18.激戦
★☆★ 豚貴族の追手隊長視点 ★☆★
人食い鬼の巣に火を射かけつつ、槍衾を先頭にして突撃だ。
さあどうする人食い鬼! 化け物程度の知能ではどうすることもできまい!
おい、待て、なぜ突っ込んでくる!
ねぐらに火をつけたんだぞ? 無視する気か?
まさか、火がわかってないんじゃないか?
そこまで低能なのか?
おい!
グオ~~ンッ!
極太の丸太が唸るたびに、勇猛な槍の傭兵が、強弓の冒険者が、まるで木切れのように吹き飛ばされる。
逃げる時間なんてない、声を上げる暇さえない。
なんだこれは!
なんなんだ、これはっ!
「ゆ、弓を!」
当たらない? 全部躱している? そんな、そんなことが……。
でも槍が、矢が、刺さらない! 避けているんじゃない、何なんだこれは!
わからない、この怪物が理解できない。
そして襲い掛かる丸太……馬鹿な、そんな馬鹿な……。
★☆★ 女騎士アデラ視点 ★☆★
なんだか騒がしいわね。
あまりに気になって外に出てみると、山小屋はすでに武装集団に取り囲まれていた。
何よこいつら! 完全に戦争じゃないの!
デブータが太い丸太を抱えて、槍衾の中に突貫していく。
どんどん敵をなぎ倒していくけれど、なんといっても敵が多すぎる。ここは私も加勢に……
ヒュンッ! ヒュンヒュンッ!
まさか弓まで! それも……、火矢!
騎士として、戦う者として、ここは剣を抜いて前に出よう! あの怪物のような強さの男と背中を合わせて戦う。もしそれで討たれたとしても、後悔なんて絶対しない。
でもそれでいいの?
今この時、騎士として何を守るべきなの?
自分の矜持、そして騎士の名誉。そのすべてを捨ててでも守るものがあるんじゃないの?
そうだ、今やるべきことは剣を抜くことじゃない。消火だ!
桶を抱えて裏の川に急ぐ。
今はまだ春、乾ききった季節じゃない。それが幸いして、まだ火は燃え広がっていない。
でも人数が違いすぎる。一つ消しても、また三つ、四つと火矢が降り注ぐ。
間に合え!
気が付いた時には、新しい矢が飛んでくることはなく、あたりはまた静寂に包まれていた。
目の前には半分ほど燃えて、焼け落ちてしまった山小屋。
茫然とする私の肩にがっしりとした手が置かれた。
「助かった、ありがとう。礼を言う」
何言ってるのよ、この人食い鬼!
私のせいで、私が逃げ込んだから……。
それなのに、この、この……、大馬鹿野郎!




