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異世界で、君を守る召喚獣になる  作者: 田中ゆうひ


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12/23

冒険者の朝

 朝日が差し込むころには、宿屋の食堂に温かいパンとスープの匂いが漂っていた。


 僕らは階下に降り、朝食を取った。

 昨日よりも少しだけ余裕ができた気がする。


「水筒にも水、入れておこうか」


「うん、そうしましょ」


 宿屋の主人に頼むと、清潔な水をたっぷりと注いでくれた。


 その後、部屋に戻り装備を整えようとしたとき、ふとレインが服の袖を引っ張った。


「ねえ、洗濯って……いつするの?」


「うっ……確かに、それも必要だね」

 僕の服はまだ新しいけど、昨日の来ていた服はそのまま部屋に丸めてある。


「店主に聞いてみよう」


 宿のカウンターに行って尋ねると、店主はあっさりと答えてくれた。


「洗濯は5リアでやっているよ。

 自分たちでやるなら裏庭の井戸と物干しを使ってくれていい」


「5リアかぁ……」


「……うーん、今は節約ね」


 というわけで、僕らは宿の裏手にある庭へ向かった。

 朝の光が気持ちよく差し込む中、石の井戸と物干し竿が並んでいる。


 水桶が2つ置いてあったので水を汲み、二人並んで服を洗い始めた。


「こういうの、なんだかちょっと新鮮かも」

 手で服を洗う日がくるとは思いもしなかった。

 とりあえず水桶に服を入れて適当にくしゃくしゃと揉んでみる。


「ハルトって自分で洗濯したことなかったの?

 実は結構、良い家の出だったりして」


「いや、そういうわけじゃなくて、元の世界には“洗濯機”っていう便利な道具があってね。

 ボタン一つで全部やってくれるんだよ。……それに、レインだってなんだか手慣れてなさそうだけど?」


「んー、村にいた頃は、洗濯はいつも母さんがやってくれてたから……

 こうやってちゃんと自分でやるのは、実は初めてなのよ」

 レインは照れたように笑った。


「なるほどね」


「でも、いろいろあって家を飛び出して来ちゃったから。

 これからはなんでも自分たちでやらないとね」

 そういったレインの顔は少し寂しそうだった。


「まあ、私の身の上話は、また夜にでも話しましょ。

 それにしても……洗濯代ぐらいは、ダンジョンで稼げるようになりたいわ」


「本当に・・・」

 僕は深く頷いた。


 互いに服を洗い、しっかり絞って物干しにかける。

 洗うのはともかく、絞るのが結構な重労働だった。

 手で汗を拭って一息ついた。


「さあ、気を取り直して出発ね!」

 レインが明るく言った。


 街を出て、東門からダンジョンへと向かう道を歩く。


 昨日と同じ道でも、気分は少し違う。

 僕らは、昨日よりほんの少しだけ“冒険者”らしくなった気がした。


「ねえ、昨日のこと、ちょっと振り返っておこうか」


「そうね。初戦は上手くいったけど、

 二戦目は少しヒヤリとしたわね」


「そうだね。まずは……僕と敵が近すぎた。

 それで魔法が使えなかったね。


 それに僕は少し怯えすぎだった、ゴブリンが使ってたナイフだったら、

 ちゃんと防御できてたら怖くない。


 今日もう少し冷静に立ち回るようにする。」


 そう言いながら、左腕の盾を右手でそっと触った。

 金属の硬さが頼もしい。

 最初に良い防具を買えたのは本当に良かった。


「怖くなるのはしょうがないわ。

 ハルトは昨日、前衛の役目を果たしてくれていたわ。


 わたしも反省しないといけないことがあるの

 二戦目の魔法、ハルトにぶつかるのが怖くて壁に向かって撃っちゃった。


 本当は冷静に集中を維持して、ハルトと敵が離れるタイミングを待つべきだった。」


「集中って維持できるの?」


「そうよ。集中を終えて、目を開けた状態で魔力を維持するの。

 でも長い時間はむり、10秒ぐらいが限界ね。

 それ以上は霧散しちゃうし、私が動いちゃっても無駄になっちゃう」


「魔力、一発分が消えるってこと?」


「そう。だから、もし私が魔力を維持している間にチャンスがあれば

 敵を盾で弾き飛ばしたり、剣でけん制して距離をとったりしてほしいわ」


「了解。なんとかやってみるよ。」


「あと、できるだけ単独のゴブリンを狙いたいわね。

 特にこっちから先制できるやつ。ああいうのはカモよ」


「そうだね。あとは、剥ぎ取りは手早く。二人とも下を向いてると、不意打ちが怖いしね」


「うん。ハルトが剥ぎ取ってくれてる間、私はちゃんと周りを警戒するわ」


「ありがとう。剥ぎ取りナイフも買ったし、片耳でいいこともわかったしね。

 きっと昨日より上手くできるよ。」


「今日の目標は……ゴブリン6体!」

 レインが右手を大きく広げて、そこに左手の人差し指を添えた。


「晩ご飯と、明日の宿と朝食の分、だね」


「そうよ、6匹倒せば、それだけで安心できるもの」


「よし、やってやろう」

 僕たちは顔を見合わせて、にっこりと笑った。


 そして、朝の光を背に、再びダンジョンへと歩き出した。

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