だからできることだったか。

 正直に言おう。


「風の精霊で」


「風の精霊?」

 なぜかお姉さんは少女の方に目を向けた。


「確かに、この人の周りに精霊が見えます。

 どうやって操っているのかはわからないですが......」


 少女は精霊が見えるのか。

 だが「精霊召喚」スキルを持っているわけではない?

 まあいいか。後で聞こう。


「信じてもらえました?」


 お姉さんは杖を少し下げた。

「精霊を操っているというのは信じよう。私の知らないスキルか何かだろう。

 体が動かないというのも本当だろう。

 だが、結局お前がここで何をしているのかはわかっていない。話してもらおう」


 俺は気づいたらここにいたこと、体を動かせないこと、などをかいつまんで話した。

 異世界人ということは話していない。混乱を招くだけだろうし。


「俄には信じられんな」

「でも、本当に困っているように見えますよ」

 少女がフォローしてくれた。

 嬉しい。優しい子がいてくれてよかった。


「本当か?私にはだらけきっているようにしか見えないが......」

「......」

「......」


 俺も少女も黙ってしまった。

 体勢的には否定できない。

 悲しい。


「その魔法陣が問題なのか?」

 お姉さんも黙っていたのは考えていたからか。

 魔法陣に近づいてくる。


 だが、止めた方がいいかもしれない。

「近づかない方がいいと思いますよ」

「なぜだ?」


 警戒されてしまった。

 しかし、どうしようか。


 少し驚かせてしまうだろうが、魔法陣の危険性を実際に見せよう。


「少し下がっていてください」


 2人が下がってくれたので、闇精の力で浮遊して魔法陣の外に向かう。

 だが、待ったがかかる。


「待て、動けないんじゃなかったのか」

「少しなら浮けるんです」

「それも精霊の力か」

「そうです」

「そうか......」


 ご理解いただけたようで何より。

「言うほど動けないわけじゃないじゃないか」と言う言葉は無視する。


「じゃあ今から魔法陣を出ます。よく見ててくださいね」


 疑問顔だが、すぐにわかる。


 魔法陣を出る。

 もう立ち上がるという無駄なことはしない。

 顔面ダイブは痛いのだ。


「何をしているんだ?」

 困惑の声がかかる。

「少し待ってくださいね」

「お前、声が」

「魔法陣の外なら自分の口で話せます」


 ますます困惑顔だ。

 何が起こっているかわからないだろう。

 まあ待て、今からすごいものが見れるから。


 .........。

 .........。

 .........。

 来た。


「グプォ」

 口から血を吐く。


「ッ」

 少女が口元を抑えるのが見えた。


 だが安心してほしい。そんなに飛び散らせず、服にかからない吐血の仕方は既にマスターしている。


「大丈夫ですかッ」

 少女が血相変えて駆け寄ってくる。

 おお、せっかくかからないように吐いたのにローブに血がついちゃったじゃん。


「グプ...。大丈夫です。大丈夫です。慣れてますんで」

「そんな。こんなの......。」


 こんな驚かせるつもりはなかったんだが......。

 ......あぁ、そうか。

 自分が慣れてしまっただけで、いきなり人が血を吐いたらびっくりするか。

 やってしまいましたなぁ。


 魔法陣に戻ろうとしていた俺の体を少女が抱き止める。

「あの、離してもらえます?」

「嫌です。こんな、動くこともできない人の最後が一人だなんて哀れすぎます」

 泣いてるじゃん。

 マジで申し訳ない。

 でも、離してもらえないと本当に死んじゃうんだが。


「本当にいいから」

「そんなっ。せめて最後くらいは見送らせてください」


 体に力が入らなくなりはじめてるので、体を抱え込まれたら抵抗できない。

「いや、本当に離して。マジで。いや、離せえぇぇぇ」


 ----------


 絶叫してしまった。

 あまりの俺の形相にお姉さんが何かを察して少女を説得してくれなかったら、想定外の死を迎えるところだった。


 なんとか魔法陣に戻り、今は光精を大量に召喚して体を治している。

 ここしばらくは、こんなダメージを負う前に魔法陣に戻っていたから治療に時間がかかりそうだ。


 ステータスを見ると随分成長している。

 はは、やったぜ。


 ----------------

 スキル

 精霊召喚

  火精召喚(サモン・イグニス)<Max>

  水精召喚(サモン・アクア)<5>

  風精召喚(サモン・ヴェントゥス)<Max>

  土精召喚(サモン・テラ)<Max>

  光精召喚(サモン・ルクス)<Max>

  闇精召喚(サモン・テネブラエ)<Max>

 ----------------


 妙に伸びない水を除けばカンスト。

「精霊召喚」スキルはほぼほぼ極まったと言うことだろうか。


 お姉さんから声がかかる。

「大丈夫か」

 心配そうな声だ。まあそうもなるか。反省。


「ええ、お見苦しいところをお見せしました」


「いや、口で説明してもらえればよかったんだが...」

「手っ取り早いかなって」

「......そうか」


 ご理解いただけたようだ。


「つまり、魔法陣に一度入ると出られない、と言うことだと思います。

 出るには筋力以外で動く手段が必要で、出ても大ダメージを負う。

 そんな感じの魔法陣なんじゃないでしょうか」


「ふむ」

 お姉さんは少し考え込んだ後、ニヤリと笑った。


「幸運だったな、私は魔法陣の専門家なんだ」


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