22.別れの時
★☆★ 国王さま視点 ★☆★
最近になってあまりに王都が騒がしい。騎士団長を呼びつけて詰問せねばなるまい。
「これはいったい何事だ、報告せよ!」
「例の近衛に抜擢した女騎士、その元婚約者と現婚約者が大いに揉めております。両者とも私兵を繰り出し、一歩も引かない構えです!」
「なんと! 王都を騒がすとは! 両名ともひっ捕らえて、財産を没収、貴族位をはく奪して平民に落としてしまえ!」
「は、ははっ! ただちに!」
なんという奴らだ。あのムチムチでプリンプリンな体を愛でるために近衛に抜擢したのはこのワシだ。
結婚するというから涙を飲んで諦めたのに、王都から放逐した上、さらに騒動を起こすとは。
平民落ちでもまだぬるい! 八つ裂きにしても気が済まん!
「あいつらがいなければ、今頃あの桜色の唇でチュッチュして貰えたかもしれんのに。そして、ああ、陛下すてき! 抱いて! なんてことに……」
「陛下、もう少し詳しくそのお話をお聞かせ願いますか?」
「お、王妃ではないか! その、それはだな……」
「黙らっしゃい! 陛下、いえ、このクズ! その好色にはもう我慢なりません! 隠居していただきます、よろしいですね!」
「いや、ちょっと待って……」
「よ・ろ・し・い・で・す・ね?」
こうしてアデラの元婚約者、そして現婚約者の豚伯爵は、財産没収の上で平民落ち。超男尊女卑の国法をそのままにしていた国王は隠居することになった。
その後、新たに女王として立ったのは元王妃。
この国の女性の権利も、これで今より少しはマシになることだろう。
★☆★ 女騎士アデラ視点 ★☆★
すべてを売り尽くし、もうこの山小屋に用は無くなった。明日にはここを離れることになるだろう。そんな夜。
なぜか私はデブータと大喧嘩を繰り広げていた。
「なんで代金の半分が私の取り分なんですか! 全額デブータのものでしょ!」
「俺が売るときの倍の金額で売れたんだ。差額がアデラの仕事に決まってるだろうが!」
「山小屋が燃やされた分はどうなるんですか!」
「そんなの、よくあることじゃないか!」
へ? 何それ?
「ちょ、ちょっと待ってください、それ、どういうことですか?」
「この国は治安が悪いからな。盗賊が火をつけていくことなんて、日常茶飯事だろう?」
そんなことはない。盗賊はかなり多いけれど、しょっちゅう火をつけてまわるなんて話は聞いたことがない。
それって町の人たちがデブータを討伐しに来てたんじゃ……。
噂の人食い鬼の正体はデブータだったんだから、そうとしか考えられない。
今回の山小屋の火事は私が関係しているのは間違いない。でもそれだけじゃなかったんだわ……。
なんという闇の深さだろう。
介抱されたり、食事をごちそうになったりしたけれど、その代金を払う。そう言っても彼は受け取らないだろうな。
「わかりました。ここは私が折れます」
「そうか、わかってくれたか」
「明日、私たちはここを離れますよね? でもまだ正直、体力が戻ってません。しばらくの間、旅に付き添っていただけますか?」
「いや、待て。女と男の二人旅というのはだな……」
「お金のことは私が折れました。今度はデブータが折れる番ですよ?」
「ぐぬぬぬ……しかたない、わかった。同行しよう」
一緒に来てもらえたら心強い。もちろんそれはある。
でもそれは二番目の理由。
一番はこれ!
このお人好しでヘンテコな人間の人食い鬼に、人の世の暖かさを知ってもらう!
「待て待て待てっ! アデラ、手を引っ張るな! あああ、ソーシャル・ディスタンスが~~~っ!」
お読みいただきありがとうございます!
これでなんとか一区切りつきました。
女騎士とおっさん、二人の今後を応援していただけると嬉しいです。
気を抜くと甘々生活になってR15で収まらなくなりそうなので、この辺までにしようかな。




