第十六話 疑心暗鬼
『調査記録』 最強な双子の姉
フランセン姉弟の姉の方。彼女は15歳という若さで才能を開花させた。同年代、ましてや幹部クラスでないと彼女に勝てる者は存在しない。もしいるなら、それは彼女の弟だろう。
レイヴィア・フランセン
性別は女、魔法属性は雷。元サルバート連邦軍大尉であり、現在は指名手配犯。年齢は18歳。
言わずと知れたアイシス・フランセンとシャマール・レドモンドの娘。
父親譲りの銀髪を1つに束ねており、ほんのり緑がかった青い瞳の少女。アイシス譲りの美貌とシャマール譲りの身体能力を持つ。コロコロと表情が変わることから考えを読まれやすいと思われがちだが、時折見せる無表情に、どこか得体の知れなさを感じる。
翌日、午前のうちからリディがナタリーの元に訪ねてきた
「おはよう、リディ。今日はずいぶんと早いね。何かあったのかい?」
少しピリピリとした空気を纏うリディにナタリーがそう尋ねる
「......別に、何でもないわよ」
それ以上、ナタリーがリディに何か尋ねることはなかった
「そうかい、あの2人はまだ寝てるよ。2人が起きる前には機嫌を直しときな。警戒されてしま「もう警戒されだしてるわよ」
ナタリーの言葉を遮るようにリディが言う
「ねえ、あんたがあの子達をたぶらかしたんでしょう?いいえ、そうに決まってるわ。そうじゃなきゃ、あの子達が私に歯向かうわけないもの!」
リディが声を荒げる。それに対しナタリーは冷静に淡々と答える
「なんのことだい?あたしはただ2人に情報提供をしただけだよ」
「金にがめついあんたが、タダでそんなことするわけない。一体なにが狙いなの!?」
そう言ってリディが机を力いっぱい叩く。それでもなおナタリーは冷静にこう返した
「何に対して怒っているのか知らないけど、一旦落ち着きな。2人が起きてしまうよ」
リディはその言葉に素直に従い、近くにあった椅子に腰かける。それを確認しナタリーは紅茶を出した
リディは出された紅茶を一口飲み、少し落ち着きを取り戻したようだ
「あんた――「すごい音がしましたけど、何かあったんですか?」
リディが何か言いかけたところで、2人の寝室へと続く扉からレイヴンが顔を覗かせた。
「あら、おはようレイ。よく眠れた?」
先ほどまでとは打って変わっていつもの笑顔でレイヴンの方を向く
「え、あ、まあ、はい。それよりさっきの音って......」
「ああ、ごめんなさい。少しナタリーと言い合いになってしまってね。もしかして、それで起こしちゃった?」
それを聞いたレイヴンは気を使ったように
「いえ、そういうわけでは......ちょうどいい時間に起こしてくれてありがとうございます」
と言った。続けて、レイヴィアを起こしてくる旨を伝えると、寝室へと戻っていった
「ふっ、レイヴンにはずいぶん優しいんだね?そのやさしさをあたしにも分けて欲しいよ」
とナタリーがからかうように言った。それを聞いたリディが一言「うるさい」とつぶやいた。どうやらリディにはすでに喧嘩をする気力もないようだ
少しして、身支度を整えた2人が寝室から出てきた
「おはようございます!リディさん、今日は早起きですね」
「僕らが遅起きだっただけだよ」
軽口を叩き合いながら2人はナタリーが用意した遅めの朝食を取った
「2人とも食べ終わったわね。それじゃあこれから今後について話し合いましょう」
リディのその言葉を皮切りに4人は今後の計画を立て始めた
「......ある程度方向性が決まったわね。それじゃあ、これまでの話をまとめましょう」
そう言ってリディがこれまでの話し合いの内容を簡単にまとめて話してくれた
「まず、決行は来年の7月14日、アイシスの命日よ。そしてそれまでにあなた達はナタリーに徹底的に鍛えてもらうわ」
そう言ってリディが2人を見る
「昨日のうちに一言くれてもよかったじゃないか」
「あはは~、忘れてました~」
と、レイヴィアが悪びれもせずに言う
「まあ、構わないよ。それで?その間あんたはなにをするんだい?リディ?」
「私は表向きには2人の捜索に協力の意を示しながら、スパイとしてあっちの動向を探るつもり。何か不自然な動きがあればその都度報告するわ」
「はい。お願いします」
レイヴンのその言葉を聞いて、リディは満足そうに微笑む
「それじゃあ、今後の方向性は決まったわね。よほどのことがない限り、この根幹は揺らがないでしょう。ああそうだわ、ナタリー。この後午後からシャマールが2人に会いたいと言っているのだけど、ここに連れて来てもいいかしら?」
「ああ、構わないよ。これは昨日事前に聞いてたからね」
「そう、分かったわ。それじゃあ、彼を迎えに行ってくるわね」
そう言ってリディは出て行った。
露店街道――その名の通り露店がたくさん立ち並ぶ街道のことだ。そこに、妙に目立つ男性の姿があった。リディは彼を一目見て嫌そうな表情を浮かべ、その男に近づき裏路地の方へと引っ張っていく
「こんなとこにそんな目立つ格好で来るバカがどこにいる!」
「仕方ないだろ?こういう場にどんな服で来ればいいか分からなかったんだから」
そう、その男こそシャマールだったのだ。彼は小ぶりながらも目立つ勲章を何個か付けた軍服を綺麗に着こなしていた。ただでさえその服装で目立つのに...その上、勲章を付けたまま着ているのだ、目立たないわけがない
「はあ、そんなことだろうと思った。とりあえずこの外套でも着てなさい。少しは目立たなくなるでしょう」
そう言ってリディは事前に準備しておいた外套を手渡す。シャマールはそれに従い、外套を着る。そして砂嵐へと向かった
「この下に、2人はいるわ。本当は私もついて行きたいけど、親子水入らずの時間にしたいのでしょう?」
「ああ、すまない。ありがとう」
「お礼はいいから早く行きなさい」
そしてシャマールは砂嵐の地下へと足を踏み入れていった




