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【書籍化&コミカライズ】女神から『孵化』のスキルを授かった俺が、なぜか幻獣や神獣を従える最強テイマーになるまで  作者: まるせい
五章

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第233話 急ぎ帰国するタバサ

 研究室の扉を開くと、エレオノーラはゆっくりと前に進む。


 彼女は研究に没頭すると周囲が見えなくなるタイプなので、こうしてこちらから存在を伝えないと勝手に驚いて怒り出すのだ。


「およ、エレオノーラじゃん? どしたん?」


 今日はまだ研究に没頭していなかったからか、タバサは振り向くと笑顔を見せた。


「それにしても、この『テンプシーハート』なかなか面白いかもね」


 最近タバサが研究しているのは、出自不明の特殊な飲み薬だ。


 市場に出回る数が圧倒的に少なく、一瓶に金貨百枚の価値がつけられている。


「過去に私が書いたレシピを完全に再現してみせるなんて……。ステシアにいる弟子にも作り方の説明したことあるけど、無理そうだったもん」


 材料と効果についてロレインに一度教えたことがあるのだが、彼女は難色を示すと「このような破廉恥な物は世に出さない方がよいですっ!」と顔を真っ赤にして答えた。


「とにかく、これを作った人物は錬金術の天才だね。名乗り出たら何がなんでも私の弟子にするのになぁ……」


 本来なら、とっくにステシアに戻っていなければならないタバサだったが、目の前に興味深い薬品があるかと思うといてもたってもいられず、自分の研究施設に籠りきりになっていた。


「ルミナス男爵より手紙を預かっております」


「クラウス君?」


 意外な名前に驚いたタバサはすぐに「そう言うこと」と呟くと笑みを浮かべる。


「私のことが恋しくなって会いにきちゃったのかな?」


「いえ、別件で訪ねてきただけです」


 流石に依頼内容までは漏らすつもりもなく、エレオノーラはタバサが手紙を開くのを冷めた目で見ていた。


「甘いね、エレオノーラ。ああいうタイプは押しに弱い! 何度も好意を伝えることで段々私のことが気になり始めてーー」


 ドヤ顔で恋のいろはについて語るタバサだったが、手紙を読むと次第に顔色が悪くなっていった。


「タバサさん?」


 もはや正常な状態ではなく、滝のような汗を垂れ流しながら手紙を読むタバサ。


「一体、何が書かれているのですか?」


 あのタバサがこのような表情を浮かべるとは、エレオノーラには信じられなかった。


「私、ステシアに帰る!」


 慌てた様子で荷物をまとめ始めるタバサ。これまで周囲がどれだけ言ってもせせら笑っていたのに、あまりの豹変ぶりに驚く。


「それじゃ、お世話になりましたっ!」


 荷物をまとめ終えるなり出ていった彼女を見て、エレオノーラは……。


「あのタバサさんがあそこまで怯えるなんて、あの国にはまだ私の知らないおそろしい人物がいるのね?」


 ステシアの層の厚さにおそれを抱くのだった。

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