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Αの女神とΩの娘  作者: 真咲 楓
番外編
38/38

片割れと親友と

アルテミスやヘルメスも見てみたい!とご要望(と言う名の神の啓示)があったため、調子こいて書いてしまいました。

ヘルメスの口調が途中で変わっているのは仕様です。アポロンにだけ丁寧な言葉を使わない親友。扱いの低さに定評のある太陽の君です(笑)

「ユカリは私のことが好き、嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い、好き、きら」

「やめろこの馬鹿者。近隣からの苦情が絶えん」



アポロンの頭を踏みつけながら、ヘルメスは鈍く痛むこめかみを押さえた。


時々、自分は何故この変態と親友なんぞになってしまったのかと後悔することがある。ここ最近は特に頻繁だ。

主に、新たに迎えられた女神の件で。


彼女はとうにアキレウスと結ばれているというのに、この男は性懲りもなくまだ執着しているらしい。むしろ、人間ではないとわかった途端に、余計酷くなった気がする。

ひとまず変態をふん縛って静かにさせてから、本来の役目である伝言を伝える。



「アテナから伝言だ。最近不穏な気配がするが、もしユカリに不埒な真似をするようならば、二度と男と名乗れないようにしてやると」

「横暴だ!!私が誰を想おうが自由だろうが!」

「ユカリはすでに、想い人がいるだろう」

「それこそ思い違いだ」

「その前向きすぎる思考回路を再構築してこい」



どげしと芋虫に蹴りを入れて、ヘルメスはこめかみを揉みほぐしながら次なる目的地へと向かった。

ちょうどあれの関係者だ。いくら本人が嫌がっていようと関係者だ。愚痴の一つぐらい言ってやろう。









「――というわけで、あの阿呆をどうにかしてください」

「ごめんなさい……あの変態は、私でもどうにもできないわ」

「いえ、いいんです。愚痴を言いたかっただけですから」



愚痴の一つぐらいは言っても構わないだろうが、責任の所在は端から求めていない。

悩ましげに吐息をつく麗人を見ながら、お互い難儀だと苦笑した。



「あの変態、やっぱりあの狩りの時に射かけておくべきだったかしら。ひたすら乱射するだけの単純作業だから、流れ矢の1本や2本が当たっても不思議じゃなかったのに」

「ああ……あれは確か、母君の命令でしたか」

「ええ。ちょうど鬱憤もたまっていたし、いい運動になったわね」



以前あった大規模な「狩り」は、ヘルメスの記憶にも残っている。確か王族が獲物だったか、殺された彼らにとっては完全なとばっちりだった気がするが。

まあ、人間など放っておいても増える一方なのだから、問題はない。


真顔で呟く変態の片割れ――アルテミスを見ながら、確かにあの時は変態を消す絶好の機会だったとうなずいた。

とにかく乱射状態だったから、ついうっかり手元を誤ってしまっても仕方ない。そう、ついうっかり。



「――それで?貴方のことですもの、単に苦情を言いに来たわけじゃないでしょう」

「おっと、そうでした」



他の女神からの伝言を伝えついでに、いい鏃の情報も付け加えておく。

きっと彼女は喜々として矢の新調に行くだろう。その獲物が何であるにしろ。身近な存在であるにしろ。

ヘルメスはただ情報を渡しただけだ。その結果までは構っていられない。ということにしておこう。



「ユカリはお元気?」

「……ええ、だいぶ異性にも慣れたようです。まだ警戒はされますが、さほど酷くはなくなりましたよ」



アルテミスに問われて、(本人の意思とは関係なく)渦中の少女を思い出す。


アキレウスにぴったりと寄り添いながら、遠慮がちにアテナへの言付けを頼んだ少女。珍しい異国の面立ちは、しかしずいぶんと女らしさを増して美しくなっていた。

初めて目にしたあの時、過酷な旅でやせ細っていた身体は、見違えるように柔らかな曲線を纏っていた。


だからこそ、彼は更に気にかかる。



「……くれぐれも、アポロンを近づけないようにしてください。飢えた獣の前に兎を放り投げるようなものだ」

「もちろん」



即答したアルテミスと顔を見合わせ、互いに深いため息をついた。

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