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忘れた君に、もう一度恋をする。――世界でいちばん完璧な彼女――  作者: mochiko


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5/8

人間になれない少女

美鈴は人間ではなかった。

でも幽霊でもない。


本人にも、自分が何なのか完全には分からないらしい。


「気づいたらいたの」

「いつ?」

「一番古い記憶は大正時代」


意味が分からない。


「嘘だろ」

「嘘だったら楽だった」


美鈴は言った。

彼女は歳を取らない。

怪我をしても治る。

病気にもならない。


「誰にも覚えてもらえないの」


美鈴が言う。


「どういう意味?」

「私と深く関わった人は、いつか私のことを忘れる」


最初は数年。

長くても十年。

写真からも記録からも、少しずつ痕跡が消える。


だから美鈴は何度も名前を変えた。


場所を変えた。


「昔は旅芸人みたいなこともした」

「だからいつも歌ってるのか」

「歌うの好きだから」


そこだけ普通の女の子みたいだった。


「じゃあ、俺も」

「忘れた」


美鈴が答えた。

胸が痛んだ。



「昔の俺たちって」

「友達」


一瞬。

ほんの一瞬。

美鈴の声が揺れた。


「それだけ?」

僕が聞くと、美鈴は笑った。


「六歳だよ」

「まあそうか」


でもなぜか。

残念だった。



美鈴は僕の町に一年ほど住んでいたらしい。

僕は毎日のように彼女と遊んだ。

母も知っていた。



「母さんが隠してたのは?」

「私がお願いした」

「なんで」

「悠真が壊れたから」

「……俺が?」


美鈴の最後の日。

僕は彼女が消えることを知った。

泣いて追いかけた。

駅まで。


「電車に乗れば、一緒に行けると思ったんだって」


記憶が一瞬だけ蘇る。

雨。

ホーム。

手。

泣いている女の子。


「でも俺は」

「線路に落ちた」


息が止まった。


「電車が来てた」

「……」

「私が助けた」


美鈴は俯いた。


「そのとき、悠真の記憶を消した」

「そんなことできるのか」

「人に忘れられるだけじゃない。

強く願えば、私から人の記憶を遠ざけることもできるみたい」


「なんで」

「もう私を追いかけないように」


そして十二年。

美鈴は僕の前から消えた。


「じゃあなんでアイドルになった?」

僕が聞いた。

美鈴はしばらく黙っていた。


「会いたかったから」

「俺に?」

「うん」


心臓がうるさい。


「でも直接会えば、また巻き込む」

美鈴は笑った。

「だからテレビの中ならいいかなって」

僕は何も言えなくなった。


僕が三年前、美鈴を初めて見たと思った瞬間。

どうしてあれほど惹かれたのか。


大きな目。

黒い髪。

笑顔。

全部、自分の理想だからだと思っていた。

違う。

僕の理想が彼女だったのだ。

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