18.孤立する勇者3
アスラン孤立回の続きです!
両親との仲直りを拒否したアリーはさらに言葉を続ける。
「私は両親と仲良くしたいだなんて思ってないし、謝る事なんて何もないと思ってるの。それに結婚の報告の為に一度帰ったし、子供として最低限やるべき事はもう終わっていると思わない?」
「っ、いや、だから、そう言わずにもう一度話を…。」
「何を話すの? そもそも、アスランは責任を持つと言ったけれど、どうやって私と両親を仲直りさせるつもりなの?」
「っ、それは…。」
アリーの質問にアスランは黙り込んでしまった。その様子にアリーは予想通りだと思いながら口を開いた。
「私に謝らせれば良いと思ったんでしょ?」
まず、アリーが両親に家を出てしまった事を詫びる。アスランは自分のせいでもあるから赦してやれと両親に言う。そしてその後は何となくで収めようとアスランは考えていたのだろう。
「…責任を取るだなんて言うけれど、結局私に謝らせて終わらせようとするだなんて酷いんじゃない?」
「そ、そんなつもりはない! ただ、まだ…その、具体的な計画は思い付いてないだけだよ。」
「…へぇ、そうなの。」
焦った様子のアスランの言葉に、アリーは自分の言った事が当たっていたのだと確信したが、一先ず追及するのは止めた。
「両親が私をどう思っているかはどうでもいい。でもね、私が両親と仲直りする気はないの。そしてアスランには具体的な考えもないんでしょう。それなのに私を説得出来ると思ったの?」
「お、俺はただアリー達が家族として、仲良くした方が良いと思っただけだ! それに俺のせいでもあるんだから…放っておけないよ!」
「…っ。」
アリーの質問に、居心地が悪そうにしながらもアスランは答えた。そんなアスランに何とも言えない顔をしたアリーだが、開こうとした口を閉ざした。
そして、自分の中で話を纏めて再びアスランと向き合った。
「さっきも言ったけど、私が2人に会いに行っても私は謝る気はないから。もし2人から謝罪の言葉があったとしても、すぐに笑い合って過ごすなんて出来ないと思う。私が言うのも変かもしれないけど、こういうのは時間が経たないと駄目だと思わない?」
アリーは両親の元から離れて2年くらいは経過している。2年という数字が短いのか長いのかは分からない。だがアリーの両親に対する不信感は何も変わらなかった。もっと時間が過ぎていけば、両親に対するアリーの考えが何か変わる可能性がないとは言えない。
だが、少なくとも今すぐ帰って話をした所で碌な事にはならない。
アスランもアリーに謝罪させる事が出来ない以上、何も良い案が浮かばないようで反論はしてこない。
「…で、でも婆ちゃんはアリーと話したいと思っているよ!」
「それなら、アスランが私は元気に過ごしているって伝えてあげればいいじゃない。」
アスランはレコの事を持ち出してきたが、アリーはすぐさま反論した。
「悪いけど、レコさんは私の家族じゃないの。レコさんの不安は家族であるアスランの言葉で解消すればいいじゃない?」
「なっ、そ、そんな言い方はしなくてもいいだろう!? 婆ちゃんは…。」
「最後はバロウと別れろって、話だったね。」
「っ!」
アリーはアスランの言葉を遮った。アスランはレコに対するアリーの言い方に思う事があったのか、少し苛立った様子だった。しかしバロウの名前が出るとすぐに口を閉ざした。
「当然、それもお断りするわ。」
アスランももう、アリーがアスランの願いを聞く気がない事は分かっていた。それでもアリーから直接拒否する言葉を聞くのはショックなのか、アスランは再び表情を歪めた。
バロウはアリーの言葉を、当然だと言わんばかりの様子で満足そうにした。
「っ、アリー! 何度も言うけどバロウとは一緒にいない方が良いっ! おじさん達との事は…今すぐには無理だというアリーの考えも理解できなくはない。でも、バロウとは今すぐ別れるんだ! そんな碌でなしなんかと一緒に居て、幸せになんかなれる筈がないんだっ!!」
「ちっ、…。」
アスランからの何度目かの罵倒に、バロウは流石に苛ついた様子で口を開きそうになった。しかし、アリーとの約束を守る為なのか、舌打ちをするだけで何も言い返さない。
「アリー頼む、バロウとの事は真剣に考えてくれ…。」
「本当に何度も五月蝿い。」
その代わり、アリーが今まで以上に冷たい声と顔付きで、凍てつくような目線でアスランを睨みながら吐き捨てるように言った。
「っ、アリー…?」
「っ!?」
アリーの様子にアスランは驚いて固まり、バロウも驚いた様子で目を丸くしてアリーを見た。
「本当に何度も何度も五月蝿いアスラン! アスランがバロウを嫌うのは仕方ないかもしれないけど、自分が嫌いな人だからって私に別れを強要しないでよっ!」
バァンッ!
アリーは乱暴に机に両手を置くとそのまま席を立ちアスランを見下ろした。
「っ…!」
「私が村で孤立していた時に私の味方をしてくれたのはバロウだけだった! 村から外に出た事がない世間知らずな私の傍にバロウが居てくれたから、私は今こうして充実した生活を送れているの! アスランや周りがバロウをどう思っているかなんて関係ない! 私が、バロウの傍に居たいと思ったの! だから結婚したんだよっ!! アスランなんかより、私の方がバロウの事を知っているっ!!」
アスランがバロウを嫌い、罵倒する事はアリーも分かっていた。けれど何度もバロウを悪く言うアスランに、バロウ本人よりもアリーの方が耐えられなくなってしまった。
「私の今後の生活や両親の事だけじゃなくて、人の恋愛事情にまで首を突っ込んでくるだなんて、一体何様のつもりよっ!! いい加減にしてっ!!!」
「っ…あ、アリー。」
憤るアリーに、アスランも怖気づいたようで言葉が震えている…。
「…おいおい、落ち着けよアリー。」
この状況を見兼ねた様子のバロウは、アリーの傍に寄る。
「っ…、ごめんなさい、バロウ…。」
バロウに声をかけられて、少し冷静になったアリーは気不味そうにバロウに謝罪した。
しかしバロウは気にした様子もなく、寧ろどこか嬉しそうにアリーの頭をくしゃりと撫でた。
「…もう口を開いちまったが、アスランにじゃなくてアリーになら良いだろう? 約束を破っただなんて言うなよ。」
「?」
不思議そうな顔でアリーがバロウを見ると、バロウはアリーを見たまま意地悪そうにニヤリと笑った。
「アスランが一体何様かって、話だけどよ。アスランは勇者様だろ? 魔王を倒した世界中の人々の救世主様だぜ。だから、調子に乗ってデカい顔をしちまったんじゃねぇのか?」
「っ…ぷっ!」
バロウの言葉にアリーは思わず吹き出してしまった。
アスランは2人のやり取りを呆然と見た後に、バロウの言葉で顔を赤らめてバロウを睨み付けた。
「だ、黙れっ! そんな訳ないだろう! お、俺はただアリーの事を幼馴染として心配してるだけだっ!!」
バロウはアスランの言葉は聞いているが何も言わない。アリーとアスランの話が終わるまではアスランとは口を利かないつもりなのだろう。
アリーはそんなバロウに感謝するようにバロウに微笑んだ後、冷たくアスランを睨み付けた。
「あのさ、私はアスランに“私の事を二度と幼馴染だと言葉にしないで”って、言ったの忘れちゃったの?」
「っ! そ、それは…覚えている、けど。」
口籠るアスランは、アリーを村に連れ戻せば、謝り続ければ幼馴染としてやり直せると思っていたのだろう。
だがアリーからしてみれば、それは浅はかすぎる考えだった。
「もし万が一、私がバロウと別れて、両親と和解して、村に戻って生活をするようになったとしても、アスランは関係ないからね? 私はもう、貴方と関わるつもりは一切ないの。その事を忘れていたようだから改めて言わせて貰うわ。」
「ま、待ってくれ…!」
「もう一度言わせて貰うわ。アスラン、もう二度と私を幼馴染だなんて口に出さないで。私はアスランの幼馴染に…いえ、下僕に戻るなんて絶対に無理だから。」
悲痛な顔をするアスランを気にする事なく、改めてアリーはアスランに絶縁宣言をした。
好きな人の悪口に耐えられなくなったアリーの激怒回でした。次で存在感がなくなったリリアン達を出せたらいいなと思っております 笑
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