17.孤立する勇者2
アスラン孤立していく回の続きです。
「うるっせぇな、ガキ! 何時までもこんな所で泣いてないでどっかに行けよっ!!」
3年前、アスラン達が魔王討伐の旅の最中で訪れた村で子供の泣く声と、それを怒鳴りつける男の声がアスラン達の耳に届いた。
「おい、何をしているんだ!?」
アスラン達が声のした方向へ駆け寄ると泣きじゃくる小さな少年と、その少年を見下ろす男がいた。
「あ? 何だよお前ら…。」
それがアスラン達とバロウが初めて出会った瞬間だった…。
◆◇◆
「バロウ、なんでお前が此処に…?」
アスランは警戒するようにバロウを睨みつける。だがバロウはアスランに意地悪な笑みを浮かべた。
「いやいや、それはむしろこっちのセリフだろ。なんでお前が此処に居るんだって話だろうが。」
「…。」
バロウの言う事に反論で出来なかったのか、アスランは黙ったままバロウを睨みつける。
「俺はアリーと茶を飲みに来たんだよ。此処の常連なんでね。」
「バロウ、仕事お疲れ様。」
アリーは少し笑いながらバロウに声をかける。バロウは片手をあげてアリーに応えた。
「っ…。」
アスランは2人のやり取りを面白くなさそうに見ながらも何も言わない。
「ま、要はするに夫婦が仕事帰りに待ち合わせをして茶を飲んでもおかしくないだろうって話だよ。」
「は、はぁ? ふ、夫婦…?!」
だが、続くバロウの言葉にアスランは声をあげた。
「…何驚いているの。私、アスランにバロウと結婚する事にしたって話したよね?」
アリーは呆れたような声を出した。両親に結婚する事を報告してから何ヶ月も経っている。普通に考えれば結婚していると思うに決まっている。
だがアスランは忘れていたのか、認めたくないのか呆然とした後、バロウを睨み付けた。
「ふ、巫山戯るなよ。お前なんかがアリーの夫になって良い筈がないっ!」
アスランの怒声に、バロウは予想していたとばかりに失笑した。
「ま、そんな事を言ってくるとは思っていたがな。残念ながらもう俺はアリーの夫になったんだよ。アリー本人が望んでくれたんでね?」
バロウの言葉にアスランは一瞬表情を歪めた後、今度はアリーを見た。
「っ、アリー! 今すぐバロウなんかとは離れろ。この男はアリーの夫に相応しくないっ!」
「…。」
必死に説得するようにアスランはアリーに話すがアリーは無表情でアスランを見るだけだ。
「っ、バロウは3年前、小さな男の子の泣き声が五月蝿いというだけ怒鳴りつけていた。その子は親とはぐれて途方に暮れていただけだったのに…その子の親は無事に見つかったから良かったものの、コイツは助けるどころか罵倒する奴なんだよ!」
「そんな事もあったなぁ…。そんで、俺はお前の事が気に入らなくて喧嘩売って無様に負けちまった訳だ。」
アスランの話を聞いても、バロウは怒るどころか懐かしむように余裕な顔で笑っている。バロウの態度が気に入らないのかアスランはさらに憤る。
「…お前は、俺の事が気に入らないだけならまだしも村の人達から嫌われていた。そんな問題のある男なんかにアリーを任せられる訳がないだろう!」
アスランはそう言って、再びアリーを見た。
「だからアリー、今すぐこんな奴と別れて村に帰ろう!! 婆ちゃんも、それにおじさんとおばさんも心配してる!! おじさんとおばさんはアリーに帰ってきて欲しいと思っているんだよ!!」
「お待たせしました。」
アスランの必死な声だけが響く中で場違いな、けれどこの場において何もおかしくないオーナーの声が嫌な空気を裂いた。
「有難うございます、オーナー。ごめんなさい、騒がしくして。」
アリーの目の前に注文していたコーヒーが置かれ、アリーはオーナーに謝罪した。
アスランは此処が喫茶店の中であり、見ず知らずの他人も居る事を思い出した様子でハッとして、勢いを無くす。
アスランとリリアン達の席にも飲み物が置かれると、マスターは厨房へと消えていった。
「アスラン、結局貴方が私に言いたい事は何? 怒鳴らずに話して頂戴。バロウも、取り敢えずアスランが話し終えるまではムカついても我慢してね。」
「はいはい、分かってるよ。」
バロウはヘラヘラと笑いながら頷く。
「ほら、話を聞かせて。」
「っ、それは―――」
アリーが冷静にアスランに質問すると、アスランはアリーと向き直って話し始めた。
アスラン達が村を出るまでに起こった出来事。
レコ、アリーの両親、メノア達村人との会話内容。
そして、アリーを探す為の旅に出てからアリーと似たような境遇の人に出会った事もアスランは全て話した。
そして、アスランは改めてアリーと向き合うように姿勢を正した。
「…アリー、君は村に帰って家族と暮らした方が良い。俺のせいで村に居辛くなったのは分かってる。だから、俺が責任を取るからおじさんとおばさんと仲直りして欲しい。そして、バロウなんかと別れてもっと良い人を見つけて欲しいんだ。」
「…アスランが私に言いたい事を纏めると、私が村に帰る事、両親と仲直りする事、バロウと別れる事…で良いのね?」
「っ! その通りだよアリー、分かってくれて良かった。」
アリーが確認するようにアスランに聞くと、アスランはアリーがその通りにすると勘違いしたのか少し表情を明るくした。
「…それじゃあ、1つずつ返答させて貰うね。」
アリーはそんなアスランを何処か冷めた目で見ながら口を開いた。
「まず、私に村に帰れという話からだけど、私は帰らないから。」
アリーが断りの返事をすると、アスランは顔を強張らせた。そしてアリーはアスランが何かを言う前に再び口を開いた。
「いいアスラン? 私と村の人達、両親との関係とか、バロウの事は一旦忘れて考えて頂戴。私は今、この街でちゃんと働いて暮らしている。つまり、充実した生活を送っているの。」
「えっ?」
アリーの言葉にアスランは目を丸くした。
「皆が皆、生まれ育った場所で一生を過ごす訳じゃないでしょう? 私はただ、生まれ育った村を離れて遠い街で過ごす事にした。それは何も悪い事ではないでしょ?」
「そ、それは…。」
働ける年齢になって、独り立ちして親元から離れるのは何もおかしな事ではない。アリーとアスランの村でも、村から離れた人は何人かいた。
「さらにここで、今度は私と村の人達の事を含めて考えてみて。私は村では孤立してしまって、仲の良い友人なんか誰もいない。でもこの街には職場の仲間や友人が居る。どう考えても私は村に帰るよりもこの街に居る方が良いと思わない?」
「そ、それは…。」
「それに村の人達…メノアさんみたいな人達が私の傍に居たいと思っていると思う? 傍に居れば私だけじゃなくて向こうも嫌な気持ちになると思うわ。お互いにとってもこのまま離れていた方が平穏だと思うけど…。」
「…。」
アリーの主張にアスランは何も言い返せなかった。アリーの言っている事は間違っていないと認めるしかないのだろう。
もしそれでもアリーに村に帰れと言うならば、それはアスラン個人の好き嫌い、拘りだけの我儘と認識されてもおかしくない。アスランもそれは分かっているのか、何とも言えない顔をした。
「…アリーの言いたい事は分かったよ。でも、それでももう一度、おじさんとおばさんと話をして仲直りはするべきだ! 婆ちゃんもアリーを心配していたし、だから取り敢えずはこのまま村に戻って…。」
「じゃあ次に、私と私の両親が仲直りする話ね。勿論、それもお断りするわ。」
アスランの言葉を遮ったアリーは、再びアスランの言葉を否定した。
アスランの知能が段々下がっているような気がします 笑 暫くだらだらと話し合いの回が続きます。何時も読んで下さる皆様、本当に有難うございます(*^^*) ちゃんと完結させる予定なので最後まで読んで下さると嬉しいです!




