第213話 獣人と着物
半日が経ち、本来のルートから遠回りした俺たちは特殊な布を扱っているという街に到着した。
「ここが、名物の反物を売っている街ね」
メリッサは馬車の窓から顔を出すとキョロキョロと街並みを見回す。
「獣人の人が結構いますね」
セリアはそれよりも獣人に目が行ったようで珍しそうに見ていた。
行き交う人の二割くらいが獣人で、猫耳や狼耳に狐耳など多種多様な種族の獣人がいる。布が名物だからか、行き交う人たちの衣装も独特だ。
「あれって、タバサさんがよく着ている服じゃないか?」
そんな中、他の街人とは違う着飾った姿の獣人の女性が通りかかったので注目する。
「確か、着物というんでしたっけ?」
セリアも見たことがあるからか、服の呼び方について確認をする。
「サイラスの国民は着物を好んでいるわね。取れる服の素材が違うからか、独自の文化があるらしいわ」
唯一サイラスを訪れたことがあるメリッサが教えてくれる。
「でも、タバサさんが身につけている着物よりは柄が地味な感じだな?」
無地だったり、柄が入っているにしても少ない。生地もほころんでいるようで安っぽく見える。
「錬金術師ギルドのマスターでしょ? そりゃお金持ってるもの。元々、反物の情報はロレインだけど、彼女もギルドマスターが着ているのを見て欲しくなったんでしょうね」
「ああ見えて、ロレインはタバサさんを尊敬しているからな」
普段はおちゃらけているタバサさんだが、エルフだけあってか魔力も多く最高の技術を持っている。ロレインにとっての目標なので、姿を真似てみたいと考えなくもないのだろう。
「とりあえず、私とセリアとキャロルは着物を仕立てる店に行くけど、クラウスはどうする?」
ロックを腕に抱いたままメリッサはそう言う。ロックはロックで自身がメリッサの付属物のように完全に身を委ねている。
「う、ウチは別にいい……」
「キャロルは護衛だから当然連れていくわ」
キャロルはメリッサに捕まっている。旅の間仲良くなったらしいのだが、雇い主には逆らえないようだ。
「俺はちょっと、街の外に出てみるよ」
ドレスの時はセリアに付き添ったが、今回はメリッサやキャロルもいる。
生地を選んだりデザインを選んだり付き合うにしても、異性がいる状況より気心しれた友人が一緒の方がいいだろう。
「馬車でじっとしていて身体が固まってるから、少し身体を動かしてくる」
「ず、ずるい!?」
キャロルが絶望的な表情を浮かべる中、俺はその場から立ち去るのだった。




