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「どうしたんだろ」


 疑問が湧き出てくるが、よくよく考えると最近実家に顔を出していなかったので、たまには帰ってこいと言うことだろう。


 反抗する理由は全くないので、私は手紙に書いてある通り、今日の休みを使って両親に会いに行くことにした。


 出かけるその前に、ヒューイから預かっている植木鉢に水をやる。なんの草かわからない、つまりは育て方も不明なのだが、とりあえず日当たりの良いところに置いて水をたっぷり与えている。


 生き生きとしているので、育て方は間違っていないのだろう。万が一枯らしてしまったらヒューイのお母さんに申し訳ない。


 虫などついていないか確認のために葉をかき分けると、蕾がついていた。まだ緑でかたく、色づいている様子はない。


「ほら見て、蕾があるよ」


 キュピは葉の下に潜り込み、くちばしで蕾をつついた。


「うむ。よくやった」


 引き続き頑張るように──キュピは満足げに膨らんだ。


「進展がありましたよ、っと」


 手紙を書く。きっとヒューイは喜ぶだろう。私には何がなんだかわからないけれど、もしかしてキュピには本人すら気づいていない植物を成長させる力があったりするのかもしれないし……。


 そんな事を妄想しながら手紙をしたためていると、あっという間に正午が近づいてきてしまった。昼食には間に合うように実家に到着しなければならない。


  大急ぎで手紙を完成させ投函し、実家へ向かう乗合馬車に乗る。


 よく言えば歴史のある、悪く言えばボロい家。景観維持のために外装は補修するが、中は結構な古さである。


「ただいまー」

「あらあら、お嬢様、お帰りなさいませ」


 声をかけてきたのはもちろんばあやではない。正真正銘、私の祖母である。


「おばあちゃん……」

「ミルカちゃん、久しぶりねー。おしゃれしちゃって、どうしたの」


 今日は普段より前の状態に近い。私だっておしゃれぐらいするよと生返事をする。家族が派手になった私を見たらひっくり返ってしまうだろう。


 居間では両親がかしこまった感じで私を待っており、珍しく来客用のティーセットとお茶菓子が出ていた。


「まあ、座りなさい」

「?」


「実はな、ミルカ」


 両親は深刻そうな顔をしている。とうとうお屋敷の税金が払えなくなったのだろうか……それとも兄の婚約のための結納金が足りないからお前の分を取り崩す、とかだろうか。それとも誰かが病気になったとか……。



「お前に縁談の話が来ているんだ」

「は?」


 思わず変な声が出た。今なんと?


「お前に、お見合いの話が来ているんだ」


 眼鏡を外してまじまじと両親を見つめる。なんとなく、私に交際相手が居るのは両親は理解しているとばかり思っていた……だって、兄は知っているだろうし……と考えてある一つのことに思い当たる。


 私は「親には絶対に言わないで」とシリルに頼んだ。もしかして、彼はそれを律儀に守ってくれたのではないか。


「少し年上だけど、たまたま縁が薄かっただけで、悪い人ではないらしい」

「ははは……」


 私、今恋人がいて。報告が遅れてごめん。今はその人がいるからせっかくだけれどお見合いの事は考えられない。


 そう報告すればよいだけなのに、それを口に出す事ができなかった。


 いつも胸にくすぶっている、ほんのわずかな「この関係は期間限定の偽りかもしれない」と言う思いが、私にそれを口にするのをためらわせた。


 両親は嬉しそうだった。とても相手を気に入っているらしい。


「信頼できる人からの紹介だし、これで一安心だな」

「結局こうなるなら、お城に行かせなくてもよかったですね」

「いやいや、これも働きに出たおかげだ。城に奉公しているのは印象が良いからな」


 両親が楽しそうに語る様子を、止めることは私には出来なかった。


 非常に間の悪い事に──兄にも良いご縁があったらしい。しかも、シリルは相手の家に婿養子に行くと約束してしまった後で、両親はそのタイミングで私に縁談が来たのでこれ幸いと仲人からの話を承諾してしまったらしい。


 鞄の中からキュピがもぞもぞと這い出てきて、心配そうに私を見つめてきた。彼はこんなに気弱な表情をするのかと、それどころではない事を考えてしまう。


「おいミルカ、他の番を探すのか?」


 私はとりあえず静かに首を振ったが、この状況をどう切り抜けるかまではまだ、考えていない。

最終回まで予約投稿しました。お正月の間に童話など他の作品を投稿していましたので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。

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