11話 教会に行ってみる
戦神スタリオンを信仰するスタッツは大きな街なので、教会が複数存在する。
聞き込みで言われていた「すごいスキルを持った人」は最大の教会にいるらしいが、そこは後回しだ。
大きな教会は人通りが多く、紛れ込みやすい一方で、誰に見られているかわからない。
まだ完全な知識を得られていない現状、見られる回数は減らしたいのだ。
中規模と言える教会の近くの路地にユニオを生成し、教会の前の掃除をしているシスターに声をかける。
「こんにちは、シスター」
「こんにちは」
にこやかに挨拶を返してくれた。まだミスはしていないのだろう。
会話を続ける。
「お祈りがしたいのですが、中に入ってもよろしいですか?」
「......ええ」
早速ミスだろうか?
反応が悪かった。
「何か?」
「いえ......あなたのような方は大抵大聖堂の方に向かうものですから、珍しくて、つい」
なるほど。
シスターの視線を鑑みるに、服装とかがこの辺にくるにしては高級だったのかもしれない。
舐められないようにある程度ちゃんとした服を選んだつもりが、この世界基準では良い服判定になってしまったのか。
「気を悪くされたなら申し訳ございません」
「ああ、いえ。お気になさらず」
というかユニオの造形も悪いのかもしれない。
もっと子供の姿の方が相手の警戒を解けるか?
髪色も茶髪にした方がいいかも。
この辺には金髪碧眼が妙に少ないのだ。
次は変えよう。
教会の中には、神父っぽい人が10人ほどの子供を相手に説教をしていた。
怒る方の説教ではなく、教えを説く方の説教だ。
雰囲気的には授業みたいな感じだが、なんなんだろうか。
もう終わりそうだが、俺も教会の後ろの方の椅子で聞いてみる。
「......こうして戦神スタリオンは300年前の第2次人神大戦を終わりに導き、戦の聖女と共に戦国スタリオンを起こしたのです。なぜ最初の首都であるここ、スタッツから遷都したのかについては明日にしましょうか」
聖女、戦神、人神大戦。
興味を惹かれるが、俺の問題には直接影響しない気がする。
動けるようになってから考えるべき問題だろう。
強いて言うなら、この世界における「神」という言葉の意味を理解したいところだ。
唯一神的なのか、多神教的なのかは言うに及ばず、「神」が存在するかしないかも問題だ。
太古の英雄を讃えて「神」と呼んでいるならいいが、実際に神のごとき存在がその辺をうろいついている可能性があるなら、この世界の難易度はかなり高くなる気がする。
だがなぁ、聞いていいのだろうか。
人の良さそうな神父さんだが「神を疑うとは何事だ!」といきなり怒り出したら怖いんだが。
......それとなく聞いてみようか。
信者たちが神父さんに挨拶を済ませ、教会から出ていくのを見送ってから、神父さんに近づく。
すると向こうから声をかけられた。
「初めてみる顔ですな」
おじいさん神父は眼鏡の奥の目をニコニコと細め、うんうんと頷いた。
「感心なことですな。スタッツに来ながら礼拝の1つもしない旅人も多いなか、よく来なさった」
ん?
「なぜ旅人だと?」
「あなたは土神へリアルの信徒でしょう?」
知らない神様だな。
疑問が顔に出ていたのか、神父は続けて聞いてくる。
「敷居を跨いでいらっしゃったので。
あれはここからはるか東方、土神へリアルの座す国の文化ではありませんか?」
無意識の行動を見られていたのか。
この教会に日本家屋のようないわゆる敷居はないのだが、なんとなく出入りの時に扉の部分を避けていたのだろう。
土神など知らないが、世間知らずをカバーする背景には便利なので使わせてもらおう。
「ええ、よくお分かりで。私は東方の出身です」
「やはりそうでしたか。
よその神にも敬意を払っていただけるのはありがたい限りです」
うまく誤魔化せたようだ。
「ところで、先ほどの歴史の講義はいつもやっておられるのですか?」
「ええ、毎日午前中にこの辺りの子供たちに勉強を教えているのです」
色々聞き出したところ、この街ではある程度の教育が教会を通して無償で行われているらしい。
意外とこの世界の教育水準は高いのだろうか........。
そうだ。俺も教育を受けられないだろうか。
神父さんいい人そうだし。
「私はユニオと言います。
しがない旅人で、学がありません。
私にも神父様のお話を聞かせてはもらえないでしょうか」
「子供たちと一緒でよければ構いませんよ。
毎日8時から10時までやっています。
好きな日に来てください」




