21.冒険者登録
★☆★ 女騎士アデラ視点 ★☆★
昨日までの寝室は焼けてしまったので、私は納屋で寝ることになった。
それなりに清潔だけど、やっぱりかなり寝苦しい。
あと、別に臭いわけじゃないけど、デブータの体臭も残っていて落ち着かない。
あれ? そういえばあの寝床、もう薄れていたけれど、元々はこの匂いがしてたわよね?
綺麗さっぱり忘れていたけれど、あの男がどこで寝ているのか、気になっていたことを思い出した。
そうか、納屋で寝ていたんだ……。
じゃあ、納屋を出て、今はどこで?
私は音をたてないように気をつけながら小屋を抜け出す。
やっぱり!
丸太のような大きな体を、燃え残った壁に寄り掛からせて寝ている人食い鬼が月明りに照らされていた。
わかったからといって何ができるわけでもない。
私はただその姿を目に焼き付けるように、しばらく眺めていた。
次の日からは肉や毛皮を積んで、町と山小屋を往復する日々が続いた。どれもこれも二倍以上で売れていく。
今までどれだけ買い叩かれていたんだか。
もう売るものが無くなった最後の日、私はデブータをつれて冒険者ギルドに向かった。
私も冒険者に登録するために。
★☆★ おっさんデブータ視点 ★☆★
武器も肉も何もかも、俺が思った相場の倍以上で売られていく。
アデラは騎士だというのに、まさか商人の才能まであるとはな。まったく恐れ入るしかない。
最後の日、アデラは冒険者に登録すると言い出した。
国境を超えるなら身分証が必要になる。それなら冒険者に登録しておくのが一番簡単だ。
ただ冒険者登録の時には避けられないイベントがある。前世のラノベでよく見たし、こっちに来てから俺もその洗礼を受けた。
そう、初心者がベテランに絡まれるってやつだ。
俺の時なんか剣まで突きつけられたからな。あれはかなり痛かった。
商店に入る時、俺は外で待っていた。でもギルドはそうはいかない。
アデラに言われるまでもなく、俺もギルドの中に同行する。俺がいたからと言って何も変わらないだろうけど、少しは助けになることもあるだろう。
……あれ? 誰も絡んで来ない?
おかしいな。
ここ、本当にギルドか?
まあいいか、平和なことは良い事だ。
俺が暴れ出さないことにほっとしている男たちがいること、その男たちの中には先日、山小屋を襲撃した者たちも含まれていることを、俺はまったく気づかなかった。
★☆★ 宮廷の豚貴族、キンマン伯爵視点 ★☆★
「伯爵! アデラを追った者たちから、また知らせが来ました!」
「ブヒブヒ、さすがに捕まえたブヒか?」
「いえ、多額の請求書です。武器代に傭兵と冒険者への依頼料、それに……やっぱり治療費……」
「何が起こってるブヒ~!」
「……これ、払うと破産します! 領地を売らないと無理です!」
「ブヒブヒ~! 払わないブヒ! あの元婚約者に責任取ってもらうブヒ! 無理やり払わせるブヒ!」
女騎士のあの艶やかな美貌、そしてあの素晴らしい体……。
「絶対手に入れるブヒ~!」
借金することになるんですが……そんな家臣の言葉など、豚貴族キンマン伯爵は全く聞いちゃいなかった。




