【第二章 第六話 銀の鍵】
【シェルピェン・ザウェク視点】
私はホテルで不審者を捕まえた。
鎖で椅子にぐるぐる巻きにした東洋の謎の男。彼は突如として現れた《鉄の扉》から飛び出し、私の母国語を使いずいぶんと早口で名乗った。
「はじめまして小野優明ですシェルピェン・ザウェク様でお間違いありませんでしょうか?!」
私はすぐに小銃の底で腹を殴り、頭を殴り、椅子に縛り付けてあげました。
私は部屋に現れた《鉄の扉》を見た。コンコン、と叩きながら尋問開始。男に小銃を向け情報を聞き出していく。
「では小野優明、まずはご自身が持つ情報を全て吐き出してください。私が嘘だと感じた場合、足の指を小指から撃ちます」
男は「さすが軍人……」と笑顔で顔を歪め、つらつらと私の母国語で話していく。
「俺は東の大日本帝国から来ました。記録上では死んでる能力者で、能力階級は『九』幻獣種です」
亡命か。飛行型の幻獣種であるなら亡命は容易いでしょう。戦火に紛れて逃げ出した能力者が集まる集落もある、なんて話を聞いたことがあります。
「言葉わかるでしょう? それはね、この世界の神様が造った道具のおかげ。そこの扉は空間移動装置、神様がお造りになったもの」
私は《鉄の扉》を見た。突然現れた扉は確かに瞬間移動としか思えなかった、だってここホテルの一室ですよ? 起きていた私にバレずに扉を運ぶ方法なんてありません。それに、東洋の人間がわざわざ地図から消え去った国の言葉を覚える必要がない、同盟国の言語ならまぁわかりますが、彼は私の母国語を話している。話す? 表現に違和感があるな、自動で翻訳されているような感じがする。
うん……一旦話を一通り聞かないとかな。神の存在を使い神への冒涜は許しませんが、私はこれらの現象を嘘だと断言できる知能も知識も持っておりません。
私は銃口を胴体に向けたまま問う。
「では、貴方は神の使いだと名乗るのですか」
「そんなまさか! って否定したいところですが、見方によっては事実なんだよねぇ~」
神の道具と彼は言ってましたよね? それを授けられたから否定できない、と。辻褄は合う。
「でもその神様は世界を造った存在じゃないよ。戦争の終わらない世界を造った、例えるなら邪神だね」
この世界は神によって造られたと、貴方は断言なさるのですね。
私は聞いた。
「貴方の目的は?」
「戦争の終わらない世界を終わらせること」
「私のもとへ来た理由は?」
「戦争の終わらない世界を終わらせるため」
私は銃口を下ろす。
「では……世界を終わらせるために私と接触したと」
「はい!」
「私に何をお求めになるのですか、神の使いよ」
「幸福になってほしい」
小野優明は全てを語る。私とヴェークテルンしか知りえないことまで語る。
「シェルピェン・ザウェクさん、貴女は一度死んでいる。上官の手によって心臓を抜き取られ、このホテルで無事に復活」
え。ぁ、え?
私は声を震わせ感情を露にしてしまう。
「え、な、なんでどうして、貴方はどうしてそのことを知っているの……?」
「その上官は反乱を起こす決意を固めました。戦争を終わらせるには腐った国家を内側から壊すしかありませんからね」
「なんで」
「俺は貴女の協力者になりたい」
彼はオレンジ色の目を私へ真っ直ぐ向けていた。
「俺はシェルピェン・ザウェク様に神の道具をお届けに参りました。貴方にお渡ししたいので、どうか、この鉄のワイヤーを外してください」
私は……すぐに鉄のワイヤーをほどき、小銃をベッドへ投げ飛ばす。ぼすっ、と乾いた音がした。
彼は何もない空間から落ちてきた《銀の鍵》を手のひらで掴み、私へ差し出す。
「この《鍵》が空間移動装置の本体。祈れば姿を現し、祈れば扉を出し、祈ればアメリカの領土にも一秒で行けます」
私は《銀の鍵》を受け取った。アンティークな綺麗な鍵、持ち手には『↓(下矢印)』のマークが刻まれていて、一見するとどこかで売っていそうな金属の鍵だ。
でも私にはわかる。この《鍵の鍵》には能力者が能力を使うときに空気に混ざるあの気配が、この鍵には濃縮されて閉じ込められていると。これはきっと私しかわからないのだろうけど、能力者の力は生命力そのものだと思っている。能力は使いすぎたら疲れ果て、限界を超えようとすると意識を飛ばす。その力の源がなぜだか鍵から感じた。
小野優明は、椅子に腰掛けながら手のひらで扉を示す。
「鍵を持ったまま祈ってください、何処へ行きたいですか? ただし気を付けて。扉の向こうに誰かがいることもある」
考えた。私は何処へ行きたい? 誰に会いたい? 誰となら安全に会える?
「……ヴェークテルン・シュミートの執務室」
「その部屋のどこに扉を出したい? もしくは扉と扉を繋げます?」
「扉を繋げたいです」
小野優明は立ち上がる。
「扉を消したい時も祈ればいいし、鍵も祈れば姿を消します。扉を出したいときは鍵を宙にかざすのが合図なので」
彼は念力でバルコニーの扉を開け蝙蝠の翼を開く。
「それじゃあ楽しんで」
しまっ。
急いで鉄のワイヤーを浮かしたけれど、彼はタタンと床を叩くように走り空へ飛び立った。
なんですか今のは、蝙蝠の翼? まさか私が対面したのは私を破滅へ導く悪魔ですか?
私は《銀の鍵》を見た。変すぎる不審者に与えられてしまった謎の鍵。試しに『消えろ』と祈れば鍵は姿を消し、私の手のひらから質量も消え去る謎の鍵。もう一度、今度は『現れろ』と祈れば空中からポッと現れ床に転がった。
からん、と床から響く金属の音。
私は能力で鍵を拾い上げ《鉄の扉》を見た。
嘘か、真か、それとも誰かの策略か、もしくは本当に私の協力者か。
なんにせよ、私はこの扉を開けて確かめなくてはならない。もしもこの《銀の鍵》が空間移動装置であるならば、私はいつでもどこへでも行けるのだから。
そう、私はもしかしたら、本当の自由を手にしたのかもしれない。
私はドアノブへ手を伸ばす。ひんやりと冷たい《鉄の扉》は、私が触れた瞬間姿を変え《空模様の扉》へ変化する。冷たい鉄から木製に変わり、ドアノブだって金色に染まった。まるで魔法のような光景に胸が膨らむ。
そのまま、ゆっくりと、キィと音を鳴らして、私は扉を押し開く。
ヴェークテルン・シュミートと目が合った。
偶然居合わせたペネロペちゃんと目が合った。
そこは紛れもなく、特務機関の執務室だった。
「ペネロペちゃんッッ!!」
「シェル?!」
私はペネロペちゃんの胸に飛び込んで、ぎゅうぎゅうにハグをし合った。ああペネロペちゃんの匂いがする、ペネロペちゃんの体温がある、ペネロペちゃんの腕が私を包んでくれている。
そんな私達の横で、ヴェークテルンは珍しく困惑しきっていてついつい笑ってしまう。
「は? ……は? は?」
「んはは! んふっんははッ!」
「シェル! シェルピェン! なんでどうしてどういうことなにこれは、えぇ?!」
んふふ、んふふ。私にもよくわからないので笑うしかなかった。
◇
私はヴェークテルンの執務室にあるソファに腰掛け、何があったのかを正直にお伝えした。あえてあの男が悪魔のような姿になったことは隠して。
正面に座るヴェークテルンは一言。
「何を言っているのかなにもわからない」
私はペネロペちゃんからぎゅうぎゅうに抱きしめられながら、もう一度最初からお伝えする。
「ホテルに居たら謎の扉が出現して」
「その時点で意味がわからない」
「本当なんです! 出てきた謎の男からこの《鍵》を渡されたんです!」
私は《銀の鍵》を見せつけてから祈り、かざし、ソファの横に《空模様の扉》を出してあげた。
ビクッ、とペネロペちゃんの体が揺れ尻尾が跳ねた。
「アルプス山脈の、のどかな山岳地帯を想像しました。説明通りであればこれで行けます」
私は立ち上がり《空模様の扉》の前に立つ。金のドアノブを掴んで開けば。
──そこにはスイスのアルプス山脈が広がっていた。
晴れた空、手を伸ばせば届きそうな距離にある雲、揺れる草原に奥には雪化粧を被った鋭い山脈。
ヴェークテルンはガタッと立ち上がる。
「は?! は?!」
ペネロペちゃんは口を開き、私と扉と鍵を何度も見比べていた。
ヴェークテルンはスタスタと軍靴をならして扉へ。私もついていき扉を潜ると、心地よい夏の山風が肌を撫で銀の髪を揺らす。
土から感じる草の感触、風の香り、暖かな太陽の日差し。私の目にはそんな美しい景色のなかで、ヴェークテルンは整えきった黒軍服を着て私に大きな背中を見せていた。まるで絵画のような景色に、つい、頬をあげてしまう。それが例え得体の知れない東洋の男からの贈り物だったとしても、この景色は、感動は、本物だ。
ヴェークテルンは振り向く。太陽の光を浴びた金色の髪と、金色の目が透き通っていた。
「今すぐ元首を暗殺するか」
しかしこの発言である。
いやっ、ええ、はい。ヴェークテルン・シュミートらしい言葉ですね。非常に合理的ですね。この《銀の鍵》による空間移動があればいくらでも暗殺なんて可能です。
だから隣のペネロペちゃん、そんなみるからに『うっわこの男ほんっとにマジで最悪』なんて顔しないで。心のなかでなに言ってるか顔を見ただけでわかりますよ?
ヴェークテルンは私のもとへ戻り、まるで犬のような笑顔で手を差し出す。
「シェルピェン・ザウェク! その《鍵》を俺に預けてくれ!」
「はい!」
鍵を渡そうと差し出したその時。
──バチッ!!
青い電撃がヴェークテルンの手を弾く。彼は手をすぐに胸へ引っ込め、眉間に深いシワを寄せた。
「痛い……? 俺が?」
電気の能力者が、電気で痛みを生じた?
もちろん炎の能力者は炎への耐性があります。けれど、他人が生み出した炎の能力には傷を負います。つまり今の電撃は能力と同じ力が走っていた。
ペネロペちゃんも恐る恐る「私も」と手を差し出してくれる。私はゆっくりと鍵を近づけると。
──バチッ!
「ひんっ」
ペネロペちゃんもすぐに手を引っ込めた。
「静電気はしったみたいな嫌な感じした!」
「あぁアレ嫌ですよね痛いですよね」
「嫌な感じ!」
私はヴェークテルンを見上げる。彼は片手で口を覆い隠し《鍵》と私を交互に見ていた。
彼は思考をそのまま口にしていく。
「神が造りし道具、か……明らかにシステムも構造も我々の科学力を超えすぎている。真実かもな、その男の話は」
ペネロペちゃんも頷くとヴェークテルンも理論を続けていた。
「空間移動装置、なんてものが仮に人間の手で作れるのなら、作れたのなら、戦争なんてする必要ないわ。欲しい資源を自由に運べるもの」
「それだけじゃないぞペネロペ・コスタ。文字通り世界を牛耳る革新的技術だ、経済の全てを握れる」
頭い~い!
やはり二人は将校時代から優秀な成績を納め続けたのでしょう。道具一つで背景にある物事全てを見通せるのだから。私ではそんな発想すらありませんでしたよ、ただ『皆に会える!』とバカみたいに無邪気に思いました。はずかしッ。
ヴェークテルンは振り出しに戻った。
「よし、暗殺するか」
「バカなの?」
こんな素敵なスイスの空の下で、ペネロペちゃんとヴェークテルンは議論開始。
「元首とその親衛隊を全員殺せば全部解決すると思ってる? 無理! 不可能!」
「軍の指揮権を全て中将殿に渡す」
「ドイツは血統重視の差別主義に染まりきっている、それが間違いのはじまり。なのに突然全員死んだところで新たな悪魔が誕生するだけよ」
「では腐りきった豚どもを野放しにして末端の兵士を減らし続けるか? ほとんどは他国から寄せ集めだ、肉壁となって死ぬ兵士を見放せと?」
「寄せ集めの私達こそが反乱を起こさなきゃいけない。神の道具に頼った勝利に意味はあるの?」
頭脳明晰な二人の議論は価値観の衝突となっていく。やはり二人の思想的相性は最悪のようで、たまにこうして言い争うことがあった。
私はそんな二人の言い争いが何故だか好きだった。お互いに決して譲らない頑固すぎる精神と、二人の心の奥底にある『優しさ』とか『愛』をひしひしと感じるから。ただ、出力の形が違いすぎて、どうも噛み合わない。
私は挙手。
「シュミート中佐殿! 案があります」
「どうぞ」
「多数決を行いませんか? 神の道具を使いあらゆる問題を解決するか、神の道具には頼らず我々の手と信頼だけで勝つか、多数決で決めましょう」
私はペネロペちゃんを見た。
「合理的に早期解決を目指すか、それとも人間として泥臭く立ち向かうか。どちらを選んでも正解も不正解も存在しないでしょう」
私は、二人を見た。
「この《鍵》は私しか使えません。私は、この鍵を使って皆の故郷に行ってみたい。皆でイタリアの海とか行ってみたい。アメリカの領土に行っちゃうのも、ふふ、アリかもしれませんね。そういうのだけに使いたい」
二人はお互い目を合わせてから、先にヴェークテルンが言った。
「わかった。持ち主の意向を一番尊重するべきだったな」
ペネロペも頷く。
「ごめんなさい。シェルしか使えないのだからシェルのモノなのに、勝手に共有物として考えてしまった」
決まりだ。皆に話して、皆の意見を聞こう。
私達は百二十一人いる。どうやっても多数決ですれば割れるんだ。
すぐに会議を始めた。数人集めて広めてもらって、なんて面倒すぎるので、いっそのこと十分以内に全員で執務室へ押し掛けスイスに移動、五分で現状を解説し多数決を取り、五分以内に施設内の各地点へ扉を繋げることにした。計二十分の作戦会議、我々軍人であれば可能です。
先にペネロペは執務室に戻った。きっと『十分以内に緊急極秘集会所を執り行う、場所は執務室、全員集まれ。質問は一切許可しない。遅れたもの者は置いていく。動け!』と誰かに指示を出したことでしょう。
予想通り、十分以内に続々と人が集まっては全員が似たような反応をした。なんせ扉を潜った先はスイスのアルプスです。
「は?! 山?!」
「アルプス?!」
「は?! は?!」
そうです。ここはスイスの山奥です。皆混乱しすぎて好き勝手話してますね
十分経った。私が扉を消し去ると、ヴェークテルンは拳銃を空へ向け一発。
──バンッ!!
ここはスイスの山奥、銃声が響いても誰にもバレません。
そんな美しい景色の中、集まったのは黒軍服の百二十一人全員。
「五分以内に解説する、決断しろ。これは『空間移動』魔法でも幻覚でもない、物理的な移動だ。解説は以上」
驚きが強いですが、現状を言葉にするとそれだけですよね。
「これより多数決を取る。この力を用いて今夜のうちに元首の寝室へ侵入し暗殺を完了させるか。あるいは、この力には頼らず、我々自身の計画通りに泥臭く勝ち取るか。……ちなみに、所有者であるシェルピェン・ザウェクは」
一部の方が騒いだ。彼らはいつもいつもヴェークテルンに注意されている若い兵士だ。
「エッ生きてる?!」
「本当に生きてる?!」
ヴェークテルンは空砲を一発。
「所有者は! あの扉を皆で海へ遊びに行くための休暇用、もしくは故郷訪問のために使いたいとほざいている!」
皆の視線が私に集う。
そんな中、ヴェークテルンは続けた。
「彼女のバカげた案に賛同し、神の奇跡による力に頼らず自分達の手で戦争を終わらせたい者は、挙手」
空白の時間が生まれた。一、二、三秒。
私は手をあげる。自分達の手で戦争を終わらせたいから、神の力に頼るのはなんだかモヤモヤするから。
すると、一人、二人、十人二十人、数えきれない手が上がった。
「残り三秒! 二、一!」
全員、挙手。
満場一致の挙手を見た彼は、深くため息をつきながら即座に解散命令を出す。
「……多数決は終わった。お前たちのバカさ加減には頭が痛くなる。では各員、速やかに元の区画へ帰還しろ。この扉とスイスの空気は今すぐお前たちの脳内から完全に消去しろ。寝言でアルプスと口走った者は即座に銃殺する。撤収!」
私は《銀の鍵》をかざし扉を出す。ヴェークテルンが指定した部屋に繋げ、私はどうぞお帰りくださいと開けて見せた。
そこは誰も居ない食堂の倉庫。
「行け! 入れ! 十人ずつ行け!」
私はチラッとヨハネと目が合った。両手で全力で振っていると彼は歩いて私の元へ来て、あと三歩のところで。
突然走りだし、私は抱きしめられ、彼は三秒も経たず隣の扉へと姿を消した。
「……ェ」
隣のペネロペちゃんがニヤニヤと私を見下ろす。なんですか? まぁ言いたいことはわかりますが。
「ねぇ、付き合ってあげてもいいんじゃない?」
「ダメです」
ダメですそれだけは。
「普通の家庭を築いてほしいので、ダメです」
だから、ダメなんです。子を産めない私は誰とも付き合ってはなりません。ヨハネのこれまでの言動を考えると『ずっと二人きりでもいい』なんて言いそうですが私は怖がりなんです。ヨハネは歳を重ねてシワが増えていくのに私だけは死ぬまで少女の姿のまま。もしかしたら私は不老不死かもしれません。その場合は、わたし、わたしは。
……それならいっそ、寿命で愛した人を喪うぐらいなら最初から要りません。
私は扉を一度閉ざし、次の区間へ繋げる。
わずか十七分で会議が終わった。これで私達は泥沼の戦いを自ら選び、全員納得し、神の力を使わないと覚悟を決めた。
まだスイスにいる私、ペネロペ、ヴェークテルン。
ペネロペが聞いてくれた。
「それで、シェル、貴女はまずどこに行きたい?」
「アメリカ、ニューヨークのタイムズスクエア」
ペネロペは「最っ高だねッ!」ときゃらきゃら笑ってくれた。
ヴェークテルンは「お前正気か??」と。
「正気です! パスポート無しで敵国に行けるなんて普通ありえませんよ、まさに神の奇跡です!」
「いや、敵国だぞ? FBIに見つかったらどうする? 行っても金が無いぞ?」
「鍵開けの天才である私が金庫に忍び込みます!」
二人は同時に口にする。
「普通に重罪」
「普通に重罪」
「え~いい案だと思ったのに」
私達これからもっとヤバい犯罪、クーデターやるのにな。
ヴェークテルンは渋々といった様子で、けれどどこか楽しそうな声で言ってくれた。
「じゃあわかった、代案を出す。お前の血清で得たドルを全て奪い取ろう、あいつらが万が一の逃走資金として溜め込んでいる隠し金庫のドルを全額頂く」
ペネロペはパチン! と指を鳴らす。
私とペネロペは同時に言った。
「賛成」
「賛成」
私の血を売って稼いだお金ですよね? じゃあ実質私のお財布です。ありがとうございます、このために金庫に保管しておいてくれたんですね。




