19.後始末
★☆★ おっさんデブータ視点 ★☆★
あ~あ、もう。
薪割り中で、暑いから上半身裸だったのが幸いしたぜ。服を着てたらズタボロにされてたところだ。
ふんっ!と力を入れると、少し刺さりかけて、ぶら下がっていた矢がポロリと落ちた。
武器がいっぱい落ちてるけど……、あのなぁ、これって立派な環境破壊だぞ?
まったく近頃の若者ときたら……おっといけない、これはオッサンが絶対に言いたくなる第一位のNGワードだ!
それにこんなことしてる場合じゃなかった!
火だ、山小屋はどうなった!
急いで戻ってみると、アデラがぼーっと座りこんでいた。
少しは燃えたみたいだったけど、彼女が火を消し止めてくれたようだ。
燃え尽きてたら、今日のご飯が食べられなくなるところだよ、本当に助かったぞ。
「助かった、ありがとう。礼を言う」
お礼を言ったら怒られた。
オンナゴコロ、ムズカシイ。
全焼は免れたものの、彼女に貸していた寝室も燃えているし、ちょっとこのまま住むのは無理だね。
この世界は治安がめちゃくちゃ悪いし、小屋を焼かれるぐらいは良くあること。
だけど最近そういうのは減っていたからちょっと油断してた。
どうしよう、引っ越すかな。
彼女もかなり元気になったようだし、ここでお別れだな。
「食事したら移動するわ」
また怒られた。解せぬ。
★☆★ 女騎士アデラ視点 ★☆★
そうか、ここではもう暮らせないんだ。
これだけ立派な小屋を建てるのに、彼はどれだけ苦労したんだろうか。
それを捨てて立ち去る、そんなことを簡単に言うなんて。
誰がこのトラブルを持ち込んだのか、そんなことは何も口に出さない。それどころか態度にも見せない。
言ったのは『ありがとう』ただそれだけ。
私は謝罪するべき。そうするのが当然。そしてこの怪物は間違いなく許してくれるだろう。
でも謝ってなんかやらない。
だって無性に腹が立ってくるから。
こんな理不尽な目に会わされて、この馬鹿はなぜ怒らないのよ!
って、なんで私が怒ってるんだろう。
もう訳が分からない。
食事のあとすぐに旅立つというので、それには待ったをかけた。
「旅立つのは賛成ですけど、その前にまず、売れる物を売りましょう」
「え? あ? 追手が……?」
「あそこまで叩いておけば、しばらくは来ませんよ。武器もいっぱい落ちてますし、あれも全部しっかり拾って売りましょう!」
「あ、はい」
燃えてしまった山小屋。お金に替えられるものじゃないけど、高価な武器を売ればそれなりの補償になるはずだ。
「たくさんありますから、何往復かしないといけませんね」
「それは、しかし……」
「もちろん私も運びますけど、デブータ、あなたにもしっかり働いてもらいますからね!」
バケモノはきょとんとした顔をしている。
なんだかちょっとだけ、憂さ晴らしになった気がする。




