21.孤立する勇者6
アスラン孤立回の続きです!
ブルーノの告白にその場がシーンと静まり返った。
「ブルーノ…が、私の、事を…?」
リリアンが目を丸くしながらブルーノに聞く。だがブルーノはアスランから目を逸らさない為、リリアンを見る事はなかった。
「…リリアンの想いは初めから知っていました。だから、言うつもりなんてなかったんですよ。」
ブルーノは苦笑いをした。
「僕の想いを伝えてリリアンを困らせたくなかった。それに、僕なんかではアスランには敵わないと思ってすぐに諦めました。それだけアスランは僕にとって、尊敬出来る自慢の仲間であり、素晴らしい勇者だと思っていました。」
「ブルーノ…。」
呆然とアスランはブルーノを見た。リリアンはブルーノの今まで隠してきた想いを知って、気付けなかった事に申し訳なさそうな顔をしている。ダンはブルーノの想いを聞いても驚いておらず、知っていたような顔で静かに聞いている。
「2人が付き合う事になった時、悔しいという思いも当然ありました。でも、何より大切な仲間である君達を祝福しようという気持ちの方が大きかったんです。僕は君達が…リリアンが笑顔でいてくれるなら、それで良かったんですよ。」
「ブルーノ…。」
リリアンは何処か気不味そうな顔でブルーノを見つめる。アスランも今まで知らなかったブルーノの気持ちに驚いて、目を見開いたままだ。
「でもアスラン、君はリリアンを傷付けてばかりでした。」
ブルーノの、アスランを見る目つきが鋭さを増し
た。
「…僕達への態度については、リリアンとダンが話してくれました。だから僕への態度については何も言いません。でも、君がリリアンを蔑ろにした事は絶対に赦せないっ!!」
「っ…!?」
ブルーノの怒鳴り声に、アスランは恐怖したように黙り込んだ。ダンとリリアンも驚いた顔でブルーノを見ている。
ブルーノは、普段は大声を上げるような人ではないのかもしれないとアリーは思いながら、アスランを睨むブルーノを見た。
「君はずっと、リリアンを気に掛けずに下僕扱いして、アリーさんを連れ戻す事しか考えていなかった。その上、見ず知らずの女性には優しい笑顔を浮かべて手を差し出していた。そんな君の言動に、リリアンが何度表情を曇らせてきたのか気が付かなかったのでしょう!? 挙句の果てに、リリアンが別れを告げれば自分が傷付いている状況で言うのは酷いだの、アリーさんとの事が解決していないのに、だなんて…よくもそんな事が言えますよねっ?!」
「っ、そ、それは…。」
ブルーノのからの軽蔑の言葉に、アスランは言葉を詰まらせた。
「…僕もバロウとの出会いはハッキリと覚えています。親と逸れた小さな子供を気にもかけない、泣き声を五月蝿いと平気な顔で言った最低な男だと思っています。その後も嫌味を言ってきて、アスランに襲い掛かってきた…。」
「…。」
ブルーノはそう言いながらバロウを見た。バロウはニヤリともせずに、無言でブルーノを見返した。
「でも、少なくとも恋人…いえ、奥さんであるアリーさんの事は大切にしている。今の僕にはそれだけで、君よりもバロウの方がマシだと思いました。」
「っ…!」
ブルーノにとっては、想い人を傷つけたアスランの事が、何よりも赦せない存在になってしまったのだろうとアリーは思った。
「…アスラン、僕は君が赦せない。だから君の味方は出来ません。」
「そんな…。」
アスランにとっては希望とも言えたダン、リリアン、ブルーノという仲間の存在。その3人から拒絶されてしまったアスランを味方する人は此処に居らず、孤立してしまった。
呆然と立ち尽くすアスランを見て、今のアスランは、自分がどれだけ仲間達を傷付けて酷い事をしたのかを理解するよりも、拒絶された事へのショックで頭が一杯なのかもしれないとアリーは思った。
「これで分かったアスラン? 貴方がバロウよりマシだなんて言えないって事に。殆ど関わりのない大勢の周囲の人達の意見よりも、身近な人達の意見の方が何よりも説得力があると思わない?」
だがアスランがどう思っていてもアリーは気に掛けるつもりが無い為、遠慮なく声を掛けた。
「っ…。」
アスランは何も言えずに、情けない顔でアリーを見返してきた。
「…お前等さ、よく今までアスランと一緒に過ごせれたよな。」
バロウは嫌味ではなく、心の底からの疑問を投げかけるように呟いた。
「「「……。」」」
リリアン達は何とも言えない顔で、けれど自分達も不思議に思っているかのように考え始めた。
この場にいる全員はもう理解していた。アスランは深く関わりがない人には親切で善良な存在だ。しかしアスランにとって身近であり、心を開いた存在には自分と同じ価値観を求めるからなのか、粗末な扱いになってしまう。いや、下僕扱いしてくるのだ。
アスランにとって、幼馴染のアリーは心を開いた相手だったと断言出来る。そして、仲間であるダンとブルーノ、そして同じく仲間であり恋人になったリリアンにも心を開いていた筈だ。
ずっと共に旅をしてきた中で、アスランがリリアン達に一度も横柄な態度を取らなかったのだろうかと、バロウは疑問に思ったのだろう。
「魔王の情報も、今回みたいに中々見つけられなかった事があったよな。気にならなかったけどよ、あまりにも見つけられなくてアスランが苛ついて俺達に文句言った事もあったよな?」
ダンが思い出すように口に出した。
「…でも、あまりにも分からなくて苛ついた事は、僕達にもありましたよね。」
ブルーノの声のトーンはアスランを庇うものではなく、事実をありのままに話す感じである。
「思い返してみると、人助けしている時にアスランが私達にきつい態度で指示をしてきたり、後からダメ出しをしてきた事もあったけれど全然気にならなかったわね…。まぁ、今回ほどの事は今まではなかったのもあると思うけど…。」
リリアンは過去を思い返しながら、不思議そうに言った。
「…それは、魔王討伐はアスランだけじゃなくて、皆さんにとってもやり遂げたい事だったからじゃないですか?」
アリーが意見を出すと、アスラン以外の4人がアリーを見た。
魔王は人類の問題でもあったのだから、アスラン達だけの願いと言うのは変かもしれない。けれど、アリーの言いたい事はリリアン達には分かった様子だ。
「今回の旅は、アスランの我儘でしかない。皆さんには関係なかった筈です。」
アリーを探す今回の旅はアスラン都合、アスランの為だけの旅であった。リリアン達は善意でアスランに協力してあげていただけだ。
だからこそ、協力してあげているのに粗末な扱いをするアスランの態度が目に付き、リリアン達は嫌な思いばかりしてしまったのではないか、と言うアリーの意見にリリアン達は納得した。
「それと、人助けの時のアスランの態度が気にならなかった事ついてですけど、皆さんはアスランは関係なく、困っている人を自分から助けていたのだと思いますよ。でも今回の旅では普段からのアスランの皆さんへの態度と、困っている人達への態度の差に不満を感じて、気になってしまったのではないでしょうか?」
「…そう、かもしれないわね。」
困っている人がいるならば、自分から声をかけて助けようとする。それはアスランに限った話ではなくてリリアン達もきっとそうだ。
だが今までは、アスランが率先して困っている人を見つけて声をかけるから、リリアン達はそれに続く形に毎回なっていた。
アスランは自分達には優しくないのに…という不満さえなければ、魔王対峙の旅の時と何も変わらないかもしれないとリリアン達は同意した。
「困っている人を助けようとする、正義感が強いのはアスランと皆さんは一緒なんだと思います。人助けを面倒臭いとしか思えなかった私なんかとは、違いますよ。」
「…。」
自分はリリアン達とは違って、人助けを面倒臭いと思う冷たい人間だとでも言うかのようなアリーに、リリアン達は何とも言えない顔をした。
アリーが人助けを面倒臭いと思っていたのは本当の事だろう。けれど面倒臭いとしか思えなかったほどに、アリーをこき使って追い詰めたのはアスランだ。
その上アリーは、アスランと共に人助けをしても感謝されず、さらに村の女の子からは嫉妬されて、両親に味方をして貰えず村で孤立してしまった。
リリアン達は勇者アスランの仲間という事もあったのか、人助けをすればアスランだけではなくて皆も感謝されてきた。そして何より、リリアン達には辛い気持ちを共有出来る仲間が居て1人ではなかった。
たった1人で不遇な想いばかりをしたアリーが、リリアン達のように人助けを良い事だと思えないのは仕方がない。アリーの性格が善良だと言い切れないかもしれないが、少なくとも周りから非難されるような冷たい人ではないとリリアン達は思っている。
そんなリリアン達の想いを何となく察したアリーは、居心地が悪そうな笑みを浮かべた。そして再び、真顔になってアスランを見た。
「アスラン、自分が身近な人を傷つける存在なんだって理解出来たでしょう? アスランにとっては甘えで、悪意が無かったとしても赦される事ではないんだよ。」
「うっ……。」
アスランは苦しそうな声を出した後、俯いて黙り込んでしまった。表情が見えなくなり、アスランが今何を思っているのかをアリー達には察する事が出来ない。
次に何を言うのか、何をするのかは誰にも分からなくなってしまった…。
「…アリーさん。」
そんな中、リリアンはアリーに話しかけると真剣な顔をした。
「…こんな事を言うのはおかしいと分かっていますが、アスランと仲直りをする機会を与えてあげてくれませんか?」
次か、その次くらいで「孤立する勇者」は終わりそうです!
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