第214話 精霊王の指輪を嵌めてみる
街を出て一人で森を歩く。
ステシアとは気候が違うので、歩いていると湿気を含んだ草木の臭いが鼻腔に触れる。
「それにしても、ここが外国か」
初めての国外旅行ということもあり気分が高揚する。
見たことのない大きな植物に、太い樹木。道らしき道もなく、生えるままになっているのはこの国が森林を大切にしているからだろうか?
「そうだ、あれを試してみるとするか?」
俺は思い出したのでマジックバッグからとある魔導具を取り出す。
『精霊王の指輪』
ダンジョンで手に入れたSSランクの魔導具だ。
「たしか、サイラスなら何か起きるかもしれないんだっけ?」
テリーヌさんに見てもらったところ、この魔導具の動力は魔力ではなく精霊力とのこと。精霊の聖地であるサイラスなら何かが起きるかもしれないと言っていた。
嵌めてみると魔力が吸われる感覚がある。
「とりあえず、これで何か起きるといいんだけど……」
意識を集中しながら、何か変化が起きないか緊張して喉を鳴らす。
しばらく待ってみると、
「何だ? 視界が……」
先程までと違い、森全体が輝いているように見えた。
小さな光が漂い、幻想的な光景を作り出している。
様々な彩りの光は俺の周囲を飛び回ると時には近付いてくる。
「もしかして、これが精霊なんだろうか?」
幻想的な光が視界に広がっていた。
赤・青・緑・黄色など様々な色の光が漂っているのだが、全体的に緑と青が多い気がする。
「それぞれの属性を現してるのだろうか?」
予備知識として、テリーヌさんから『微精霊』という存在について聞いている。これは精霊になる前の核のような状態なのだという。
「ん? 何だ?」
視界の端でチカリと何かが輝くのを感じる。
「素早いな……」
俺が意識を向けると、その何かは木々の間を抜けて姿を隠してしまう。
「だけど、このくらいなら……」
一瞬、神気解放を行い敏捷度を上げた俺は、それが動き出す前に距離を詰めると捕まえる。
「何だ、これ……? 宝石か?」
掴んでみると、虹色の石が振動している。熱くも冷たくもなく、硬くも柔らかくもない。なんとも捉えどころのない不思議な物体だ。
しばらくの間、俺が掴んでいると物体はコロンと手のひらを転がり動かなくなった。
「ロックに与えたら喜ぶだろうか?」
珍しい石なので、ロックなら喜んで取り込みそうだと思いポケットに仕舞う。
「さて、せっかくだしここで昼食にするとするか」
いつの間にか人が立ち入れない場所まで来てしまった俺は、昼食の準備をするのだった。




