16 艦爆隊だって支援する
空戦のけりはとりあえずついた。
最後の一機をクレナイ四番、村瀬三飛曹の機が追いかけている。
必死に追いかける村瀬機の少し上を、小暮二飛曹が見守っていた。
余裕が出たので新人に経験を積ませていた。
村瀬三飛曹は一心不乱に撃っているが、こうしてみると随分と距離がある。
もっと近づかないと当たるものも当たらないぞ。洋一は心の中でアドバイスした。
見ている分にはじれったいしもどかしいが、自分もああだったのかもしれない。
それにいきなり過酷な戦場に放り込んで、何もできないまま死なせてしまうよりも何倍も良い。
向こうが疲れたのか、回避が単調になったところにようやっと弾丸が追いついた。
それまでも何発か当たって胴体を孔だらけにしていたが、とうとう尾翼辺りにまともな一連射が命中した。
片方の水平尾翼が飛び、残った方も破れ障子のようになる。バランスを失って大きく螺旋を描きながら降下し始めた。
最後の一機が地上に激突した頃、他の機体は編隊を組んで大きく旋回していた。
空戦で失った高度を少しずつ回復する。警戒を怠るわけにはいかない。
このままで済むとは思えないのだ。
向こうもここに何か重要なものがあることは気づいたらしい。
北側の朝倉大尉率いる第二中隊はかれこれ四編隊も相手にしたらしい。
『下はどうかねぇ。トライヘッドの残骸には到達したみたいだけど』
上からでは豆粒のような人が動いたことがかろうじて見えるだけなのだ。
具体的な様子は皆目判らない。
「無線を持って行ってくれれば良いんですけど」
通信は飛行艇に積まれた無線でしかできない。
無線機はかなり大きく重たいので朱音の力では持ち運んだりは難しい。なんとももどかしい限りだった。
『こちらイカヅチ。現場に近づく車両と、馬かな? 影あり』
低いところを旋回していたイカヅチ小隊、彗星艦爆からの無線は聞こえてきた。
『イカヅチ一番これより確認する』
艦爆小隊の指揮官機が高度を下げる。
操縦席も後部銃手も風防を大きく開けて身を乗り出していた。
『オスマンの旗を確認、おっと撃ってきやがった』
銃撃を受けているというのに動じることなく彗星は低空で旋回していた。
『イカヅチ二番攻撃せよ』
『待ってました。イカヅチ二番了解』
即座に一機の彗星が降下姿勢に入った。腹の爆弾倉を開き、黒光りする二十五番(250kg)爆弾が顔を出す。
無蓋のトラックが砂煙を上げて海岸に近づきつつあった。
距離は一㎞くらいか。それに随伴する二頭の馬。
それらをめがけて、彗星艦爆が迫っていった。
投下された二十五番(250㎏)爆弾は彼らのすぐ脇に刺さる。
次いで爆発がカサンドラ半島を揺らした。
トラックはものの見事に横転する。
右往左往する馬を、投弾した彗星の後部銃手が撃っていく。一頭はその場で倒れ、もう一頭は乗り手を放り出して反対側に逃げて行ってしまった。
こちらもとりあえず脅威は排除できた。
しかしそうのんびりもしていられないはずだ。
早く済まないかな。
洋一は風防を開けて飛行眼鏡を降ろすと、首を外に着きだして下の様子をうかがった。
やはり人は豆粒にしか見えなかった。




