29.勇者の元仲間達
リリアン、ダン、ブルーノのその後です。1話で終わります。
「…居ねぇな、アスラン。」
アスランとの話し合いが終わり、アリー達に別れを告げたリリアン、ダン、ブルーノの3人は宿に戻って来た。
アスランの分の荷物はなくなっていた…。
「……。」
結局、リリアンだけでなくてダンとブルーノもアスランから完全に離れる事を決めた。アリーを見つけたと伝えてもお礼の言葉をかけられなかった事に思う事があったし、アリーに対して反省をしていると言いつつも自分の要求を押し通そうとする姿、バロウを非難して一番の悪者にしようとする姿を見て、もうこれは無理だと思ってしまった。
『そ、それによりによって…俺が今こんなに傷付いている時に、何で今、そんな事を言うんだよっ!? アリーの事が解決もしてないんだぞ?!』
…それでも、リリアンがアスランに別れを告げた時に自分を手放したくないと言わんばかりに縋ってくる姿を見て、一瞬リリアンは迷ってしまった。
結局、自分の都合しか考えていないと思われるアスランの言葉で、リリアンの心は完全に冷え切ってしまったけれど…。
「あ…。」
リリアンはアスランの言葉を脳内で再生させた後、その後のブルーノの告白を思い出して思わず声を出してしまった。
忘れていた訳では無いが、その後も色々とあってそれどころでは無かった。
「あの…ブルーノ。」
リリアンが何処か居心地が悪そうにブルーノに声をかけると、ブルーノもリリアンの心情を察しているかのように苦笑いをしてきた。
「すみませんでした、リリアン。困らせてしまってますよね。あの時、アスランの態度がどうしても赦せなかった。あの場で、他の人達もいる中で君に告白してしまえば君を困らせる事になると分かっていたのに…。」
「そ、それは別に…。」
ブルーノがリリアンを庇ってくれた事は分かっている。だから全く怒りなんてない。寧ろ…
「…その、嬉しかった。」
アスランの態度と言葉に傷付けられ、冷えていった心はブルーノの言葉で救われたように思えたのは事実だった。
「私…今までブルーノの想いに全く気が付かないで、アスランと付き合ってた…。」
アリーの事ばかり考えていたアスランに嫉妬していたからこそ、リリアンはブルーノの立場の苦しさを想像出来てしまい、胸が締め付けられた。もしブルーノの気持ちを知っていたとしても、何かを変えられた訳では無いのだろうが、ブルーノに対して申し訳無いという気持ちが湧いてくる。
だからと言って謝罪の言葉を口にするのは違う気もして、リリアンは言葉を詰まらせてしまった。
「…僕が勝手に君を好きになってしまっただけです。それに関してはリリアンも、アスランも何も悪くありませんよ。」
ブルーノは何も気にしていない様子だが、本心がどうであるかは分からない。ただ、話し合いの場で言っていた通り、アスランとリリアンが仲良く過ごせていたなら、それで良かったのだろうとは思う…。
「あの…ブルーノ。」
リリアンにとってブルーノのは大切な仲間だし、リリアンを庇ってアスランに怒ってくれた言葉も嬉しかった。でも、ブルーノを恋愛対象として好きかと言われると頷く事は出来なかった。
「分かってますよ、リリアン。でも、気持ちを伝えてしまった以上、僕にもチャンスがあると思って良いですか?」
「なっ、…!」
腹を括ったかのように言うブルーノに、リリアンは頬を赤らめた。
「…おーい、お前等俺の事忘れてねぇか?」
呆れたようなダンの声に、リリアンとブルーノは身体をビクッとさせて反応した。
「やれやれだぜ…まぁ、俺はお前等が付き合うなら素直に祝福するし、他の誰かと結ばれても結ばれなくてもどっちでも良い。けどよ、時々は顔を見せてくれよな。」
ダンの言葉に、リリアンとブルーノは目を見開いた。
アリーを探す旅が終わった今、3人はもう一緒に居る必要はない。少なくとも、ダンはこのまま故郷に帰るつもりなのだろう。
「…僕も、一度故郷に帰る事にしますかね。」
「…そうね、私もそうしようかしら。」
ダンの考えに同意するようにブルーノとリリアンも頷いた。
家族や友人、リリアン達にもそれぞれ自分の事を心配してくれる存在が居る。レコのようにたった1人で待っている存在は居ないが、ずっと心配させ続けるのは良くないし、リリアン達も会いたかった。
「まず大丈夫だとは思いますが、明日はこの街に留まってアスランがアリーさんに何もしないか確認したら、各々解散しましょうか。」
「そうだな。」
ブルーノの言葉にリリアンとダンは同意した。アスランの項垂れた様子を見る限りでは、すでに村に向かっているとは思うが確証はない。
「さて、アンジェリカ王女は動くでしょうかね?」
「…。」
ブルーノの言葉に、ダンとリリアンは沈黙した。アンジェリカの異様な雰囲気は全員が感じていた。リリアンと別れた事で、アンジェリカはきっとアスランに求婚する筈だ。
アスランとリリアンが別れたかどうかなんてこの場に居なければ分からないだろうが、アンジェリカならばすぐに情報を得てしまうような…そんな感じがした。
「こればっかりは、王女次第だよな…。」
ダンの言葉は、言葉通り王女次第でどうなるか分からないという疑問と同時に、想像通りの展開になった時のアスランを気の毒に思うような響きが含まれていた。
「…少なくとも、もう私達には関係ないわ。」
もしアスランがアリーやバロウに絡んできたり、リリアン達の元に来て意に沿わぬ事を言ってくるようならば、それなりの対応をするつもりだ。でもアスランがリリアン達の関係ない場所でどう過ごすかは自由であり、関与するつもりはなかった。
不幸になれとは思わないが、幸せになって欲しいとも思えない。アスランの事を忘れる事は出来ないが、今後の人生に影響を及ぼす存在でもない。これが今のリリアンが抱く、アスランに対する正直な感情だ。
「そうですね…。」
「あぁ…。」
ブルーノとダンもリリアンと似たような感情を持っているのか、何とも言えない顔で頷いた。
ずっと続くと思っていた勇者一行の4人の絆。それは、些細な事で崩れてしまった。どれだけ長い時間共に過ごしても、苦難を乗り越えても、永遠の絆というものは存在しないのかもしれない。
「ねぇ、アリーさんの様子も気になるし、また何処かのタイミングでこの街に集まらない?」
けれど、お互いを尊重する気持ちを忘れない限りはリリアン、ダン、ブルーノの3人の絆は続いていく筈だ。
「良いかもな、それ。」
「そうしましょうか。」
それに、友人とまでは言えずとも勇者に不信感を抱いた者同士の、アリーとの絆をリリアンは感じていた。アリーは望んでいないかもしれないが、アスランと無事に決別する機会を与えてくれたアリーには幸せになって欲しいと思っている。時々この街に来て、アリーの様子を見たいと思った。(バロウは別にいいけれど…)
リリアンの提案に同意してくれる2人を見て、リリアンは笑みを浮かべた。
◆◇◆
その1年後、3人はこの街に集まった。リリアンとブルーノは恋人同士になり、ダンは2人の仲をからかいながらも嬉しそうに笑っていた。
「そう言えばさっきアリーさんを見かけたんだけど、妊娠しているみたいよ。」
「へっ、そうなのか?!」
「ええ、相変わらずバロウと仲が良さそうでしたよ。」
リリアンとブルーノのが遠目から見たアリー達の様子を伝えると、ダンは驚きながらも安心したような様子を見せた。
「おい、勇者様と王女様が結婚する事になったらしいぞ!」
「!?」
新聞を持った男の大きな声が聞こえきて、リリアン達は驚いた。
「…。」
リリアン達はお互いの顔を無言で見つめ合ったが、何も言わずに苦笑いをして、別の話題で盛り上がった…。
リリアン達の話はこの1話で終わりです。ダンは自由気ままに独身のままか、誰かと結婚するかは決めておりません。ブルーノは故郷に帰った後にリリアンに会いに行き、アプローチを重ねた結果付き合う事になりました。リリアン達はアリーとバロウに話しかけず、遠目から見守っていく事にしてますが、何処かのタイミングでアリーに気付かれて交流していく事もあるかもしれません 笑
次はバロウの過去について書こうかなと思っております。
ここまで読んで頂き本当に有難うございました! もし宜しければ最後までお付き合い下さると嬉しいです!




