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異世界で、君を守る召喚獣になる  作者: 田中ゆうひ


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21/23

バックスタブ

 ダンジョンの入り口。

 いつも通り、レインと僕は右側の通路へ進もうとした——そのとき。


「……ねえ、聞こえる?」

 レインが立ち止まって、通路の先に耳を傾ける。


 耳をすませると、たしかに金属がぶつかり合う音が微かに聞こえてきた。

 誰かが戦っているようだ。


「別のパーティかな……」

 僕も小声で応じる。


「ダンジョンの中で他のパーティと鉢合わせすると、トラブルの元になるわ。ルールじゃないけど、避けた方がいいわよね」


「そうだね。じゃあ、今日は左に行こうか」


 いつもと違う通路。初めての道に、自然と足取りも慎重になる。


 しばらく進んだところで、ゴブリンの姿があった。こちらにはまだ気づいていない。


「先制するわ」

 レインの小さな声とともに、集中に入る。


 すこしの沈黙、そして


「燃え上がれ、灯火の子……ファイアーボール!」


 火球が一直線に飛び、ゴブリンを吹き飛ばす。


「ナイス、レイン」


「ふふ、今日は調子がいいかも」


 手早く耳を剥ぎ取る。

 他には特に目ぼしいものはなかった。


 再び歩き出す。慎重に、だが確実に。


 分かれ道に差し掛かり、レインが立ち止まる。


「ちょっと地図描くわね」

 リュックから紙と炭筆を取り出すと、座り込み、手早く地図に線を引き始める。歩数でおおよその距離を記録しているらしい。


「どっちにいく、ハルト」

 あっという間に書き終えたレインが、立ち上がりながら聞いた。


「左に行こうか、今日はずっと左側に行ってみよう。」

 左に進むと、再びゴブリンの姿。今度は素手だ。


「武器を持ってない。魔法は温存して、僕が行くよ」

 レインの頷きを確認してから、僕は敵を待ち構える。


 ゴブリンは武器を持っていなくても、人間を見つけると襲い掛かってくる。

 勇気があるのか単に知能が低いのか。


 盾でゴブリンのこぶしを防ぎつつ切り込む。あっという間にゴブリンは倒れた。

 ショートソードを鞘に納め、いつものように耳を剥ぎ取ろうとする。


「二体くるわ!」

 レインが小さく叫ぶ。


 慌てて、ショートソードを引き抜き剣を構える。


 一体はナイフを構え、もう一体は……弓!?


「弓使いだ!」

 レインはすでに集中に入っていて、聞こえないかもしれないが声に出す。

 ナイフ使いが突っ込んでくる。盾で受け止めるが、その衝撃で体がわずかに左へズレた。まずい——


 弓使いのゴブリンが、まさにレインを狙って弦を引いている!


「レイン、避けて!」

 僕は叫びながら、なんとか弓使いとレインの直線状に飛び出す。


 飛んでくる!

 そう思った思った瞬間に右肩に衝撃が走る。


 ——ッ!


 矢が、確かに刺さった感触があった。

 熱い痛みが広がり、腕が震えた。


「ハルト!!」

 レインの悲鳴。

 魔法の集中は切れてしまっただろうか。


 ナイフ使いもまだ健在だ。

 だがレインを守るためにも、まずは弓使いを倒さないと。

 何をしていいか一瞬分からなくなる。

 とにかく動かなきゃ。


「ガァアアア」

 僕は大きく息を吸って、獣のように吠える。


 ウォークライ、順応によって手に入れた敵を引きつける雄叫び。

 ナイフ使いの敵意がこっちに向くのを感じる。


 そのまま前進し、ナイフ使いの横を抜けようとする。


 ズガッ!

 足を斬られた。ナイフ使いが背後を狙ってきたのだ。

 衝撃はあるが、大丈夫。

 皮鎧が守ってくれて肉は切られてない。


 構わず、そのまま弓使いに向かって走る。

 ナイフ使いが追いかけてくるのをチラリと確認する。

 よし、ウォークライがが効いている。


 弓使いまであと少しのところで、再び矢が飛んできた。

 反射的に盾を構え、ガンッという音が鳴る。

 盾で防げた。


 そのまま走り込み、剣を振り下ろす。


「はあっ!!」

 一閃。だが、まだ生きている。


 もう一撃!

 首筋を狙った一撃が決まる。

 ようやく弓使いが倒れる。だが——その瞬間。


 グサッ!


 背中に何かが食い込んだ。ナイフだ。ナイフ使いのゴブリンが、背中に組みついて、刃を突き立てていた。


「ハルトぉぉ!!」

 レインの悲鳴が響く。

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