第230話 サイラスの錬金術研究所
「どうするつもりなのよ、クラウス?」
廊下を歩きながら横に並ぶとメリッサは質問をしてくる。
「国の大事にかかわるのよ、できなかったじゃ済まされないわよ?」
どうやら俺のことを心配してくれているらしい。
「多分、大丈夫だよ」
そんな彼女の慌てる様子がおかしく、これで失敗したらどんな反応をするのか興味が惹かれる。
「平気ですよ、メリッサさん」
そんな彼女にセリアが話し掛けた。
「兄さんは何の確証もなしに期待をもせるようなことを言う人ではありません。きっと、呆れるような方法で事態を覆してくれるはずですから」
兄のことは自分が一番よく知ってるとばかりに、セリアは胸に手を当て笑みを浮かべる。
「セリア、それは褒めているつもりなのか?」
「褒めてますよ。半分くらいは……」
俺が質問をすると、彼女は首を傾げた。半分褒めてると言うことは半分は貶めているのではなかろうか?
「仲が良いですね」
俺たちの会話が聞こえたからか、シアンが振り返った。
「ずっと一緒に育った家族だからな」
大事な家族だからこそこうして軽口も叩くし、一緒にいても気を使わずに済む。
最近ではそこに従魔やキャロルが混ざり、さらにメリッサやシャーロットなども加わって賑やかになってきているが、すべて俺にとって大切な存在になっていた。
「……羨ましいです」
シアンが何やらボソリと呟いた気がする。ケモミミを持たない俺にはシアンの言葉が聞き取れなかったが何やら悲しそうな雰囲気を漂わせていた。
「シアンさんは御家族の方は?」
セリアはシアンの家族について質問する。
「私は生まれてすぐ親元を離れてサイリーンで生活をしているので……」
意外な告白にこれ以上突っ込んで聞くことができなくなった。
「着いたわよ」
ちょうど目的地に着いたらしく、エレオノーラさんが振り返った。
中に入ると、そこは見覚えがある施設に似ていた。
植物を育てるための水槽があったり、気温を管理する魔導具や水を出す魔導具などがある。
「ここ、ステシアの錬金術師ギルドに似てますね?」
セリアも気付いたらしく、俺と同じ感想を口にした。
「やはりわかってしまうものなのね?」
エレオノーラさんは感心した様子で俺たち兄妹を見た。
「元々、ステシアで使われている技術はサイラスでタバサさんが開発したものなのだから当然ね」
それは初耳だった。
「彼女は錬金術の天才で、こんな小国に収まる器じゃなかったわ。長年サイラスで魔法の研究を行っていて、外国に興味を持って飛び出していったの」
懐かしむように語るエレオノーラさん。本人に絡まれている時は嫌がっていたようだが、彼女にとってタバサさんはかけがえのない存在なのだろう。
「つまり、ここでなら錬金術ができるってことでしょうか?」
セリアがエレオノーラさんにそんな質問をする。
「ええ、素材も魔導具も揃ってるから可能よ?」
何か作りたいものがあるのだろうか? 俺がそんなことを考えていると、セリアは思案してしまった。




