表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初めまして、私は勇者の…。【連載版】  作者: 徒然草


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/21

19.孤立する勇者4

 アスラン孤立回の続きです!


「おお! 勇者アスラン様は今日も人助けしているのかぁ〜?」


 3年前、子供を助けてからバロウはアスラン達の目の前に現れては嫌味な笑顔で話しかけてくるようになった。


「何なのよ貴方、私達に何の用なのよ?」


 リリアンは眉を顰めながらバロウを睨む。ダンとブルーノも同じようにバロウを見た。


 アスラン達は村で魔王の情報を探りながらも、困っている村人達の人助けをしていた。アスラン達が勇者だと知った人々は、勇者一行を褒め称えていった。


 だが目の前の男、バロウは何が気に入らないのか分からないがアスラン達に、主にアスランに対して嫌味な態度を取ってきた。アスラン達はなるべく相手にしないように適当にあしらっていたが流石に鬱陶しく思っていた。


「…お前、随分と素行が悪いみたいだな。人助けをしないどころか嫌味を言って相手を不快にさせる嫌われ者だって聞いたぞ。」


 ダンが何処か呆れたようにバロウに言うが、バロウは嫌味な笑みを崩さない。バロウがどんな人物なのか調べる事にしたアスラン達は村人達に聞いてみたが、バロウを褒める言葉は全く存在しなかった。

 むしろ、非難する声ばかりで嫌われ者だという事がよく分かってしまった。


「俺はただ思った事を素直に言ってるだけだぜ? 相手を不快にさせたくて言ったわけじゃねぇよ。あの時のガキだって、泣き声が五月蝿いから黙れと言っただけだ。」


「あの子は親と逸れて心細かったんですよ。それなのにあんな言い方をするだなんて…。」


 悪そびれる様子のないバロウを非難するようにブルーノが言うが、バロウの心には響かないようだ。


「俺はガキだろうが年寄りだろうが言いたい事は言わせて貰うぜ? アンタらにもな、勇者御一行さま?」


 バロウは嫌味な笑みのまま、アスランを見た。


「魔王退治という責任を負わされる中で、困っている人を何の見返りもなく助ける…なんで態々そんな事を自分から進んでやるのか全然理解出来ないんだよな。なぁ、教えてくれよ勇者様?」


 教えてくれと言いながら、結局何を答えても嫌味な返しをしてくるのだろうなとアスラン達は全員思った。鬱陶しいと言わんばかりの目線でアスラン達がバロウを見続けていると、バロウの方が口を開いた。


「もしかして、褒められるのが嬉しいとかそんな理由か? 褒められたいだけで見返りのない事に労力なんか使えるのかよ…いや、勇者様は一人じゃなくて、お仲間が居るからそんなに大変じゃねぇのかな?」


「ちょっと、どういう意味よ!?」


 褒められるのが嬉しいというのはともかく、“仲間が居るから大変じゃない”と言うバロウの言葉の意味がリリアンにはよく分からなかった。リリアンは苛立ちを含ませながらもバロウに質問するが、バロウは何も言わない。


「…バロウ、君の父親の話を聞いたよ。」


 唐突なアスランの言葉に、バロウは初めて笑みを崩した。


「身内が亡くなって、辛かったとは思う。でも、今の君を父親が見たら何て言うのか想像してみろ。恥ずかしくないのか?」


 憐れむように、注意するようにアスランはバロウに言った。


「…はぁ?」


 バロウは苛立ちの籠った声を発する。


「村の人達から話を聞いたよ。君の父親は素晴らしい人だったそうじゃないか。君も見習って、困っている人達を助けようとは思わないのか?」


「……黙れぇっ!!」


 バロウは憤るとアスランに向かっていきなり襲い掛かって来た。応戦しようとするリリアン達を片手で制止したアスランは、1人でバロウと対峙した。そして剣は抜かずに体術だけで、アスランはバロウを打ち負かしたのだった…。





◇◆◇



「そ、そんな…ま、待ってくれよアリー!」


 アスランを赦すつもりがないアリーに、アスランは焦ったように立ち上がった。


「お、俺は本当に反省しているっ! 頼むから信じてくれっ!!」


「ねぇ、アスラン。」

 

 アリーは先程とは違い、静かな声でアスランに話しかけた。


「どうしてそんなにバロウを敵視するの?」


 アスランの謝罪を聞き流したアリーの質問に、アスランは言葉を詰まらせた。


「バロウとアスランの事はアスランからも、そしてバロウからも聞いた。アスランがバロウを嫌うのは仕方ないと私も思ったよ。でも、幾ら何でも敵視し過ぎな気がするのよね。」


 バロウはアスラン達に絡んできて嫌味を言い、アスランに暴力を振るおうとした。その上、バロウはアスランの悪口を村に広めようとした。そんなバロウをアスランが嫌うのは当然だとアリーは思う。


 しかし、アリーが村でバロウの事をアスランに話した時、アスランは誰の事なのか分かっていない様子だった。ここまで露骨に嫌うほどの相手なら、名前だけですぐに反応してもおかしくなかった筈だ。

 誰にも相手にされなかった悪口程度で、一気にバロウの事が嫌いになるとも思えない。つまりアスランがバロウを罵倒する理由は、バロウが嫌いだからという理由だけではない…。

 

「…敵視し過ぎだなんて、俺はただ、バロウが赦せないだけだ。」


「私はね。アスランが私に拒絶されたのは、全部バロウのせいだと思い込んで責任転嫁しているんじゃないか…と思っているんだけど、違う?」


 アリーの指摘に、アスランは目を見開いた。


「…アスランが私に対して申し訳ないと思っているのは本当なんだろうね。でも心の何処かで、自分が一番悪いと思いたくない。だから嫌われ者と言われているバロウが一番悪い、と思う事で自分の気持ちを楽にしようとしたんじゃない?」

 

「うーわ、マジで最悪だわ。」


 アリーの考えにバロウはうんざりしたような、軽蔑の眼差しをアスランに向けた。


「なっ、ち、違っ…。」


 アスランは焦ったように否定しようとしたが最後まで言葉が出ない。アリーの言っている事は図星なのだとアリーは思った。


 アリーがアスランを拒絶したのはアスランにも原因があるが、一番悪いのはアリーを連れ出したバロウだ。アリーをバロウから引き離せば解決する。責任転嫁と現実逃避の為に、そんな馬鹿な事を考えたのだろう。


「私がアスランを嫌っているのは、バロウと会うずっと前からだよ。だからバロウが関係ない事は、誰にでも分かる事でしょう?」


 アリーの指摘に、アスランは唇を震わせながらも認めたくないと言わんばかりに身を乗り出す。


「っ、だ、だがバロウさえ居なければっ!…。」


「私は誰にも声を上げられず、アスランにとって都合の良い下僕のままで居てくれたのに…そう言いたいの?」


「…ち、ちがう、違うっ!!」


 冷たい目で話すアリーに、アスランは悲しそうな顔で否定した。


 今までずっと他人から好かれて感謝されてきたアスランが、大切な幼馴染(アリー)を傷つけてきた事を思い知らされ、拒絶された。アリーが嫌がらせをされていた事に気が付かなかった。さらにアリーの両親やメノア達がアリーに冷たかったのは、アスランが原因だった…。

 アスランは、自分が悪者の立場になるだなんて考えもしなかったのだろう。色んな意味でショックを受けたアスランは、まだしっかりと現実を受け入れてないのかもしれない…。

 

 だがアスランの都合に振り回されるのは、アリーももう御免だ。だから今、ここでアスランを完全に突き放す為に容赦はしないと、アリーは再びアスランをきつく睨み付けた。


「アスランはさ、バロウを碌でもないと言っているけど、人の事を言えると思っているの?」


「…え?」


 アスランは恐る恐るといった様子でアリーを見た。


「自分は碌でもない人間じゃないっていう自信はあるの? 少なくとも私はアスランの事、碌でもない人だと思っているけど。」


「っ〜…。」


 アスランは愕然としてしまう。散々アリーに拒絶される言葉をかけられてショックが重なっているのだろう。そんな中でさらに、“碌でもない”というバロウに言ってきた言葉を言われるとは思わなかったのだろう。


「…アリーが、どれだけ俺の事を赦せないのか、よく、分かったよ。」


 愕然とし、項垂れたアスランは振り絞るように言葉を出した。アスランの顔色は悪い、病気なのではないかと思うほどだ。だがその目の奥にはまだ少しの光が残っていた。


「だが、少なくともバロウなんかよりはマシだろう!? アリーがどう思っていようが、周りの人達がバロウの方が良いだなんて思う筈がないっ!!」


 アスランの発言に、アリーの心が冷え込んでいくのが感じられた。


 アスランは気づいているのだろうか。アリーの意思ではなく、世間の声をを引き合いに出している事に。それはつまり、アリーの声を無視しているのと同じだ。アリーはもう、アスランに対する苛立ちを越えて諦めの方が強くなった。アリーが何を言ってもきっとアスランの考えは変わらず、何も進展しないのだろう。


「…それなら、他の人にも聞いてみましょうよ。」


 そう判断したアリーは、()()()()にアスランの背後に向かって声をかけた。


「今までの話、聞いてましたよね? 3人の意見を聞かせて貰えませんか?」


「えっ…?」


 アリーはリリアン、ダン、ブルーノの3人から意見を聞くのだと分かったアスランは、困惑しながらも振り返って3人を見た。

 リリアン達は席を立つと、アリー達の傍にやって来た。

 

 リリアン達はアスランの味方だ。アリーにとっては不利な状況になる事は分かる筈なのに、何故だと言わんばかりにアスランは不思議そうにアリーを見た。

 

 だが一方で、アスランにとっては喜ばしい状況になったと思ったのか表情が少し明るくなった。まるで、希望を見いだしたかのように…。


「…と、その前に。私、皆さんの名前を忘れてしまいました。自己紹介をお願いしても良いですか?」


「…あぁ、勿論だ。」


 アリーがそう言うとダンが返事をし、リリアンとブルーノも頷いた。


「…それじゃあ改めまして、私の名前はリリアン。」


「俺の名前はダン。」


「僕はブルーノです。」


 3人はアリーに名前を言った後、視線を同時にアスランに移した。


「私達は、勇者アスランの下僕です。」


 リリアンの言葉に、アスランは希望を忘れたかのように固まってしまった…。


 バロウとバロウの父親については何処かで纏めて書く予定です。次回はリリアン達のターンになります!

 ここまで読んで頂き有難うございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あー、バロウのアスラン敵視の理由は父親か。さてはアスラン系だな? アスラン系はさ、家庭持っちゃダメなんだよ。学校で習ったもん。 しかし最低のゴミクズ(アスラン調べ)と自分を比べるってあたり勇者の余裕の…
そりゃあ完全に無関係な第三者からすればバロウよりアスランのほうがいいわな。 なにしろアスランは(身内を酷使してでも)俺たちを助けてくれる。 で、それじゃあ身内ポジであるアリーや仲間たちは誰が助けてくれ…
バロウと比べはじめたらなんか色々ダメでは………? ってかアリーからしたら、アスランはクソ野郎でバロウは夫ですからバロウの圧勝なんですよね。聞くまでもなく。 まぁそもそも周りの人って誰?って感じですけど…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ