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異世界で、君を守る召喚獣になる  作者: 田中ゆうひ


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11/23

明日は、もっと上手くやれる

「そんなことより、ハルト。私はもうお腹がペコペコよ!」

「実は僕もそうなんだ」


 二人で食堂に戻る。

 昨日より少し早い時間だったため、まだ空席がある。


「祝勝会よ!」

 テーブルに腰掛けるなりレインは言った。

 あるいは反省会かもと思ったがもちろん声には出さなかった。


 レインの目線に促され、僕はリーリーからもらった皮袋をひっくり返した。

 その中からまず150ルアを取り除いた。


「この150ルアは緊急用だね。レインが持っていてよ。」

「わかったわ。」

 レインは銀貨1枚と銅貨5枚を皮袋にしまった。


 残りを数えると78ルアあった。

 そこから銅貨3枚を取り除いた。

 明日の宿代だ。

 そして、さらに1枚を取り除いた。

 朝食代だ。


「28ルア、あるわね。」

 レインはニヤリと笑った


「28ルア、あるよ」

 僕もニヤリと笑った。

 昨日の金額に比べたら、少ないがパンとスープだけの朝食よりかは良いものが食べれそうだ。


「じゃあ、今日はこれでご馳走ね!」


 レインが勢いよく手を挙げると、すぐに給仕の女性に声をかけた。


「これで料理とお酒、お願い!」

 テーブルの上に残った硬貨をちゃらちゃらと滑らせる。


「28ルアね。任せてちょうだい。」

 給仕の女性は、素早く硬貨を数えて、奥へと引っ込んでいった。


 すぐに、焼いた魚に蒸し野菜、湯気が上っているスープ、それにパンが運ばれてきた。

 量は昨日より控えめだけど、十分ご馳走だ。

 そして、何より葡萄酒がある。


「ねえ、こうしてまたここでご飯を食べれて、本当に嬉しいよ」

 僕はパンに齧り付き、葡萄酒でそれを流し込んでしみじみ言った。


「ほんと。ダンジョンに潜って、モンスターと戦って、ちゃんと帰ってきて――

 ご飯を食べる。私たちもう完全に冒険者ね」


「うん。……今日の戦い、思い返すと反省だらけだけど、それでも生き残れたんだ。

 きっと次は、もっと上手くできる」


「そうそう。迷宮って、最初は誰でもヘロヘロになるの。

 でも、慣れてくるとね――体の方から、順応してくるのよ」


「順応?」


 僕は葡萄酒をひとくち飲みながら聞き返した。


「うん。ダンジョンに潜ったり、魔物を倒したりすると……ある日、ふっと気づくの。

 “前よりも動ける”とか、“身体が軽い”とか。

 まるで、殻を破るみたいな突然の成長が来ることもあるし、

 少しずつだけど良くなっているみたいな地味な成長もあるの」

 まるでゲームのレベルアップみたいだ。


「それって、純粋に筋肉がついたり、体が動きに慣れてきたとことは違うの?」


「そういうのとは別なの。もちろん筋肉がついたりして前より動きやすくなることはあるけど、

 そうじゃなくて、ダンジョンに潜ったり魔物を倒す冒険者だけに起こる特別なことなの。」


「じゃあ、僕にもそういうのが……?」


「あるわよ。ただし、前衛はね、派手な成長より地味なのが多いの」


「地味?」


「たとえば、膂力が上がったり、体力が増えたりするの。

 重い盾を持っても平気になったり、長時間走っても疲れにくくなったり……。

 稀に急に魔法を使えるようになったりする人もいるらしいけど、本当に珍しいみたい」


「やっぱり魔法って特別なんだ」


「そうね。私は今のところ、戦闘に使える魔法はファイアーボールだけだけど……

 いつか、次の魔法が“くる”って思ってる」

 その目は、自信と期待に満ちていた。


「でもね、魔法にはもう一つ大事なことがあるの」

「何?」


「魔力は、寝ないと回復しないの。

 しかも、ただ眠るだけじゃダメ。ちゃんと熟睡しないと」


「じゃあ、今日はしっかり寝ないとね」


「うん。……ってことで、やっぱりベッドは私のものね」

 レインはニヤリと笑ってワインをくいっと飲んだ。


「くっ……そう来たか」


「しょうがないわよ。ちゃんと魔力を回復しないと明日の戦闘困るでしょ?」


「そりゃ、まあ、そうだけど……でも床は硬いんだよなぁ……」


「がんばって、頼れる前衛さん♪」

 からかわれているのは分かっているけど、

 レインのその笑顔を見ていると、不思議と悪い気はしなかった。 


 明日は、今日よりうまくやれる。

 そう思える夜だった。


 食堂を後にして、僕たちは静かに階段を上がっていった。

 食事でほどよく温まった体に、宿屋の廊下を吹き抜ける夜風が心地よい。


 部屋に戻ると、もう何も言わなくてもお互いにベッドと床の準備に取りかかっていた。

 レインは軽くストレッチをしてから、ベッドに腰かける。

 僕は毛布を一枚引いて、床の隅に腰を下ろした。


「じゃあ、おやすみ」


「うん、おやすみ、レイン」


 瞼を閉じようとした時、レインがぽつりと呟いた。


「……あ、そういえば、ハルトの話、聞きそびれてたわ」


「え?」


「どうして召喚獣になろうと思ったのか――って話。昨日、言ってたでしょ?」


「ああ……そういえば、そんな話もしたね」


 僕は少し笑って、天井を見上げる。


「でも、大丈夫。また夜は来るよ」


「……うん。そうね。じゃあ、次の夜に」


 レインはそっと目を閉じた。

 僕も目を閉じる。


 その日は、昨日よりもずっとぐっすり眠れた。

投稿を始めて、今日で3日目になりました。

先ほど確認したところ、累計PVが100を超え、ユニークPVも28。

きっと大手の方々に比べれば小さな数字かもしれませんが、私にとっては驚くほど嬉しい結果でした。


もし作品を楽しんでいただけたら、ブックマークや評価などしていただけると励みになります。

今後もコツコツ続けていきますので、どうぞよろしくお願いします!

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