第215話 着物選び
「うーん、どの生地にしましょうかね?」
セリアは口元に手を当てると悩ましそうにそう告げる。
そこに並べられている反物は藍や青など濃い色合いの物が多く、柄についても花ではなく、フェニックスやドラゴンなどが描かれている。
「この柄……いいかも?」
兄に似合いそうだと思い、セリアは値札を見ると……。
「うっ……高いです」
着物一着分の布の値段は着物に仕立てるのまで込みで金貨五枚だった。
「どうにか……いけそう?」
旅行用に用意したお小遣いの金額を計算する。
子供のころからコツコツ貯めてきて、ステシアに来てからはバイトもしていた。それでもこれを買うと半分以上金がなくなる。
「でも、これが絶対に似合うと思うんです!」
セリアは覚悟を決めると、店員に声を掛け注文を完了した。
「セリア、見なさいよっ!」
手続きを終えると、メリッサが興奮した状態で呼びに来た。
「キャロル凄く可愛いわよ!」
メリッサが肩を押すとキャロルが前に立つ。
「うう……なんでウチに着せるの?」
キャロルは涙目で恥ずかしそうにする。
キャロルが着ている着物は胸元が大胆に開いているタイプで、赤い色合いの着物に緻密な花柄が全体的に描かれている。
周囲の人間もキャロルの艶やかな姿にゴクリと息を呑んだ。
「凄い! 似合いすぎですよ!」
セリアは興奮するとキャロルを褒め称えた。
流石はステシアでも市民や貴族に絶大な人気を誇る国家冒険者だ。ここまでの着こなしはなかなか見ることができない。
「クラウスも勿体無いことしたわよねっ!」
キャロルのこのような姿はここでしか見ることができない。そんなキャロルの艶姿を見逃したクラウスを残念に思う。
「それで、セリアは何か買ってたみたいだけど? あそこの生地っておこと向けじゃあ?」
「そっ、それよりもっとキャロルさんの着物を選びましょうよ!」
「えっ? セリア?」
言葉を遮ったセリアに、メリッサは目をパチクリさせる。
「なるほど、そういうことね……。
ところが、メリッサは何かに勘付いたように笑みを浮かべると、
「クラウスには内緒にしておいてあげる」
その言葉にセリアはホッと息を吐く。
「でも、あんたも自分の着物を選ばないと駄目なんだからね?」
「ウチもセリアの着物姿を見てみたい」
ここぞとばかりにキャロルが話に乗っかった。
「そうね、片っ端からキャロルに着せてデザインを見るわよ!」
「うぇっ⁉︎」
藪蛇だったのか、メリッサにそう告げられのけぞるキャロル。
三人は仲良く着物の着せ替えをするのだった。




