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第十五話 束の間の休息

『調査記録』 情報屋の看板娘

砂嵐の店員は10人ほどであり、その内7人が女性である。その中でも看板娘と言われる子がひと際可愛く、愛嬌があるのだそう。


シャミア・カレラス

性別は女で魔法属性は水。年齢は25歳

砂嵐の看板娘であり、店主であるナタリーの実の娘。普段あまり表に出てこないナタリーに代わり、バーとしての砂嵐を切り盛りしている。父親は彼女が幼い頃に他界しているが、ひとり娘が故にナタリーからの愛情を一身に受けているため寂しいと思うことはないのだそう。

リディが帰った後、2人は雑談やカードゲームをしながらナタリーの帰りを待っていた。仕事が長引いたのか、ナタリーが帰ってくる頃にはすでに0時を過ぎていた

「おや、まだ起きてたのかい」

「おかえりなさい!ナタリーさん」

「おかえりなさい。ずいぶんと遅かったですね」

レイヴィアが笑顔で出迎え、レイヴンの声がキッチンから聞こえる

「ああ、ただいま。ところで、レイヴンは何をしているんだい?」

「お腹空いちゃって...今レイに夜食作ってもらってるんです」

ナタリーの問いにレイヴィアが答える

「勝手にキッチン借りちゃってすみません。あと食材も」

とレイヴンが申し訳なさそうにサンドイッチが乗った皿を持って、キッチンから出てきた

「お代にそのたまごサンド1切れもらうよ」

そう言ってナタリーは有無を言わさずサンドイッチを1切れ取り、口に運ぶ。少し大きめの一口サイズのそれを、ナタリーはあっという間に平らげた

「案外いけるじゃないか。料理は得意なのか?」

「人並みには出来ますよ。誰かさんのおかげで」

横目でレイヴィアを見ながら言う。レイヴンの視線から少しでも逃れようとレイヴィアがそっぽを向く

「しょ、しょうがないじゃない!一時期、厨房出禁になってたんだから......」

そんな2人の様子にナタリーはなんとなく察したのか、それ以上追及してくることはなかった

「それで、今日はリディに会ったんだろう?どうだった?」

「近況報告と情報共有だけして終わりました。あと、明日...というかもう今日ですけど、また来るって言ってました」

サンドイッチを頬張るレイヴィアの隣で、レイヴンが淡々と答える

「明日も来るのかい?一体なんのために」

「今後について、ナタリーさんも交えて話し合いたいんですって」

そうレイヴィアが答える

「まあ、そこはあたしも混ぜてくれると助かるよ。今後の君たちの動向は知っておきたいからね」

「あと、お父さん連れて来るっても言ってました」

「......会うつもりなのかい?罠かもしれないんだよ?」

先ほどまでと声のトーンは変わっていないが、どことなく空気が止まったような錯覚に陥る。その問いに対しレイヴィアはどこか覚悟を持ったような顔をしてこう答えた

「お父さんはそんな卑怯なことしない。それに、お父さんだってこれ以上大切な人を失いたくないはず。だから大丈夫です!」

それを聞き、ナタリーはフッと笑みをこぼす

「まあなんにせよ、あんたらの人生だ自由にしな。さ、おしゃべりもこのくらいにしてそろそろ寝な。良い子はとっくに寝る時間だよ」

「はい。おやすみなさい、ナタリーさん」

「本当、そういうとこおばあちゃんっぽいよね~」

素直なレイヴンと裏腹にレイヴィアはナタリーに文句を言う。ナタリーはそれを聞き流し、レイヴンはレイヴィアを連行した

着替えや歯磨きなどを済ませ、2人はベッドに横たわる

「ねえレイ、まだ起きてても良くない?」

「はいはい、電気消すよ。おやすみ」

「つれないな~。おやすみ」

怪我のため最近あまり体を動かしていないレイヴィアの目は冴えており、いっこうに眠気が訪れない。レイヴンに話しかけようにも、彼はもう寝てしまったようで、隣からは規則正しい寝息が聞こえてくる。仕方がないので、レイヴィアは処刑されかけたあの日の事を思い出していた

まさか自分が処刑される側になるなんて少し前までは想像もできなかっただろう。見る側には何度もなったことがあるが、見られる側になったことはなかった。ましてや処刑台に上がったこともなかった。処刑台からの景色は酷く恐ろしいものであったと同時に、どこか美しいとすら思った。そして、どこか違和感があった。考え出すともやもやしてきた、どこが変だったのだろう。

............ああ、そうか。いなかったんだ、()

あの日、幹部席にシャマールの姿はなかった。公開処刑は月に1度ほど行われるため、珍しいものではない。そして、よほどのことがない限り公開処刑は幹部全員が見届ける事になっている。実際、レイヴィアはほぼすべての公開処刑でシャマールの姿を見ている。このことから、公開処刑自体がトラウマである確率は低いだろう。なら、なぜあの場にいなかったのか?身近な人が処刑されるのを見たくなかったから――という可能性が高い

無意識のうちにそれを理解していたのだろう。だからこそ、シャマールに会う決断をした。そんな人が罠にかけるなんてこと、できないと判断したから

それと同時に、レイヴィアはシャマールになら何をされても構わないとすら思っていた。結局アイシスのことを一番よく分かっているのはシャマールだ。そして、アイシスを一番思いやれるのも。シャマールが復讐に走らなかった理由、それは真実を知ることが怖かったというのもあるが、一番の理由はアイシスが望まないからだろう。『アイシスのため』などと自分のエゴを彼女に押し付けないそんな彼になら、殺されたって構わない

......などと考えているうちに徐々に睡魔が襲ってきた。それに身を任せて、レイヴィアは目を閉じた

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