83: 地は渇き、熱は昇り、雲は薄くなりて、太陽は遠ざかりて、
こんな安全圏で私は何をしているんだろう。
みんなと、穏やかな日常をやり直すために戻ってきたはず。
皆からの攻撃を耐えて、合流できたと思った。
でも、許されなかった。
私と皆の平穏は同時に成立しないって。
不意に、力がみなぎってきた気がする。
何で?
・・・
分からない。
・・・
ああ、そっか、もう、戦うしか選択できないんだ。
戦いは終わってない。
だから、戦う。
単純だ。
理由なんて無い。
理由じゃない。
「ごめん、楓、私、降りるね」
返事も聞かないまま、いや、返事を待つ気はない、その程度の間すらおかないくらい、すぐに、下向きに加速度をつける。
そう、終わってないんだ。
結末を作れ、って言われてる。
殲滅するか、殺されるかしろって。
あっという間に地上に戻る。
皆、戦ってる。
でも乱雑じゃない。
統制のない塊が、点を虐めてる。
ここからじゃ、分からない。
でも分かることもある。
戦い以外の音がしない。
見知った攻撃の音。
水の魔法の、濁流のような恐怖を圧す音。
雷の魔法の、エネルギーが発散したような残響音。
鉱石の異能の、鳥肌を誘うような歯の根が浮くような擦過音 。
意志があるようなスライムの、重い流体が落ちる音。
不思議な動物たちの爪や牙が砕けるような、重い音。
多数の火器、銃器、重機の機械的な爆発音。
これらだけが、空間を飛び交う。
叫び声も、泣き声も、掛け声も、うめき声も、断末魔も、気合を入れる声も、踏ん張る声も。
当然、私の中の声も。
聞こえない。
降り立って数十秒。
1人が私に気づいて振り返る。
え、、、
なんで、そんなに、苦しそうなの・・・?
・・・
いや、言うまでもない。
訳も分からず、仲間を攻撃して、苦しくない訳がない。
少しずつ、私に気づく。
声も出さずに泣いているメンバー。
青ざめているメンバー。
わけが分からなそうに真っ白になっているメンバー。
恨むように赤いメンバー。
気力をなくして黒くなっているメンバー。
もう、魔法使いの子達は、魔法を使っているのか使わされているのか分かっていなさそう、そんな表情が浮かんでいる。
かくいう私も、降りてきたのが自分の意志なのか、はっきりとしていない。
身体のコントロールも、権利が剥奪されている、そんな感覚。
数俊の後。
多数の魔素の魔法化反応と、多数の武器を構える音が立つ。
みんな、一気に攻めてくる。
防御を展開する。
得意の対人デバフを活かす時間。
殲滅という文字と、保護という文字が頭に浮かんだ気がする。
もう、この際。
意識を直接絶ってあげたほうがいい。
私は、何でも再生できる女。
逆だって容易い。
目を閉じ、イメージする。
脳幹に生体電流より少し強いくらいの電気が流れることを。
静電気はダメ。
即死する可能性すらある。
そこまでしなくていい。
いやそこまでしてはいけない。
すこしでも、平穏に戻りやすいルートを残しておきたい。
結末が決まれば、この理不尽は納得してくれる。
そうであって欲しい。
触覚じゃ認識すらできなくていいレベルの電気。
ほんの少し。
チョビ。
パチッと。
ダダダッ
と皆が倒れる。
私に気づいていなかった皆も気づく。
もう再開した。
私と皆の戦い。
繰り返す。
パチッ
ダダダ
戦いを辞めたいと思うのを辞める。
パチッ
ダダダ
魔法が、もはや自動で出ているのでは、と疑うのを止める。
パチッ
ダダダ
思考が、自分の意志が無いのではないかと、不安に思うことを諦める。
パチッ
ダダダ
一刻も早く、結末を作って。
理不尽を倒してやる。
そんな気持ちで。
···
?
まわりから、戦闘音すら消える。
目を開く。
···え?
ドラゴン?
精霊?
海の化身?
ロボット?
キメラ?
なにが起きてるの?
ここは現実。
ここはファンタジーでもSFでもない。
手首の皮を抓ろうとして、手首を見る。
···は?
これが、私の腕?
いやいや、こんな黒いわけ・・・
え···?
わたし、服着てなかったっけ、そんなはずない
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!?
っ・・・
頭、痛い・・・
ん、げ、幻視・・・?
いない、さっきのは本当に幻視?
ドラゴンが映っていた辺りに急速飛行する。
咲だ。
咲が攻撃されてる。
数人が私に気づく。
でも気にせず、今度はロボットが映っていた少し上空に飛び上がる。
多分、海璃和だ。
グリフォンの下腹部が見えた気がする。
精霊みたいな姿は高かった・・・、多分、楓だ。
海の化身、いや、分からないけど、咄嗟に見たものを伝えるとしたら、海の化身だった、その存在が映ったところにも行こうとする。
でも、今は。
付いてきている子達を、地上で眠らせないと。
空中じゃ危ない。
私がスタッと降りる。
皆がドタッと落ちる。
パチッ
ダダダ
また別方向から来る。
パチッ
ダダダ
このテンポ、このペースで、統率の無い塊から、この規模で来るんじゃ、さっきいじめられてた皆以外、すぐに倒れる。
もう、顔もしっかり見てない。
いや見たくない。
たぶん、クラスメイトの意識もぶっ飛ばしてる。
研究室の先輩たちだって居たかもしれない。
先生が混ざってたかもしれない。
分からない。
でも、こんな状況の顔なんて見たくない。
見たいのは、いつもの笑顔。
弾きたいのは、見えない糸。
怒りが、力に変わっている。
だめだ、飲まれちゃいけない。
冷静に。
パチッ
ダダダ
でも、もう。
パチッ
ダダダ
” ∫ ^ ”




