表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/30

29

  ピンクのヒヨコは、夕暮れと共に消えてしまった。しかし精霊の行いを人間が咎めるなんて、出来やしない。


 脱走した生き物の数は、めでたい事にぴったりと一致したらしい。


 今回新たに見つかった植物は、過去に絶滅したと思われた大層薬効のある花だそうで、国としては不幸中の幸い、むしろ総合的には良い、と言うことで丸く収まった。


 へろへろになりながら自室へ戻ると、ピンクのふわふわが窓辺に居た。どうやら、解放されたので先回りしていたらしい。


「キュピ!」

「俺様に感謝してるか?」


「相変わらず、調子がいいと言うかなんと言うか……」


 指でつつこうとすると、ぴょんぴょんと飛び跳ね、植木鉢の中に潜りこんでしまった。


 いつの間にか、蕾は膨らんでいた。


「あ、成長してる!」


 よかったと胸を撫で下ろす。しかしこの葉っぱ、どこかで見たような……?と思いながら、隠れているキュピをむんずと掴む。


「もういたずらはやめてよね」

「精霊の言動をニンゲンごときが左右できると思わないことだ」

「またそんな事を……」


 キュピは本物のひよこと見分けがつかないぐらい、ふわふわで暖かいので、握っていると猛烈な眠気が襲ってきたのでベッドに倒れ込む。



 目が覚めると、早朝のようだった。どうやら、夕暮れから泥のように眠っていたらしい。夜にヒューイが訪ねてきたが、そのまま帰ったとエラが教えてくれた。


「あたしは一応声かけたけど、あんた爆睡してたから……」


 もっと気合い入れて起こした方がよかった? と尋ねられ、首を振る。非常に疲れていたので、きっと起き上がる事はできなかっただろうと思う。


 仕事前に急いで身支度をし、研究所まで走っていく。始業までギリギリ5分いられるか、いられないか。でも、私は行きたい。


「足が速くなる魔法、かけてやろうか」

「息が切れなくなるのも追加で!」


 全力で走っていると、向こうからヒューイがやってきた。彼も走ってきたらしい。


「そろそろ……起きたかと……思って」

「へへへ……」


「昨日はごめんね、寝ちゃって」


 謝ることなんて何もない──とヒューイは言ってくれたが私はきちんと謝罪することにした。自信がなくてフラフラしていたこと、例の話は断るつもりであること──。


 ヒューイは黙って私の話を聞いて、その後静かに切り出した。


「その件なんだけど、ご両親に挨拶させてほしい」


「へっ」


 ヒューイはうちの両親に、縁談を断ってくれるよう直談判すると告げた。



「いやー、この娘ったら! どうして早く言わなかったの!」


 善は急げ。私たちは大急ぎで休みを合わせ、実家に向かった。今度は私が大目玉を喰らう番であった。


 とにかく怒られ、兄には呆れられたし、ヒューイは以前エレナ様のおうちにお邪魔した際、実家の場所を教えなかった事まで覚えていた。


「本当に申し訳ありませんでした……」


 両親は困惑しながらも、縁談を断ってくれると言った。というよりは、相手方もそこまで乗り気ではなく、間に入っているお見合いおばさんの暴走であるらしかった。


「なんだったんだろう、一体……」


 家の事は気にしなくていいから自分のやりたいようにやりなさい、と背中を押され、私はスッキリした気持ちで帰路についた。


 この数日間、いろんな事があってヘトヘトになってしまったが、丸く収まって良かったと思う。


「雨降って地固まる」


 キュピは今日も偉そうであった。ここまでくると、もう反論する気も起きてこないので不思議だ。



 歩きながら、ヒューイは隠し事を教えてくれた。前から私の事を知っていて、好きでいてくれたこと。でも、貴族だとわかっていたので声を掛けるつもりはなかった。


 橋の上でへたり込んで居る私を見て、思わず話しかけた事。キュピに『これは自分の手助けをしてくれたのか?』と質問してみたが、明確な返事は返ってこなかったらしい。


 ヒューイも、これが本当に偶然なのか、私がキュピの『呪い』に本気でビビっていて言うことを聞いているだけなのか、それとも、それなりに乗り気なのだろうか──ぐるぐると考えていたと言う。


「なんだ、結局似たもの同士って事なんだね」

「その通り」


 まだ時間はあるので、城門に続く橋の上を並んで歩く。もはやお馴染みとなった門番のおじさんがお帰り、と笑いかけてきた。


 ただいま戻りました、と返事をして、もうしばらく歩いて、次の約束を取り付ける。部屋に戻ると、蕾は半分ほど膨らんでいた。



最終回は本日12時に予約投稿しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ