14 上空援護
上空を旋回しながら洋一は周囲と海岸を交互に見る。
どうやら王女様ご一行はトライヘッドの残骸についたらしい。
さっさと王冠を見つけてほしいものだが。
視線を周辺空域に戻したとき、視界の端で何かが動くのが引っかかった。
見ると第二小隊の成瀬飛曹長が翼を小刻みに振っていた。敵発見の合図だった。
『おや、あれか。クレナイ各機、東から敵だ。九機編隊かな。随分と回り込んできたものだ』
北側は朝倉大尉の第二中隊が押さえているから、東側に大きく迂回してきたようだ。
そしてどうやら、向こうもここが何か重要な場所であることに気づいたらしい。九機の複葉機、BR.42戦闘機は真っ直ぐこちらに向かってくる。
『クレナイ小隊は右手から仕掛けるから、アカツキは左から攻撃してくれ』
指示を出すともう綺羅機は翼を翻していた。洋一達もその後を追う。
相手が複葉とはいえ、向かってくる敵はあっという間に迫ってくる。
二手に分かれたこちらに対して、向こうも三機の小隊をそれぞれ向かわせる。
残り一つの小隊を突破させるつもりだろうか。
そうは問屋が卸さない。
綺羅機の針路がわずかに変わると、角度を付けて敵編隊に突っ込んだ。
向こうもこちらは把握している。それなのに少しばかり飛び込んでくる方向がずれた、それだけで一個小隊がばらける。
端から見ていると不思議な光景だが、お互い認識した五分の状態でぶつかり合っても、綺羅が飛び込めば不意を突いてしまう。
後ろで見てきた洋一は最近判ってきたが、あれはほんの一瞬の気の緩みみたいなものを読んでいるのだ
その一瞬で飛び込むものだから、向こうはこちらを認識していながら奇襲されてしまう。
すれ違いざまに一撃浴びせ、がっくりと機首を落とした一機が地上に向かって墜ちていく。
ひらりと一個小隊をかわしたところで目の前に突破しようとしていた小隊が飛んでいた。道が開かれたようだった。
横合いから強力な一撃、先頭の一機があっさりと火を噴いた。
そのまま突き抜けると、目の前に残りの小隊が飛び出してきた。
アカツキ小隊に向かっていた奴だった。
斜め後ろから斬りかかるように撃つと、片翼を二枚ともへし折られたBR.42はくるくると駒のように墜ちていった。
ついて行くのに精一杯だった洋一も、ようやく残りの敵に照準を合わせられた。
引き金を引くと相手のエンジン付近で破片が飛び散るのが見えた。すぐに灰色の煙を吐き出す。
煙の向こうでプロペラがガクンと止まったのが、洋一には見えた。
自分の戦果に酔いしれている暇はそんなにない。
上昇に転じた指揮官機を追いながら、洋一は戦場を振り返った。
たった一度の航過で、三機を撃墜していた。
しかもそのおかげで敵中隊は統制の取れない烏合の衆になってしまった。とどめとばかりにアカツキ小隊が突入する。
こうなってしまうともう一方的な戦いである。
なんとも頼もしく、なんとも恐ろしい。
洋一は自分の目の前を飛ぶ紅い尾翼を誇らしげに眺めた。
そういえば下は上手くやっているかな。
洋一は砂浜の右方に視線を転じた。




