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初めまして、私は勇者の…。【連載版】  作者: 徒然草


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22/22

22.孤立する勇者7

 今回で「孤立する勇者」は最後です。


「っ!?」


 リリアンの言葉に、アスランは俯いていた顔を上げた。


「…どういうつもりですか、リリアンさん。」


 アリーが無表情でリリアンを見た。


「アリーさんが、アスランと完全に縁を切りたいという気持ちは分かっているつもりです。でも、アスランはアリーさんに謝りたくて、仲直りしたくて必死だった事も知っています。」


「っ、…?」


 アスランは自分と別れると言ってきたリリアンが何故、アスランを庇おうとするのか分からないというように、困惑した顔でリリアンを見た。アスランの視線に気がついたリリアンもアスランを見た。


「…もう私は、アスランの傍には居られないと思ってしまったわ。でも仲間として、恋人としてアスランと過ごした時間は私にとって掛け替えのないものだったのは本当よ。だから最後にアスラン、アリーさんとの関係が少しでも良くなれるように協力させて欲しいの。」


「リリアン…。」


 アスランは目を見開いて、悲しそうな笑顔を見せるリリアンを見つめた。


「はぁ…、確かにそうだな。俺もアスランと一緒に戦えて良かったと思ってるぜ。それにお前に助けられた事だって何度もあったからな。このまま下僕扱いされて離れました…なんて思い出で終わるよりも、最後に仲間としてケジメをつけた方が良いかもな。」


「ダン…。」


 溜息を吐いたダンは苦笑いをしながらも、リリアンの言葉に同意した。


「…。」


「おい、ブルーノ。」


 ブルーノは何も言わずにアスランを睨み付けたままだ。しかしダンが声をかけると、諦めたように口を開いた。


「…これが最後ですからね。」


「…ブルーノ。」


 リリアン達は呆然と、何処か悲しそうな顔で見つめてくるアスランの顔を見た後に、アリーと向き合った。


「アリー、何の条件もなしに赦してやって欲しいだなんて言わない。だが、どうかアスランに機会を与えてやってくれ!」


「もし、アスランがアリーさんの意に沿わない方法で仲直りを強要してきたら、僕達がアスランを赦しません。いえ、まぁ…アスランがそんな事をする訳がないと信じてはいますけどね。」


「アリーさん、お願いします!」


「〜っ…。」


 アリーに懇願する3人の姿を見て、アスランは目を潤ませて泣きそうな顔をした。そんなに自分の事を思ってくれているのなら離れようとするなという苛立ちなのか、ここまで自分の事を考えてくれる3人を傷付けてしまった事への後悔なのか、それとも別の感情なのかはアリーには分からない。


「…アリー、頼む。どうか、俺を赦して下さい。」


 だが、3人の態度はアスランの心を動かしたようだ。アスランは弱々しくも、ハッキリとした声で謝罪をしながらアリーに頭を下げた。


「…顔を上げて、アスラン。」


 暫くするとアリーの声がかかり、アスランは恐る恐る顔を上げた。


「まさか私と似たような思いをした皆さんに、アスランとの仲直りをお願いをされるとは思いませんでした。本当に、優しくて素敵な仲間を持てて幸せだったね、アスラン。」


「っ、…。」


 幸せだった、と過去形で話すアリーの言葉にアスランは苦い顔をした。


「…その前に、私もアスランに言わせて貰いたい事があるの。本当は、言わなくてもいいかなと思っていた事なんだけど、リリアンさん達を見ていたら、言った方が良いかもしれないと思ってね。」


 アリーは無表情だが今までとは違い、冷たさを感じない顔付きになった。


「アスランさ、私が村で孤立したのは全部自分のせいだって言ったよね。でも、少なくとも両親の事はアスランだけのせいじゃないよ。」


「え…?」


 アスランは目を丸くしてアリーを見た。


「両親から私との話をどう聞いたのかは分からないけど、アスランが居なくたってあの人達は元から私にあまり関心を持たない、粗末に扱うような人達だったの。メノアさんとの一件でそれがよく分かった。」


 村の人達から感謝されない、女の子達からの嫌がらせをされる、両親がアリーを大切にしてくれない。その全てはアスランが原因だとアリーはずっと思っていた。

 けれど、両親に関してはアスランが居なかったとしても、何れは両親に嫌気が差して離れていたとアリーは思っている。勿論、アスランが居なければ女の子達が嫌がらせをしてくる理由がないし、両親もアスランと比較してアリーに何かを言ってくる事はなかっただろうから、今よりはマシな状況だったとは思うが…。


「い、いや、おばさんはアリーを本当に心配して…それに、おじさんは…っ。」


 アスランは言い返そうとしたが、アリーの父親に関しては思う所があったのか言葉が続かなかった。


「アスランがどう思っているかは知らないけど、私はそう思ったの。アスランだけが悪かった訳じゃないのに、全部アスランのせいだと思い続けて恨んでいた。…それは間違いだった、ごめんなさい。」


「アリー…。」


 アリーは頭を下げるまではしないが、真剣な声で謝罪した。アスランは何とも言えない顔でアリーを見つめる。


「だからという訳ではないけれど、条件を聞いてくれたらアスランとの関係の改善を考えるよ。安心して、アスランがその気になれば出来る事だけを言うつもりだよ。リリアンさん達も無理難題だと思ったら止めてくるだろうしね。」


「っ、ほ、本当かっ!」


 アスランは笑顔を浮かべないが、驚きの中で希望を見出したような顔になった。そんなアスランを何処か安心したようにリリアン達は見た。


 アリーは腕を組みながら宙を見続けていたが、数秒後腕組みを解いてアスランを見た。


「それじゃあ、2つの条件を聞いて頂戴。」


「2つ…。」


 アスランが呟くとアリーは頷いた。


「早速だけど1つ目ね。まずは、今すぐバロウに謝罪して。」


「っ、!?」


 アリーの1つ目の条件に、アスランは表情を強張らせた。


「アスランがバロウをどう思っているのかはどうでもいい。口先だけで良いから、バロウに一言謝罪の言葉を言って頂戴。」


「…。」


「2つ目の条件も先に言っておくね。2つ目はアスランが今日か明日にはこの街を出て、真っ直ぐ村に帰って。そしてその後、5年間は村から出ずに過ごして頂戴。」


「ご、5年……っ! もしかして、旅の期間か?」

 

 5年というのは、アスランが魔王討伐の為に村を出ていた期間だとアスランは察した様子で声に出した。だが、アスランを村に閉じ込めようとするアリーの意図がいまいち理解出来ずに困惑している。


「アスラン、何時までレコさんを1人にするつもりなの。」


「っ!?」


 アリーの言葉に、アスランははっとしたような顔をした。


「さっきも言ったけど、レコさんはずっとアスランを心配していたんだよ。魔王退治は終わったのに私を探しに来て、また待たせているんでしょ。私の両親に世話を頼んだって言ったけど、レコさんは誰よりもアスランに傍に居て欲しいと思っているんじゃないの?」


「それは…。」


「それにレコさんだけじゃなくて、村の人達もアスランを待っていると思う。アスランの事を大切に思ってくれる人達の傍から離れずに生活して欲しい。」


「アリー…。」


 アリーの言葉をレコや村の人達、そしてアスランへの気遣いと捉えたのか、アスランは切なそうにアリーを見た。


「5年経って、アスランがまだ私と幼馴染として仲良くしたいと思っていたのなら、私もちゃんと考えるから。」


「それはっ…、でも、5年は…。」


 逆に言えば、アスランは5年間は村にアリーが来ない限り、接触する事が出来なくなるとも言えた。仲直りの可能性が残されただけでも有難い事なのだとアスランも頭では分かってはいる様子だが、納得しきれていないのか渋い顔をした。


「皆さんも、この条件でなら問題ないですよね?」


 アリーはリリアン達に確認するように聞いた。


「…あぁ、誰かを傷つけるとか、悪意ある噂を流せとかではないしな。」


「ええ、大金を渡せとか、無理難題ではないものね。」


「一生村から出るなという訳でもありませんし、僕も異論はありません。」


「…。」


 勇者アスランの経歴を傷付けるような内容ではなく、絶対に不可能な条件でもない。そして、期限付きの村への拘束なら問題ないと3人が声に出すと、アスランは何も言えなくなってしまい黙り込んだ。


「それじゃあ、バロウに謝って頂戴。」


 アスランはまだ、アリーがバロウの傍に居る事を認められないのだろう。だがそれを言えば、アリーから今度こそ完全に縁を切られる。アスランに味方がいない今、アスランはバロウに謝罪する以外に選択肢は存在しなかった。


「っ……。」


 アスランは暫く自分の中で葛藤し続けたようだが、苦々しい顔でバロウを見た。


「す、すまなかった…。」


 明らかに納得していない、不満だと言わんばかりの声と態度だ。バロウはそんなアスランにニッコリと微笑んだ。そして、


「赦すわけねぇだろ、バーカ!」


「なっ!?」


 バロウは心底馬鹿にしたような意地悪な笑みを浮かべてアスランを嘲笑った。アスランは顔を赤くして、憎々しいと言わんばかりにバロウを睨み付けた。


「だが、アリーの条件は“アスランがバロウ()に謝罪の言葉を口にする事だけ”だ。俺に赦される必要はねぇ。そんで謝罪の言葉はアリーも、お前の元仲間達も、俺もハッキリと聞いた。だから1つ目の条件は達成だな。」


「…っ。」


 アスランはバロウの言葉に何を思ったのか、何かを堪えるような顔をした。


「それじゃあ、私との話はもうおしまいだね。気を付けて帰ってねアスラン。気が向いたら、レコさんが無事で良かったって、伝えておいてよ。」


「っ、…。」


 アスランは何も言わずに、全員の顔を気不味そうに一目見ると、視線を外して俯きがちに喫茶店を早足に立ち去ろうとした。


「待って、アスラン!」


「っ、何だいリリアン?」


 だがそこでリリアンがアスランを呼び止めた。アスランは身体をビクッ、と反応させて、何かを期待するようにリリアンを見た。


「あの、アイスティー代払わないと…。」


 気不味そうなリリアンの言葉に、アスランの期待は儚く消え去った…。


 

 「孤立する勇者」が終わりました! アスランが言葉でコテンパンにされる回でした。次はアリー達がアスランとの話し合いの為に、どんな計画と作戦を立てていたのかを明らかにする話を書きます。後は登場人物達のその後の話を書けたらいいなと思っております。


ここまで読んで頂き有難うございました!

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― 新着の感想 ―
とりあえずアスランがごねたり、リリアンに振られた後にアリーに「俺には君しかいないんだ!」と縋り付いたりしなくて良かったです。 アリーの条件通り、5年間村で過ごして、それでずっと放置してた祖母のレコさん…
妥当と言えば妥当な条件なのかな?  これでどうなるか……素直に考えると村で搾取され続ける事になると思うけど、アスランはさして親しくないと思った相手には無責任な優しさを発揮できるから、村の連中と必要以上…
「あの、アイスティー代払わないと…。」 最後のオチ面白すぎました。 いいですねここまでとても面白かったです。 まだまだ続きがあるようで嬉しいです。 その後の5年間のアスラン視点も可能であれば読んでみ…
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