表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼穹(そら)に紅~天翔る無敵皇女の冒険~ 七の巻 ビザンツの王冠  作者: 初音幾生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/22

18 離水

 じりじりする思いで、洋一は洋上の飛行艇を見ていた。

 人影が何度も移動しているので、積み込み作業は進んでいるのだろう。

 しかし無線を担当している朱音が一緒に上陸しているおかげで様子がわからない。

 無線手を別に用意しておけば良かったのに。

 勝手に洋一はそんなことを考えていた。

 そうしていたらここでもう一人分のスペースに苦しむことになっていたのだが、彼には下の苦闘は判らない。

『クレナイ一番、こちらエチゴ』

 北側で敵機を食い止めていた朝倉大尉の声だった。

『済まない。みんな弾切れだ』

 都合四編隊も相手にしたそうだ。それは弾も尽きるだろう。

『朝倉、よくやってくれた。こちらもそろそろ引き上げる。安心して母艦に戻ってくれ』

『すぐ戻ってくる。それまでなんとか持ちこたえるんだ』

 ここからビザンツ本土を横断して空母〈翔覽〉に戻って補給して、戻ってきても二時間以上はかかる。すべてが終わっているだろう。

 それでも諦めずに戻ってきそうだった。

 紅宮綺羅に頼られたら、万難を排してもやってくる。朝倉忠夫とはそんな男であった。

『こちらシーライオン、回収終わりました。これより発進します』

 待ちかねていた無線が聞こえてきた。聞き慣れた朱音の声である。

『朱音ちゃん、王冠は無事だったかい』

『王冠は無事でしたけど』

 朱音の返答は少し切れが悪い。

『その、過積載で飛べないかも』

「おいおい、大丈夫かよ」

『やってみないことには。あっエリオット様、錨を捨てて。ドラムロールごと』

 無線の向こうでエンジンの回転数が上がるのが聞こえる。それと同時に海上の飛行艇がスルスルと進み始めた。

 沖に針路を向けると派手に水しぶきを上げて滑走し始める。

 役目を終えたゴムボートがプロペラに煽られてひっくり返った。

 海面に白い筋が太く描かれる。しかしその筋が長い。

 中々飛行艇が水面から上がってくれない。大丈夫なのか?

 上空の戦闘機隊が固唾を呑んで見守る中、白線が遂に途切れた。


 飛行艇が離水したのである。


 空中に浮かび上がっても、ソッピース・シャグバットの高度は中々上がらない。

 海面を這うように飛び続けている。

『こちらシーライオン』

 今度はパイロットのキャンベル中尉が話してきた。

『お客さんが沢山でこの有様だ。機銃捨てて丸腰になったが、海面を這って飛ぶのが精一杯だ。護衛の方よろしく頼むぜ』

 地面効果。

 飛行機が地表すれすれを飛ぶと、翼の揚力が増える現象。

 それを使わないとこの飛行艇は空を飛んでいられなかった。

『こちらイカヅチ。仕方ねぇな』

 周辺の地上部隊を追い払っていた艦爆隊が高度を下げて飛行艇のそばまで降りる。

 高速が売りの彗星艦爆が、主脚を出して速度を落とす。

 シャグバット飛行艇のやや上、左右と後ろについて、一つの編隊のようになった。

 後部銃座を大きく開けて、これ見よがしに機銃を周囲に向ける。機銃手は飛行艇に向かって腕を振り上げた。

 自分たちが護るという意志の表れだった。

 王女と少年が手を振ったので、彼らはさらに手を振り返した。

『クレナイ中隊諸君、艦爆隊があれだけ漢気を見せたのだ。我らも奮い立たねばならんぞ』

 どこか楽しそうな紅宮綺羅の声が耳に心地よかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ