第217話 視えない存在
森の散策を終えて宿に戻ると、セリアとメリッサが戻ってきていた。
彼女たちは買い物を堪能したらしく、満足そうな笑みを浮かべている。
キャロルはというと、
「散々着せ替えさせられて疲れた……。もう嫌」
珍しくぐったりしている。
「それで、兄さんは何をしていたんですか?」
別行動をとった俺が何をしていたのかセリアが聞いてくる。このタイミングで話してしまうことにしよう。
「こいつについてなんだが……」
「「「ん?」」」
俺はダキーニを三人の前に差し出す。
「森を歩いていたら声を掛けられてついてこられたんだ」
事情について話す。
ダキーニはというと、俺に抱きかかえられながら大人しくしている。
「連れて行ってもいいかな?」
「また、兄さんは旅先でモンスターを手懐けたのですか?」
『我は手懐けられてはおらぬぞ?』
ダキーニが反論をする。
「いや、勝手に付いてきたと言ってるだろ? それに、こいつ結構毛並みが良くて触り心地がいいぞ?」
「モフモフッ⁉︎」
キャロルの目が輝く。日常的にフェニの羽毛に顔を突っ込んで堪能していただけに禁断症状が出ているようだ。
「まあ、私に迷惑を掛けないなら構わないわよ。クラウスと一緒に行動する時点でそのくらい覚悟してたし」
最初からトラブルは想定内だったとメリッサに言われる。そこまで信頼がなかったのかと俺は愕然とした。
「それで兄さん、その連れて行きたいモンスターというのはどこにいるのですか?」
セリアは首を傾げると俺に質問をする。
「クラウスばかりモフモフを堪能するのは許せない! 早く見せて!」
キャロルが顔を近付けてくる。ダキーニはちょうど彼女の胸の前にいるのだが、気付いている様子がない。
「まさか、見えないのか?」
俺以外に見えていないという状況に驚く。
『今の我を見ることができるのは素養のある者くらいだろう』
「もしかして……この指輪のお蔭なのか?」
俺は精霊王の指輪を見る。微精霊が見えるようになったのはこいつのお蔭だったことを思い出す。
「いや、ここにいるんだよっ!」
可哀想な者を見るような目を三人から向けられる。
「はいはい、わかってるわよ。あんたは見えないモンスターと仲良くなった。そういうことよね?」
内容はあっているのだが、メリッサは憐れむような表情をしているので信じていないのが丸わかりだ。
「兄さん、どうしてそんなに追い詰められてしまったのです?」
セリアは口元に手を当てると悲しそうな目で俺を見た。
「クラウスは相変わらずユニーク」
キャロルは特に変わりがない。
『諦めろ、視えない者から変人呼ばわりされるのも視える者の宿命よ』
ダキーニが俺の肩にポンと手を乗せ慰めてきた。
結局、誤解は解けることなく、俺は三人から腫れ物扱いされながらその日をすごすのだった。




