84: 帰りゆくは、地平の底。
” ∫ ^ ”
まただ、何か分からないことが起きた。
音の様で音でないなにか。
わからないけど、分かる。
分からないということが分かる。
でもさっきとは明確に違う。
暖かい。
さっきの音らしきものには深く冷たい感覚があった。
状況は変わらない。
いや、変わりはした。
もう、ほとんどのメンバーを気絶させた。
近くに残るは咲や海璃和、天童さん、巫禾々ちゃんとお供の魔獣を含めた2Aの一部の面々。
竜は見えない。
倉庫でみんなを以津真天の力で気絶から復帰させたときには寝ていたのをみているけど、そのあとは分からない。
研究室らしき方面と倉庫方面からはほとんど人の気配がない。
竜も含め、もう、あたりの魔法使い・異能者じゃない皆は倒れているんだろう。
そして、残っている魔法使い・異能者の皆が正常な意識で戦っているかは分からない。
緊迫した空気が辺り一帯を包む。
私たちは点在している。
特別誰かが動き出す気配もない。
お互い見合っているわけではない。
”※ - ♡ } 〓”
!?
また、幻視!?
さっき見た姿と全く同じ姿が再度映る。
はっきりと。
ドラゴンや精霊が。
いやなほどリアルな質感で。
幻視じゃない。
だとすると、私の腕は、
・・・
黒い。
私がまるで、いや、私は悪魔、だ。
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っ
私たちは遊ばれてる。
間違いなく。
なにか分からない上位の存在に。
!!!
咲が来る。
皆も動き出して、また、戦いが始まる。
コロシアムに放り投げられて、生にすがる剣闘士のように。
でも。
魔法の発動は愚か、魔法を構築しようとする意思すら、身体でさえ、なにもかもが受付されなくなる。
それでも動く身体。
それでも発動される魔法。
思考と現実の間に身体以外の壁が生まれる。
この空間を制御するための参加権は失われたように思う。
聞こえはする、周囲の戦闘音。
映りはする、戦闘者の視界。
捉えることはできる、みんなの動き。
でも、もう分からない。
自分すら。
裏人格とかそんなちっぽけな話じゃない。
もう、私の腕が黒かったかどうかなんてどうでもいい。
残っているみんなにも、現状を理解したことによる絶望と寂寥、やるせなさが傍目からわかるほどに浮かんでいて。
もう私たちは支配された。
あと少しだけ、ほんの少しでいいから、一言でいいから誰かの声を聴きたい。
目指せるはずだった幸せの断片を一掬いでいいから味わいたい。
触れられそうだった掌が遠ざかっていく。
激しい金音と爆音だけが空間に満ちる。
せめて今、私の楯と軋み音を鳴らしている咲と一言交わしたい。
出会ってくれたことへの感謝。
これからも一緒に居たいという望み。
自分の中の大きな希望的感情を精いっぱい集めて。
「 」
言えたかは分からない。
でも、なにかを言えたか、そして言えた言葉が正解であるかのように、ほんの少し、空間が停止したように見えた。
私と咲、それ以外のみんなを含めて。
そして、はっきりと聞こえる「一緒」という咲の一言。
ドラゴンの鱗のようなものが身体から生えているように見える、いや、もはやドラゴンな咲から、柔らかいしかし、涙の浮かぶ微かな笑顔が見える。
今すぐ抱きしめたいという感情が湧き上がると同時に。
これを皮切りにまた動き出す。
でもはっきりと、視えるわけじゃない。
今思うことは、「絶対に幸せになってやる」、ただそれだけ。
多分、巻き戻ってる。
接近していたはずの私と咲の距離が、物理的以上に離れる感覚。
一度も感じたことのない浮遊感。
なぜ巻き戻るかなんて分かるわけない。
ただの直感。
幸せになりたいだけ。
例えまた悪魔になったとしても。
なんでもない日常を、過ごしたいだけなんです。
だから、もうこれ以上、
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