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 当日は飛行船が到着する正確な時刻を教えてもらい、休みを変わってもらった。


やはり飛行場は迎えの人々で混雑している。前回もそうだが、エレナ様のファンがやってきているようだった。


「あ、降りてきた」


 地上に向かう階段を降りてきたヒューイの表情は冴えなかった。


キュピが頭上でぱたぱたと飛び回って、存在をアピールする。私を見つけたヒューイは、どこかぎこちない表情をした。


「お疲れ」

「お疲れ様です」


エレナ様はいつも通りの様子だった。ヒューイは後ろで無言を貫いている。


「あいつ途中からずっとああなんだよ」


リオが小さな声で囁いた。


「発表が終わった後だったからよかったけど、ずいぶん塞ぎ込んでしまって」

 

何か悪いことでも言ったのか……と私の様子を伺っている。


「……すいません」


その返事を聞いて、二人は顔を見合わせた。


「……お疲れ様です」


「あのね、ヒューイ……手紙に書いたことなんだけど」


「はい。おめでとうございます」


ヒューイはにっこりと笑った。私は硬直する。これはまずい、と心が警報を鳴らす。


「……いえ」


 ヒューイはとても、出会った時以上に他人行儀だった。


「めでたい話があるようでしたら、研究はここまでのようですね」


「もう終わりにしましょう。お疲れ様でした」


 ヒューイはそのまま帰ってしまった。怒っているよりは、すっぱりと終わらせた──そのような雰囲気であった。


私はなんの言い訳も謝罪もできないまま立ち尽くす。言おうと思っていたことが、何一つ伝えることができなかった。


こんなはずじゃなかったのに……。



「何かあったのか?」


 注意深く見守っていたが別に旅先では目を外すような事はなかったと思うが……とエレナ様は教えてくれた。


「……悪いのは、私なんです」


リオは去っていくヒューイの背中と私を見比べて、こちらの話を聞くことにしたようだった。


「実は縁談の話があって」

「おお」


私はエレナ様に話をした。彼女は貴族令嬢なので、大体の場合の結婚が自由にならないことは知っている。


「ご両親の気持ちはわからなくもないな。やはり、同格かそれ以上の家と縁づくと言うのはめでたい出来事だからな」


 私は兄弟が多いからあまり問題にはならなったが……とエレナ様は難しい顔をした。


「つまり?身分違いと見せかけて意外とそうでもなかったと見せかけてやはりここで平民の自由恋愛と貴族における政略結婚の異文化との齟齬が起こった感じ?」


 リオの言葉に、私たちは頷いた。


「それで、話し合いが決裂して……そこからどうするの」


俺が呼んでこようか、と言うリオにエレナ様が待ったをかける。


「いやしかし、親の意向というのは無碍にできない。家と家の問題だから」


「それにしたって、今の状態で解散はまずいでしょう?」

「向こうがあきらめるなら、それだけの男だと言うことだ……」

「エレナ様は」


二人が議論を始めたので、私はその場を逃げ出した。私の気持ちは決まっている、はずだったのに。


萎縮してしまった。怒らせてしまった、失望されてしまった、



「どうしてヒューイと話さなかったんだんだ」


 キュピは器用に宝石箱の蓋を開けて、バレッタを引き摺り出してきた。


「だって……」


「だって?」


「もう、終わりにしましょうって」


 私はキュピの言葉を待った。きっと、「うるさい。さっさと行け」といつものように私をけしかけてくれるはず。


 そう期待していたのに、キュピはみるみるうちに小さくなってそのまま消えてしまった。

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